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千年の森の魔女と魔法の剣  作者: 叢咲ほのを
第2章 王都襲撃
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33.講演会当日

 関税見直し意見討論会当日。俺は領主ブライトンと握手する予定の8人と面会させてもらう。俺は特殊能力で悪意を持った人間を見破ることができる。だから今回のイベントの参加者全員の顔を見させてもらった。観客は一般から自由に聴講できるため、全員の確認はできないため一人一人確認している余裕はない。だが領主と握手をする予定がある人間は前もって決まっていたというので確認をさせてもらう。事前に行わなかったのは人が入れ替わったり洗脳されたり小細工をされるのを防ぐためだ。


 その結果、なんと8人の内4人から悪意を感じ交代を依頼する。俺から交代を指示された4人は焦っている。


「待ってくださいバーンさん、急に半数も入れ替えさせるなんて!」


 会場関係者も困った顔をしたのだが、少し離れた場所で俺たちを見守っていた領主が俺に続いて発言した。


「内ポケット、バッグ、右袖、靴。それぞれ確認してみてくれ。」


 その場にいる人間は、領主が何を言っているのか分からなかった。しかしそれを言われた4人は瞬時に意味を理解し、顔面が蒼白になる。


「待ってください!何のことですか?」

「……。」

「私が気に入らないなら帰らせてもらいます!」

「わ…私も!」


 震えて立ち尽くす者、怒り声を上げる者、帰ろうとする者、反応はそれぞれだったが、やはりこの4人とも刺客であることは間違いなさそうだ。


「すいません、帰っていただく前に領主が言った場所を確認させてもらいます。」


「チッ!」


 突然一人の女がバッグからナイフを取り出し、ブライトン目がけて襲い掛かる!しかし領主と距離は離れていたため、すぐに周りの警備兵に取り押さえられた。

 直後、今度は隣の男が軽く握った右手を口元に当て、頬を膨らますと一気に息を噴き出す!隠し持っていた吹き矢だ!しかし吹き矢は領主の手前で空気の壁に当たりふわっと落下する。


「バカな?!」


 暗殺者は必殺の吹矢を放ったはずなのに、目の前で何が起きたか理解できない。わかっているのは自分たちが暗殺に失敗したという事だけだ。すぐに4人とも周りの警備兵に身動きができないよう取り押さえられ、別室に連行される。


「ブライトン!貴様なぜ暗器の場所を見破った?!おまえはバケモノかっ?!」


 ホールに口汚く罵る言葉が響く。目の前で起こった一瞬の出来事に唖然とする会場関係者に、俺は「代わりの人を準備していただけますか?」とだけ伝える。


「ブライトン卿、この4人は大丈夫ですね?」


「うむ…。良いだろう。」


 連行された4人からは、それぞれブライトンの指摘した場所から巧妙に隠した凶器が見つかったらしい。種を明かすと、ブライトンはニーナからマジックアイテムの3連指輪を与えられていて、その能力の一つが毒劇物感知ポイズンサーチで、毒物だけでなく凶器も発見できるらしい。そしてもう一つ投擲物保護アンチスローインの能力で、吹矢から守られたのだ。

 刺客側にはこういった魔法の知識はないと思われる。後は実際に斬りつけられた時のために我々が護衛するのみだ。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「事前に取り押さえられただと?!何をやっているんだ?!」


 ブロッケンは声を荒げる。ブロッケンとリキシーは、今回の講演を見に来ていた。怨敵ブライトンの最期をこの目で見届けてやるためだ。しかし事前に準備した殺し屋が取り押さえられたという情報が入ってきたのだ。報告に来た暗殺を依頼した盗賊ギルドの男も焦っていた。


「安心してくれよブロッケンさん、人一人殺ることもできないなんてウチらの組織の名折れだ。こうなったらウチらの戦力を全て投入するよ。ちょっと大暴れになるけどいいよな。」


「ああ、後始末はこちらでしっかりやろう。頼むぞ!」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 関税見直し意見討論会は、開会のあいさつ→ブライトンの講演→領民の意見→領民代表との握手会→ブライトンから最後の挨拶、という進行を予定している。

 握手会で襲う予定であった4名の刺客が排除されてしまった結果、反抗勢力はブライトンが講壇に立った瞬間に襲い掛かってきた。


 舞台の講壇にブライトンが一人立った瞬間、左右からブライトン目がけて弓矢が飛んできた。矢はブライトンの目の前の空気の壁のようなものに当たり跳ね返され、軌道を変えブライトンの後ろの壁に突き刺さる。ざわつく会場。すぐに射手の方向を確認する護衛たち。二階席にどうやって持ち込んだのだろうかクロスボウを持った男が二人いた。二階にいた護衛がその二人の射手を取り押さえにくるのを無視して第二射を放つ。逃げようとせず二階を睨みつけるブライトン。第二射も同じように外れ「畜生どうなってやがるんだ?!」という叫び声と共に取り押さえられる二階の刺客たち。

 俺はその第二射が放たれる前に、客席からステージへ向かう男数名がいるのを確認し、その中の一人の確保に向かう。他の不審者に対してもセントラールより派遣された騎士たちが取り押さえにかかる。

 自分とブライトンの間に両手を開いて立ちはだかる俺に対し、懐からダガーを引き抜き襲い掛かってくる刺客。俺はショートソードでダガーを叩き落すと、首筋に思い切り当身を当て悪漢を失神させた。

 辺りを見回すと逃げようとする領民で混乱はしているものの、ブライトンに襲い掛かった刺客は全て取り押さえられており、これ以上立ち向かってくるものはいないようだ。


「やれやれ。最後は暗殺じゃなく力づくだったな。」


 これで俺の仕事は無事に終わった。全員取り押えられたことを確認すると、混乱する会場内にブライトンの言葉が響く。


「皆さん落ち着いてください!私を狙う悪漢は全て取り押さえられました。この街の皆さんに本来行き渡るべき利益を独占している者はファットマンだけではありません。その者たちに命を狙われようとも、私はこの街の仕組みを変え、必ず良い街に変えることを誓います!」


 その力強いアピールに、会場全体から拍手が巻き起こった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 混乱があったものの講演は継続され、大声援の元無事に終幕する。そして一仕事終え舞台袖に降りて来るブライトンを、関係者たちも拍手で迎える。


「お疲れさまでした!」


 口々に発せられる慰労の言葉。


「いや~ブライトン卿!最後のご挨拶はご立派でした!」


 最後にそう言ってブライトンに近寄って行ったのは、商人ギルドの幹部ブロッケン。ブライトンが振り返った瞬間には、すでに懐から毒のついたナイフを取り出していた。


「はい身柄確保。」


 そのナイフがブライトンに届く前に、俺の右手がブロッケンの手首を強く掴む。


「は、離せ!!!離せバカヤロウ!!!」


 往生際悪く暴れるブロッケン。


「敵対勢力の商人ギルドの人間をマークしないわけがないだろ?バカかお前。」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 こうして無事にブライトンの講演会は終了した。恐れていた盗賊ギルドは、実は主要な殺し屋は全てパンドラが殺害済みであり、残った残党のほとんどがこの講演会で捕まってしまったため、その後自然消滅したらしい。その後、順を追って商人ギルドの幹部のほとんどが逮捕された。街の入り口で払わされていた関税も廃止となり、そしてブライトンが治安維持に力をいれてゆくことで、この街フィックスは徐々に貧しい人たちが暮らしやすく治安のよい住みやすい街となっていく。

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