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千年の森の魔女と魔法の剣  作者: 叢咲ほのを
第1章 西の街へ
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15.洋館

大蝙蝠ジャイアントバットは、洋館の3階のバルコニーに降りる瞬間人間の姿へと変わり、華麗に着地するとそのまま室内へ続く扉を開いた。


大きな部屋の中には血を吸われ吸血従者バンパイヤフォロワーとなった召使いの娘がいた。

召使いは吸血鬼バンパイヤの帰還に気付くと駆け寄り、「お帰りなさいませ」と頭を下げる。

そんな召使いを無視するように吸血鬼バンパイヤはイライラしながら独り言をつぶやく。


「全く何なんだあいつらは?!この吸血伯爵にエナジードレインだと!?私より上位の魔物なのか?!チッ!せっかく領主の娘をあとちょっとで私の吸血従者バンパイヤフォロワーにできたというのに!しばらくはあのフィックスへ行くのも控えるしかないな。」


そして吸血鬼バンパイヤは黒い革のソファーになだれ込む。


「疲れた…。くそっ!」


傍で召使いが不安な顔で指示が来るのを待っている。


「ワインを持ってこい。」


「はい!」


召使いは慌てて部屋から出てゆく。

まもなく戻ってきた召使いにワインをグラスに注がせると、グラスを窓へ向け外の満月に透かし、ワインの赤さと月明りに見とれる吸血鬼バンパイヤ

そして一口ワインを口に含んだ時、バルコニーの向こうから喧噪が聞こえた。


危ない危ない!落ちる落ちる!うるさい黙れ!アワワワワ!


そんな声がしたような気がした。

耳を疑う吸血鬼バンパイヤ

すると突然バルコニーに、先ほど領主の館で対峙した3人組が姿を現したのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「ブーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!」


俺たちの姿を目にした瞬間、口に含んだワインを盛大に噴き出す吸血鬼バンパイヤ


「うおっ!汚っ!」


のけぞるニーナ。


「きさまら?!どこから入ってきた?!」


「どこって、ここからだけど?」


「ふざけるな!ふざけるな!ふざけるな!」


憤る吸血鬼バンパイヤ。冷静なニーナとパンドラ。そして俺は、慣れない夜空の散歩に満身創痍だった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


俺たちが吸血鬼バンパイヤの洋館にたどり着いて30分くらいが経過しただろうか。


今の状況から説明したい。


ニーナとパンドラは、俺たちが来た時に吸血鬼バンパイヤが座っていたソファに座っている。パンドラは吸血従者バンパイヤフォロワーの少女を隣に座らせ、抱きしめて頭をなでている。

俺はその横でフレイムソードを床に突く形で構えて立っている。

そしてパンドラの目の前には・・・、先ほどまで快気炎を上げていた吸血鬼バンパイヤが全力で土下座をしていた。


このような状況に至るまで何があったかを簡単に説明したい。

まず部屋に入るなりパンドラの雷撃呪文で吸血鬼バンパイヤを瞬殺→大蝙蝠ジャイアントバットとなって蘇る→雷撃呪文で再び殺す→蘇る。の繰り返しを何回かした後、だんだん吸血鬼バンパイヤが肩で息をするようになってきた。復活できても体力消耗で動けなくなった吸血鬼バンパイヤに対し、パンドラから指示され俺はフレイムソードで心臓を突いて動けないようにした。死ぬ寸前の状態で激痛でのたうち回る吸血鬼バンパイヤ。その状態でパンドラのお説教タイムが始まり、最初強気だった吸血鬼バンパイヤも命乞いを始めたのだった。

完全に戦意を喪失させたのを確認したところで、パンドラの指示で吸血鬼バンパイヤの心臓に刺したフレイムソードを引き抜いた。そして吸血鬼バンパイヤに土下座をさせた状態でパンドラの尋問が始まったのだった。


そして分かったのは、とりあえずこいつに仲間はおらず単独犯であること。夜な夜な領主の娘の精気を吸い吸血従者バンパイヤフォロワーとしようとしていたこと。これまでも何人もの美しい娘を吸血従者バンパイヤフォロワーにし、自分の館へ誘拐していたこと。領主の娘を吸血従者バンパイヤフォロワーとする前に、領主が王都へ高回復薬ハイポーションの購入をしたことを知り、傭兵を雇って輸送中の俺を襲わせて妨害しようとしたこと。つまりこれまでの一連の事件は全てこいつが原因だったという事だ。


吸血従者バンパイヤフォロワーの娘に対しては、パンドラが支配者の上書きという魔法を使い、この吸血鬼バンパイヤの支配から解放した。館にいる他の吸血従者バンパイヤフォロワーに対してもこれから解放する予定だ。


「この不肖アルカード、パンドラ様が我々の祖先にして高潔なる純血吸血鬼バンパイヤオリジンであるとすぐに見抜けず、歯向かおうとしてしまい本当に申し訳ありませんでした!!!この罪は100回死んでも償いきれません。どうか今後パンドラ様の下僕としてお仕えすることで罪を償わせていただきたく存じ上げます。どうかご厚情をお願いいたします!」


必死だ。こいつ必死だ。哀れに思えてくる。


「恨みは忘れないとか?覚えておけとか?そんな事言ってなかった~?」


それに対しパンドラは非情だ。そして根に持つタイプだ。仲間ながら恐ろしい。絶対に敵に回したくない。


「パンドラ様にご無礼な言葉を吐いてしまい本当に本当に申し訳ありません!!!パンドラ様に歯向かったバカな私は死にました。今ここにおりますのはパンドラ様の従順な下僕でございますっ!!!」


こいつ・・・


「どうしよっかな~?日の当たる丘の上で十字架に貼り付けて毎日太陽の光を浴びせてあげるとかどうかな?」


恐ろしい提案だ。吸血鬼バンパイヤが哀れに思えてきた。


「ヒイイイイイイ!お許しくださいパンドラ様!不死身と言え、太陽の光を浴びてしまえば、この身は完全に消滅してしまいます!!!」


「そうなの?」


ふと気になって俺は聞いてみる。

「あれ?ちなみにパンドラは太陽光は平気なの?今日も日中普通に外出てた気がするけど?」


「苦手よ~。日焼けしちゃうじゃない?」


それだけかよ?!弱点無しかよ?!


「さすがはパンドラ様です!!!でも私はパンドラ様と違い脆弱な吸血鬼バンパイヤでございます。どうかどうかお慈悲を!!!」


「バーン、どう思う?」


俺に振られた。


「そうだな。最初こいつに感じていた脅威はもう感じなくなった。完全にパンドラに対し服従しているんだろう。」


「そっか~。バーンがそういうなら許してあげようかな~?」


「あ、ありがとうございますっパンドラ様!!!」


「だけど条件があるわ!」


「ヒッ!」


「まず、罪のない人間に対し今後一切精力を吸うのは禁止ね!」


「は、はいっ!」


あれ?大丈夫なのか?軽く聞き流してはいけないと思い、パンドラに質問してみる。


「パンドラ、吸血鬼にとって人間の血や精気を吸うのは食事をするのと同じように重要じゃないのか?」


「ああ、こいつなら大丈夫よ。それは下位の吸血鬼バンパイヤの話で、こいつは結構血が濃いからそんなことしなくても生きていけるわ。普通に人間の食事とかで大丈夫よ」


「え?そうなのか?」


「さすがパンドラ様。おっしゃる通りです。こう見えても私も高貴な上位吸血鬼バンパイヤであります。人間の生き血など吸わなくても平気です!」


「ちょっと待て?!じゃあお前なんで領主の娘の精気を吸ってたんだ?」


「そりゃあ決まってるじゃない?こいつは快楽目的よ。」


「快楽犯だと?!」


「さすがパンドラ様。返す言葉もございません。若く美しい娘の精気を吸うほど甘露なものはございません。しかしそれら全てパンドラ様のもの。私めに今後味わう資格はございません!」


快楽のために若い娘を何人も犠牲にしてきただと?!


「許さん!やっぱりこいつ殺そう!」


今度は俺がキレた。

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