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千年の森の魔女と魔法の剣  作者: 叢咲ほのを
第2章 王都襲撃
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35.再び千年の森

 俺はインフェルノとの一騎打ちに敗れた。出血により朦朧とする意識の中、俺が最後に見たのは悲しそうな顔をするニーナの姿だった。


 次に意識を取り戻した時、俺は唇に柔らかい感触を感じていた。体中に温かいエネルギーが流れて来るのを感じる。目を開くと目の前にニーナの顔があった。俺が目を覚ました事に気付くと、ニーナ慌てて触れていた唇を離す。そしてとてもほっとした表情でほほ笑む。


「ニーナ?!」


「目が覚めたか?」


「な、何でキス…?!」


 目覚めてすぐな事と混乱する記憶と今の状況を把握できずにいた。


「私もパンドラも治癒魔法を使えないからな。こうしてお前の肉体の時間を戻すことでしか怪我を治してやれないんだ。」


 少し恥ずかしそうな顔で説明するニーナ。半分ちぎれかかっていた俺の手のひらを見ると、怪我する前の元通りの状態になっていた。パンドラもエナジーリリースの魔法を使うのに口づけた方がロスが少ないとか言っていたし、ニーナも俺に口づけで魔法を掛けてくれたのか。


「そうか…ありがとう。」


状況を把握しようと辺りを見回す。見覚えのある部屋。ここは千年の森の奥にあるニーナの家だ。おそらく気を失った俺を転移魔法でここまで連れて来てくれたのだろう。


「あれから、どうなったんだ?」


「お前を襲った男はセントラールに向かった。パンドラにはセントラールに連絡に行ってもらった。店の前は大騒ぎになっていたが、すぐにお前を連れてここに来たので後のことは知らん。」


「すぐにって、人前で転移魔法使ったのか?」


「仕方ないだろ。治癒魔法も使えないし、お前の怪我もひどかったし。それよりもお前を襲った男の方が問題だ。何があったんだ?」


「そうだ!あいつはヤバい。何か強い力の籠ったマジックアイテムのペンダントを付けていたんだ。あれは呪いのアイテムだ。たまたまカフェサリィで会って、気になって話しかけたらセントラールに向かうと言っていて、引き留めたら戦闘になったんだ。」


「そのマジックアイテムにやられたのか?」


「いや、その力が何か分からないまま、ただの剣の勝負で負けた。やつは剣士としても強い。」


「そうか、マジックアイテムだとまずいかもしれないな。この世界は魔法に対する知識が浅すぎる。もしそれが強力な力を持っていたら大被害になりかねないぞ。」


「俺は魔法の事は分からないけど、あれはヤバい…。」


「…。そうか、分かった、パンドラに伝えておく。他に何か変わったことはなかったか?」


「変わったこと?そうだ!フレイムソードが燃え上がらなかったんだ!」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 木の上にあるニーナの家から、階段を伝って大地に降りる。ニーナと初めて会ったあの日からまだ一か月も経っていないが、その景色がとても懐かしく感じられた。千年の森の木々はあの時と全く変わることなく、俺が試し斬りで斬った樹木もそのまま残っていた。

 パンドラに遠隔通話リモートトーキンの魔法で、インフェルノが謎のマジックアイテムを所持していることを伝え終わったニーナも家から降りてきた。


「バーン。ここでフレイムソードを出して燃え上がらせてみろ。」


 ニーナに言われるがまま剣を抜く。そして唱える。


「フレイムソード!」


 剣の刀身に炎が燃え上がる。


「できた。奴と戦う時には出なかったんだ!」


「ふむ…。バーン、お前ここ以外でそれをやったことはあるか?」


「…そういえばない。」


「本来魔法剣は剣士の魔力を消費しその特殊能力を発揮する。火焔剣フレイムソードの炎の斬撃も本来は魔力を使うものだ。だがお前は魔力がほとんどない。おそらく今はこの千年の森にあふれている魔力で燃え上がっているだけで、お前の力じゃないんだろう。」


「つまり俺はここ以外ではこの剣の本来の力を発揮できないって事か?」


「そんなことはない。お前のMPは0じゃなかっただろう?」


「あ、あの指先からちょっとだけ火を出せたやつ?」


「そうだ。お前には魔法の才能がないわけじゃない。鍛えれば使えるようになるはずだ。フレイムソードを使えるようになりたかったら、魔法剣士になるんだ。」


「あいつがセントラールに着くまでに、俺がこの剣を使えるようになれるか?」


「それはお前の努力次第だ。」


「ニーナ!俺に魔法を教えてくれ!」


 騎士を目指していた俺が、なぜか魔法を習うことになった。いつの間にか目指している未来が変わってきている事にも薄々気付いてきていた。ニーナと会ってから予想外の事ばかりだ。でもなんだかこの新しい未来の方がワクワクするのも事実だった。

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