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千年の森の魔女と魔法の剣  作者: 叢咲ほのを
第1章 西の街へ
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17.翌朝

 ――――そして夜が明けた。


 部屋まで起こしに来てくれたメイドに礼を言い、俺はベッドから起き上がった。

 さすがにまだ眠い。もうちょっと寝ていたい。睡眠時間が短かったためだ。しかし客としてこの領主の館に泊めてもらっている身分で、そんなに遅くまで寝ているわけにもいかないだろう。


 昨夜の吸血鬼バンパイヤの襲撃は、館の住人たちには知れることなく、俺たちも特に話すでもなく、何事もなく事態は収束した。

 あまり余計なことを話して不安がらせるのも良くない。

 とりあえず脅威は去ったのだ。それでいいじゃないか。


 朝も領主の家族たちと一緒に朝食をいただいた。

 さすがに昨夜のようなコース料理ではなく、パンとハムエッグとじゃがいものスープという、質素倹約な領主という噂通りの食事だった。もちろんそれは悪い意味ではなく、元々高級な料理を食べなれていない(というか食べたことがない)俺からしたら親しみやすい食事であり、質素であってもとても美味しい料理だった。

 ニーナとパンドラの二人も食事には満足だったようで、娘が元気になったことがうれしい領主に至っては終始ご機嫌だった。

 こんな平和な朝食も良いものだなと思った。


 さて俺の任務も無事終え、王都に帰らなければいけないわけだが、ニーナとパンドラに、これからどうするか尋ねてみた。

 森の外へ一緒に行こうとは言ったものの、俺の旅にどこまでも一緒に行こうと誘ったわけでもない。

 ニーナは少し考え、そして思い出したように言った。


「そういえばバーン。お前は私の服を買ってくれると言ってたな!とりあえずそれを買いに行こう!」


 忘れてました。そのまま忘れてくれてもいいのに。


 俺も任務を終え、そう急いで帰らなくても問題ない。領主からの提案もあり、ニーナの服を買ったりしながら今日一日この西の街フィックスを観光し、ここにもう一泊させてもらってから王都へ帰ることにした。


 買い物に行くと知るとユーフォリアも一緒に付いていきたいと言ったが、あんなことがあったばかりだ。もれなく護衛が付いてくることになるだろう。そんな大人数引き連れて買い物するもの大変だ。丁重に断ったが、とても残念そうな顔をしていた。


 館を出る時、領主ブライトンから、少ないが娘を助けてくれたお礼だと革の袋を渡された。

中には金貨が10枚=1000G(=10万円くらい)が入っていた。

 俺は、報酬は別にもらっているのでこれは受け取れません!と一度断ったのだが、領主ブライトンはニーナとパンドラの方をちらっと見た後、「レディの服というのはお金がかかるものだ。少ないかもしれないが足しにしてくれ。」と告げた。

 領主、マジリスペクトッス!


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 女性の買い物というのは、なぜこんなに時間がかかるのだろうか?

 ニーナとパンドラの二人でスカートを選んでいるのだが、こっちにしよう…やっぱりやめた…でも…みたいなことを延々と話している。時々俺にも意見を聞いてくるのだが、結局俺の意見など一切参考にしないようだ。どちらも同じように見えるし、何をそんなに悩まなきゃいけないんだ?どっちでもいいじゃないか。どうにも男の俺には退屈で仕方がない。

 持て余した俺は、外で待ってるよと言い残して店の外に出た。


 この通りは人通りも多い商店街となっている。だが横道を覗くと…、人通りは極端に減る。

 1本通りを外れるとガラの悪い感じの者も多く見られた。

 領主が言っていたが、実はあまり治安が良いとも言えないらしい。治安を維持するための警備に当てる予算がなかなか取れないのが悩みなのだそうだ。

 この街は東には王都、西には港町へ繋がり、北には山のふもとの農業や林業、酪農が発達した様々な村に通じた道が続く。交易の中心として商業が栄えているのだが、商人たちとそれ以外の者たちとの貧富の差が激しい。繁栄の陰にはどこにも闇があるものだ。

 ただの剣士である自分には難しいことはよく分からないのだが、できればみんなが豊かになって平穏に暮らせる世の中になればいいのにと思う。


 通りすがりの男とぶつかりそうになり避ける。そういえば領主はスリやひったくりの類に気を付けろとも言っていたな。強盗なら返り討ちにしてやるのだが、スリなどにあっては堪らないと思い、懐に入れた金貨の入った財布をしっかりと確認するのだった。

 その時、


「どろぼー!」


 という叫び声が聞こえた。

 被害に会う可能性があるのは自分だけじゃないよなと思い、声のした方を見る。

 通りの人ごみの中を、男がこちらへ向かって駆けてくる。他の通行人にぶつかったりしながら。巻き込まれちゃいけないとみんなその男を避ける。他人は助けてくれない、自分の身は自分で守れというのがこの街の流儀なのかな?そんなことを思いながら、他の通行人と同じように見逃すことは、やっぱり俺にはできなかった。


 俺はひったくりの男の前に俺は立ちはだかってしまう。


「なんだお前?!どけっ!」


 ひったくりは大きめのナイフを抜くと俺に向けて振り回した。


(やれやれ・・・。)


 俺がさらに一歩近寄ると、焦って混乱するひったくり。


「脅しじゃねえぞおお!!」


 俺にナイフを斬りつけようと振り下ろした時、俺はそいつのナイフを持った右手首を掴み、後手にひねり上げた。


 俺がひったくりを取り押さえた時には、人だかりが出来ていた。

 その後騒ぎを聞きつけた兵士に、ひったくりの身柄を差し出す。


 盗まれたお金が戻ってきて安心したのか、その子は泣きながら俺にお礼を言った。

 ひったくりにあったのは10歳くらいの女の子だったのだ。

 ひったくりを取り押さえる事よりも、その子を泣き止ませる方が俺には大変だった。



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