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千年の森の魔女と魔法の剣  作者: 叢咲ほのを
第2章 王都襲撃
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30.なぜおまえたちが先にここにいるんだ?

 雇い主の承認は得ているものの、4人の中で自分だけずいぶん遅れてしまった事を恥じるように俺は領主の館へ急いだ。俺の荷物は馬車に乗せてあり他のみんなが先に運んでいてくれたので、重い荷物を持って走ることはせずに済んだのは不幸中の幸いだった。息を切らして流れる汗を拭いながら領主の館の門を通してもらう。前回来た時と同じように守衛の男に案内され「こちらでお待ちください」と、館に入ってすぐの部屋に通された。


「お。バーン来たか。」


「あら、バーン遅かったわね。」


 なぜかその部屋にはニーナとパンドラがいた…。もう俺も驚くリアクションには疲れた。淡々と質問をする。


「なんで先に店を出た俺を追い抜いて、おまえたちがここにいる?」


「あの後店の片づけをしただろ。そしてサリィを転移門ゲートで送って行っただろ。それでユーフォリアと3人で転移門ゲートでここに来ただけだよ?」


「魔法は隠すんじゃなかったの?」


「ブライトンとか私たちが魔法使えるって知ってたしさ、サリィも毎日あの村まで歩いて送ってくのは大変だし、とりあえず店で働いてる人間にはバレてもいいかなって。」


 てへっ。っていう顔をするニーナ。多分俺の今の感情が、わなわなと怒りが湧いてくると表現される感情なのかなと思った。


「分かった、まあそれはいいとしよう。じゃあなんで俺も一緒に転移門ゲートで移動させてくれなかった?走ってきたんだぞ?」


「だって言う前におまえ出てっちゃったじゃん。すごい汗だぞ?大丈夫か?」


「うおおおおおおおおお!!!!!!!!」


 我慢してたのに、ついに大きな声を上げてしまいました。

 二人は爆笑している。ちくしょう!分かっててやってるな!


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 大きな声を出して落ち着きました。


 まもなく二人の護衛の兵士を連れてブライトンが部屋に来た。ここまではなんか既視感デジャヴュがあるけど、前回と違いすぐには部屋を出ず、その部屋の中で4人で座って話が始まった。


「バーン君、なんか大きな声出してたみたいだけど大丈夫かね?」


「す…すいません。」


「またパンドラ様とニーナ様にからかわれたのかね?二人がいらっしゃると場が明るくなっていいな。」


良いんだ?


「そうそう、バーン君。この度は私の護衛を引き受けてくれてありがとう。まあ知らない仲でもないし、悪いが堅苦しい言葉は抜きで話させてくれ。」


「あ、俺は全然構いませんが。」


「いや~、ニーナ様たちと話してると、私も砕けた言葉遣いが移ってしまってね。そしたら普段の話し方が窮屈でたまらなく感じるようになってしまった。私は子供のころから厳しい教育を受けてきたのだが、どうやら性に合ってなかったらしい。ユーフォリアもパンドラ様が来てから言葉遣いやら雰囲気まで変わって、なんだかとても明るくなった。今までは無理やり私の娘を演じてたんじゃないかなって思うんだ。今のユーフォリアの姿が彼女の本当の姿なんじゃないかなって。」


「だからカフェの手伝いなんかやらせてるんですか?」


「ああ、そのことだが実はあの子が自分からやってみたいなんて言い出したのは、これが生まれて初めての事なんだ。今までは親の言う事に反抗したことなんて一度もなかったんだが、娘にもついに自我が芽生えてきたんだなと思って嬉しくなってしまったよ。あの店で働く事はあの子にとってとても楽しいみたいだ。あの子は今までこの館から出る機会が少なかった。学業も館の中へ教師を呼んで勉強していたし、たまに外出する時は貴族の社交界のような堅苦しい世界ばかりだったからな。とても新鮮なのだろう。周りからは貴族の娘に平民のマネをさせるなと言われるけれど、社会勉強の意味でもとても良いと思っているよ。」


 そうか。まあちゃんとした考えがあってのことなら大丈夫かな…。でも一つ心配なことがある。


「ブライトン卿。今あなたは商人組合(ギルド)から命を狙われていると聞いています。ユーフォリアをあんなところで働かせるのは危険ではないですか?」


「いや~、逆にニーナ様とパンドラ様がいるから、あそこが一番安全だよ。それにここだけの話だが、私の家族はニーナ様から護衛のためのマジックアイテムをお借りしているんだ。」


「マジックアイテム?」


 ブライトンは俺に向かって右手を差し出しだ。人差し指にシルバーのリングがつけられている。それは俺がニーナからもらった遠隔通話リモートトーキンの指輪と似ていた。ブライトンの指輪は俺のと違って3重になっている。ブライトンはそれについて説明してくれた。


「1つ目は、遠隔通話リモートトーキンの魔法が使える指輪。これで何かあったらニーナ様と念話ができる。2つ目は、弓矢や吹き矢、その他投石などの飛び道具から守ってくれる投擲物保護アンチスローインの魔法がかかった指輪。最後の一つは、食べ物に混ぜられた毒物や自分に害を与える可能性のあるものを認知させる毒劇物感知ポイズンセンサーの魔法がかかった指輪だ。商人ギルドには魔法の知識はない。正直これだけでも私の暗殺はほぼ不可能だ。」


「ニーナすごいアイテムを持ってるんだな?」


「持ってるんじゃなくて、作るんだ。魔力付与エンチャント魔法で、魔力の影響を受けやすい銀製品に魔法を付与させれば、これくらいのアイテムならいくらでも作れるぞ。」


「世界の文明レベルを変えてしまいそうな恐ろしいことを簡単に言うなよ。」


「いや、もちろんやたらにあげたりたくさん作って売ったりはしないぞ。今回はブライトンが命を狙われている間だけ貸すだけだ。」


「それならいいんだけど。…それじゃブライトン卿。正直俺たちの護衛なんて必要ないんじゃないですか?」


「確かに二人が付いてくれているもんだから、実はそんなに危機感は感じてないんだよね。商人ギルドの不正を暴く資料もパンドラ様が次々と調べてきてくれるもんだから、ほんと私なんかお飾りの領主みたいなもんだよ。ハハハ…。そうそう、バーン君たちにお願いしたい護衛の話なんだけど、来週フィックスの関税見直し検討会を行う事になったんだ。広い会場を借りて一般にも公開で行われるんだが、会場が広いんで人手が足りなくて、そのイベントの護衛の協力をお願いしたい。明日から他の騎士の皆さんとも集まっていろいろ打ち合わせをしてゆきたいと思うのでよろしく頼むな。」


「分かりました。そういえば、今回ブライトン卿が俺を直接指名してくれたそうですね。ありがとうございます。」


「あ、それ?私は君の剣の腕がどんなもんか見たことないから分からないんだけど、ニーナ様がバーンを呼んでくれって言うもんだから。」


「え?」


俺を信頼して呼んでくれたんじゃないの?

ビックリした顔の俺にニーナが言った。


「だって、バーン遠隔通話リモートトーキンの指輪やったのに連絡してこないからさ。バーンが寂しがってると思って呼んでもらったんだ。」


「え?……………そんな理由?!」


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