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千年の森の魔女と魔法の剣  作者: 叢咲ほのを
第2章 王都襲撃
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25.魔法使いセガールと王国魔法機関

「どのお方が魔法学者という方なのかな?」


 部屋に入るなり問うセガールに、ニーナが答える。


「私だ。」


「おお!お嬢さんが魔法学者か。お恥ずかしながらこの王国ではそのような名前の職業は聞いたことがない。どんな研究をされているのかぜひお話を聞かせて願えないだろうか?」


「ゴホン!」


 挨拶もせず魔法の話を始めるセガールに、アークさんが咳ばらいをして中断を促す。


「こちらは我がセントラール王国魔法機関最高顧問の魔法使いセガール殿だ。セガール殿、こちらのお嬢さんは魔法学者のニーナ殿、そのご友人のパンドラ殿です。」


「ん?ああ、挨拶が遅れてもうしわけない。セガールじゃ。」


「ニーナだ。これは聞きしに勝る変わり者のじいさんだな。」


「おい、ニーナ!」


 ニーナの言い方にセガールさんが怒らないか心配になり、ニーナをいさめる。


「ホッホッホッ!申し訳ない、ワシは魔法の話になると他のことが目に入らなくなってしまう事があってのう。」


 全然怒ってなどいなかった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 それからセガールとニーナは、しばらくの間あれこれ魔法談義を交わしていた。魔法の系統の分類だとかルーツについてだとか。正直俺にはよく分からない内容だった。ニーナとセガールは意外に話が合うようだ。

 そしてこれから魔法使いセガールに魔法機関を案内してもらい、見学をさせてもらうことになった。俺たちは城の廊下をセガールに付いて歩く。歩きながらセガールの持つ杖についてニーナから質問が飛んだ。


「セガールのその杖は、マジックアイテムというわけではなさそうだし、歩行補助というわけでもなさそうだな?やっぱり魔法使いっぽいから持ってるだけか?」


「ホッホッ、これか?良い質問じゃな。ちょっと待っておれ。(ブツブツ…)対象物浮遊フローティングオブジェクト。」


 セガールが杖を横向きに掲げ、呪文を唱える。手を離すと、杖が宙に浮いたまま空中に固定された。そして杖を腰の位置まで下すと、セガールはその杖に腰かけた。浮かぶ杖に腰かけたセガールは今宙に浮いている状態だ。


「どうじゃ?」


 セガールのドヤ顔。しかし俺たちはリアクションに困ってしまう。


「宙に浮かんどるじゃろ?まさにザ・魔法使いという感じがしないか?」


 …正直、ニーナの魔法で夜空高くを猛スピードで飛行する体験をしたばかりのため、驚くほどの衝撃はなかった。ニーナも苦笑いしている。それを見て、とても残念そうなセガール。


「ありゃ?これ初見の者にはウケるんじゃけどなあ…。浮遊魔法は見たことがおありのようじゃの。」


 浮遊どころか自由自在に飛行しちゃったんですけどね…。


「あ、あれですか?やっぱりこれで空を飛んだりできるんですか?」


 場の雰囲気を和まそうと俺が話に割り込むと、何もわかってないなあという顔をしたセガールが不機嫌そうに言った。


「この魔法で空を飛ぶにはたくさんの問題がある。まず一番の問題は、術者の魔力が切れると落下してしまうという事じゃ。この高さから落ちたら腰を打つ程度ですむじゃろうが、空から落ちたら即死してしまうじゃろ?それに空には風が吹いておる。風が強くなるほどコントロールが難しくなる。魔法で自由に空を飛ぶなんて素人が考え付きそうな空想じゃが、実際にできるわけではないんじゃ。」


「そ…そうなんですか…。」


 ニーナとパンドラがクスクス笑っている。セガールは俺が笑われていると思っているようで、自信満々な顔で続ける。


「じゃがこの魔法の最大の利点は、物を運ぶ事にある。重いものも魔法で簡単に移動できるようになれば、この世界の流通を変えてしまう可能性もある。宙に浮くと接地面との摩擦抵抗がなくなるため…」


「セガールさん、先に進みませんか?」


「おっ!そうじゃな。こっちじゃ。」


 これはあれだ…。聞きしに勝る魔法バカだ。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 最初に案内されたのは、能力値ステータス測定部門だった。ここは俺も能力値ステータス測定に来た事ある。自分の戦士としての力量を知りたい国民なら、大抵お世話になったことがある場所だろう。なんせ政策として国民の税金で行っているため、予約さえ取れればお金はかからないのだから。

 ちなみに俺の能力値ステータスはそこそこ良い。能力値ステータスだけで言えば既に騎士として必要な数値はクリアしている。俺が騎士に取り立ててもらうために必要なのは、後は実績だけだろう。


「ここはセントラール王国魔法機関の能力値ステータス測定部門じゃ。ニーナ殿、この国の数値化政策についてはご存知か?」


「おっ?さっきバーンからチラッと聞いたぞ。」


 セガールは自分で説明したかったのかちょっと残念そうな顔をし、そしてまた話を続ける。


「ここはその数値化制度の核となる部門じゃ。ここで働いている魔法使いたちによる鑑定ジャッジメントの魔法によって様々なものを数値に変換するのじゃ。どうじゃ?他の国では、こういう事はしてないじゃろう?」


「そうだな。初めて聞くな。」


「ホッホッホッ!(ドヤ顔)」


 広い部屋の中では今日も能力値ステータス測定は行われていた。そこでは上半身シャツ一枚になった男性たちが、測定結果を記入されるカルテという紙を持って何本かの列を作って並んでいた。


「ここでは人間の能力値ステータスだけでなく、武器や防具の性能ステータスの測定もやっておる。装備した状態での総合的な攻撃力・防御力なんかも測定することもあるんじゃ。」


「人間の持ってる魔力の測定なんかもできるのか?」


「おお!良い質問じゃ。やっておる。それによって自分が使える魔法の使用回数なんかも把握できるというわけじゃ。おいクアドラ!」


「ハァ~、何だい!そんな大きな声を出さなくても聞こえるよ!」


 セガールから大きな声で呼ばれてゆっくりとやってきたのは、白衣を着た白髪の老婆だった。セガールよりも年上なのだろう。背中は曲がり歩く速度もゆっくりだ。開いているのか閉じているのか分からないくらい細い目でこちらを見つめる。


「魔力測定は、このクアドラがやっておるんじゃ。クアドラ、ちょっとワシのお客さんに鑑定をかけてくれんか。」


「ハァ~、何だいお嬢ちゃん、お嬢ちゃんの魔力を測定してほしいのかい?」


「いや、そこのバーンの魔力を測定してくれ!」


「お…俺?!」


 まさかの流れ弾に慌てる俺。というか身体能力の測定はしたことはあるけど、魔法も使えない俺の魔力測定なんかしてなんか意味あるの?


「ちなみに普通どれくらいの数値になるんだ?」


「ハァ~、王国の他の魔法使いは100あるかないかだね。魔法使い見習いだと20から80と言ったところか。それじゃお兄ちゃんの魔力を測定するよ!」


 魔法使いの老婆は手に横20cmくらいの薄い器具を持っていた。その器具は横に温度計のような縦の目盛りがあり、中央に000と数字が表示されている。おそらくその目盛りを読み取って数字で表示される仕組みなのだろう。

 それをかざして俺に魔力鑑定マジックポイントジャッジメントの魔法をかける。俺の体がぼわっと光り、すぐに消えた。器具に表示された俺の魔力値は…


「ハァ~、お兄ちゃんの魔力は、『1』じゃ。」


「1…。」


 げらげら笑うニーナ。笑い涙を拭きながらニーナは質問する。


「それは最高いくつなんだ?」


 それにセガールが答える。


「上限が決まっとるわけじゃないが、このクアドラが持ってる測定器は999まで測れるようになっておる。もしかしたら将来それ以上の測定できない数値を持つ者が出現する可能性もあるかもしれないのう。ちなみにわしは日によって数値が変わるが、最高で256じゃ。」


 とりあえず俺の256倍すごいってことね。セガールのドヤ顔をにイラっとする。


「ホッホッホッ!」


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