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千年の森の魔女と魔法の剣  作者: 叢咲ほのを
第2章 王都襲撃
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32.嵐の前の静けさ

 その日は会場の確認を行った。

 来週行われる関税見直し意見交換会での領主の護衛にあたり、タイムスケジュール、領主の導線、出席者や関係者の位置関係などを確認し、領主側が用意する護衛任務に当たる者たちと、我々セントラールより派遣された4名との役割分担や配置などを検討した。


「これが当日の流れとなります。これまでの説明で気になることはありますか?」


 ひとしきり説明を終えた領主の部下に質問をする。


「すいません、この参加者代表との握手というのは危険じゃないですか?例えば参加者の一人が隠し持っていた毒針を手のひらの中に仕込まれていたら?」


「それについては、実際に握手するのは最前列に座っている8名だけとなっています。最前列に座る人はあらかじめ問題ないと思われる人物を選んでおりますのでご安心ください。」


「…後でその人たちの面通しをさせてもらえませんか?」


「いいですよ?他に質問のある方はいますか?」


「暗殺者が潜めそうな場所を確認しておいた方がよさそうだな。」


 そんな感じで話し合いは続き、いろいろな事前準備を怠らないようこの日の打ち合わせは進んだ。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 打ち合わせを終えブライトンの館に帰ると、ニーナたちは先に帰って来ていた。


「バーンおかえり!今日は店に来てくれなかったな。ブライトンは毎朝来てくれているのに。」


「そうなのか?あの人ちゃんと仕事してんのかな?それより店の方はどうだ?」


「ああ、吸血従者バンパイヤフォロワーの娘たちに来てもらってからは、わたしもゆっくりサリィのプリンを食べる時間が取れるようになったぞ。なあパンドラ。」


「ええ。従者フォロワーの子たちも、いままでずっとアルカードに館に閉じ込められてたから、外に出るのが楽しいみたいよ。ちょうど良かったわ。」


「そうか。それは良かった。」


「なあバーン、明日は来ないのか?」


「あのなあ…。俺はこの街に遊びに来てるわけじゃないんだって…。」


吸血従者バンパイヤフォロワーのために新しく制服を作ったんだ。見に来ればいいのに。」


「じゃあ明日朝寄るよ。」


「本当か?じゃあ待ってるからな。」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 翌朝、警備の下準備の打ち合わせに行く前に、ニーナとの約束通りサリィの店に行った。相変わらず混んでいたが、列に並んでいる俺を発見したニーナが先に通してくれた。入店待ちをしている周りの客の視線が痛い。


「見てくれバーン。これがカフェサリィの制服だぞ。」


 ニーナは店の中に俺を案内しながら、子供が新しい服を自慢するように、その出来たばかりの新しい制服を嬉しそうな顔で自慢する。それは看板と同じ白・赤・紺の3色を基調としていて、肩の膨らんだ形の白いブラウスの上に赤いラインの入った紺色のヴェストとスカートを着ている。何より特徴的なのは、白い長手袋、白いストッキング、そして首まで覆うハイネックの襟。つまり露出が非常に少ないのだ。これは日光に弱い吸血従者バンパイヤフォロワーのためにデザインされたのだろう。


「手袋って汚れないのか?」


「皿洗いの時はさすがに外してるよ。厨房は日光が入らないから。それに一応汚れた時のために予備もたくさん用意してあるんだけどな。まあ多少の汚れは私が魔法できれいにしちゃうかな。」


「そんな裏技…。」


 しかしここまで肌の露出が少ないと男性客に不評でないかと心配になったが、店内に入ると杞憂だと知る。相変わらず客層は男性女性と半々だった。新しく入った吸血従者バンパイヤフォロワーの女の子たちの中で誰が好みかという話をしてる男性客の声も聞こえる。おおむね好評なようだ。

 余談だが、この後この制服の肌を一切見せないというデザインが神秘的だと人気になり、フィックスの街の若い女性の中で大流行したという。


 店内には当然のようにブライトンもいた。よく見ると今度の講演の演説内容を考えている。


「ブライトン卿?こんなとこで仕事してんの?!」


「おお、バーン君!おはよう。」


「おはようございます。」


 そして俺は『RESERVED(予約席)』と書かれた立て札のある席に通される。


「この店予約とかできるの?」


「できるわけないだろう?」


 …なんか特別扱いやめてください。恥ずかしくなる。


 その後俺が頼んだサンドイッチとコーヒーをニーナが持ってきてくれると、そのまま俺が帰るまでニーナはろくに仕事もせず俺の反対の席でしゃべっていた。仕事しろよ…。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 そんな感じで領主ブライトンのフィックス関税検討会の日まで、俺たちはのんびりと準備をする日々が続いた。その間は特にブライトンが狙われるようなこともなく平穏な毎日だった。それまで数度あった領主を狙った刺客が一切なかったため、逆に嵐の前の静けさのような不穏な感じもした。そしてついに講演当日を迎えた。

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