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千年の森の魔女と魔法の剣  作者: 叢咲ほのを
第2章 王都襲撃
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36.王都セントラールの一番長い日1

 セントラール騎士団長アークは自室の扉を開けると同時に、部屋の中に人の気配を感じ身構えた。ここはセントラール城内でも奥にある居住区。不審者が入ってこれるような場所ではない。しかし感じる気配に警戒し、右手を腰のショートソードに手を掛けたまま中の様子を探る。するとそこには、見たことのある人物がいた。忘れもしない、その特徴的な銀色の髪…。


「お前は確か…パンドラと言ったな…。」


「お久しぶりです、アーク様。」


 それは以前、バーンが友人として紹介してくれた銀髪の少女パンドラだった。とりあえず敵ではないと判断し、アーク剣から手を離す。


「どこから入った?この城の警備も適当なものだな。」


「アーク様、お願いがあって参りました。事態は緊急を要します。アーク様は龍の宝珠ドラゴンオーブというものをご存じでしょうか?」


「…いや。そして急ぎの用とは?」


「でしたら申し訳ありませんが、今すぐに国王と面会を取り持ってもらえませんか!」


「待て、待て!一体どういうことだ?話が見えてこない。無断でここに入ってきたことは不問にしよう。だが詳しい事情を説明してくれ。」


「つい先ほど西の街フィックスにて、バーンが謎の剣士と対峙し敗れました。その男はこの王都へ、龍の宝珠ドラゴンオーブを求めて向かっているようです。そのためには手段を選ばないようで、多くの血が流れる危険性があります。」


「バーンほどの剣士が敗れたのか?相手は何人だ?心配するな、王都の守りは堅牢だ。例え10万の軍がやってこようとも返り討ちにしてくれよう。」


「相手はただ一人です。」


「はあ?何を言っている?たった一人の狼藉ものにそこまで慌てることはないだろう?たとえそれが私よりも強い剣豪だったとしてもこちらには魔法使いたちもいるのだ。たった一人ならすぐに撃退してくれる。」


「それが、謎のマジックアイテムを持っているのと、どうも裏にまだ何者かの存在を感じます。アーク様、魔法というものについて認識を改めてもらわなくてはなりません。この国の魔法は弱すぎます。本当の魔法というものはとても強大な力を持つものです。この国の魔法使いセガール程度の魔法使いが何人集まっても、本当の魔法の前では脅威ではありません。この国の力は決して強くないのです。私も魔法を使います。私がその気になれば私一人でこの国を滅ぼすことも可能でしょう。ですがその私ですらバーンを倒した男の隠し持っている何かに脅威を感じたのです。」


「疑うつもりもないのだが、そんな話にわかには信じられんな…。もし本当だとしても、国王に謁見できたとして何を話すのだ?」


「そんな謎の剣士が求めている龍の宝珠ドラゴンオーブとは、いったい何なのか。国王であれば知っていると思います。」


「国王は何でも知っている賢者というわけではない。」


「いいえ、おそらく龍の宝珠ドラゴンオーブとはこの国に代々伝わるような秘宝。だとすれば知っているのは国王のみでないかと。」


「…本気で言っているのか?そんな荒唐無稽な話で私が動くと思うのか?」


 しかし彼女の目はうそをついているようには見えなかった。もし大ぼらだったとしたら、私が大目玉をくらい、そして彼女は侵入したことを罰せられるだけだろう。もし本当だとしたら、誰も気づかないうちに、この国の危機が今目前に迫っているという事だ。それともこの女性が国王の命を狙っているとしたら?いや、それはない。長年いろんな目を見て来たが、この目は信じられる者が持つ目だ。


「分かった。火急に国王にお前との謁見を求めてみよう。もし叶わなかったらその時は許せ。この部屋で待っていてくれ。」


「アーク様、ありがとうございます!」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 こんなことならもっとこの国の主要な人物とコネクションを作っておくべきだったわと、パンドラは思った。

 自分が15年前にこの街にいた時はずっと裏社会の仕事をしていたため、表社会の人間との繋がりはなかった。その後もこの街に住み続けている弟子のビャクヤとその亭主シンエモンは、街で商売をしているだけで城との繋がりはないようだった。今自分が知っている限りで国王に近い人物は、先日バーンが紹介してくれた騎士団長アークか魔法使いセガールだろう。セガールという男の人柄はまだよくわからないがアークはバーンも尊敬しているし信用に足る人物であり、この人に賭けるしかないとパンドラは思った。そして多少自分の秘密が漏れたとしても、この人物なら守ってくれるに違いない。そしてその考えは正解だった。急いで会うために飛翔魔法で窓から侵入したことは見逃してくれると言い、国王へも謁見の許可も取りにいってもらえた。自分を信じてもらえたことに感謝するしかない。いや自分の事を信じてもらえたのは、そのまま自分を紹介したバーンへの信頼なのだろう。


 とにかく今起こっている事の全貌を把握しない事には戦略も立てられない。今分かっている事は、この街にやってくる剣士インフェルノの脅威。そこそこの実力を持つバーンを軽く倒す剣の腕。そして彼の持つ未知のマジックアイテムの存在。おそらくセントラールに一人で乗り込んでくるつもりであるのは、一国を滅ぼす可能性のある力を持つのであろう。だとしたら同じく国を亡ぼすくらいの脅威と呼ばれる吸血鬼バンパイヤ1体くらいの強さは持っているであろう。

 私たちは人間同士のいざこざに直接干渉するつもりはない。だからまずはこの危機を上手く伝える事が最優先事項だ。

 その次に、あの男が求める龍の宝珠ドラゴンオーブについて把握することが重要だ。それがどういうもので何のために彼がそれを求めているか。それは15年前にこの街の裏社会で暗躍した自分も聞いたことがない。騎士団長も知らないと言う。だとしたら知っている可能性のあるのは、この国で最も歴史の長い組織『王家』の最高責任者、国王の他にないだろうというのがパンドラの今の考えだ。


 そんな考えを頭の中で整理しながら、騎士団長の部屋で待っていると、アークが戻ってきた。


「パンドラ。国王がお会いしてくれるそうだ。」


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