14.追跡
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夜空に飛び立った大蝙蝠を見送ると、ニーナは一言つぶやいた。
「行ったか?」
「ニーナ、なんで止めたんだ?」
「あいつの住処まで案内させるために決まってるだろう?あいつは空を飛べるのは自分だけで私たちが付いてこれないと思っているだろうが。さて、バーン。お前にこの部屋まで付いてきてもらったのは、侵入者が万が一人間だった場合、お前に対処してもらおうと思っていたからだ。だが、見ての通りあれは私たちの側の世界の生き物。この先は私たちで決着をつけるつもりだ。おまえはどうする?一種に行くか?」
そうか。人間同士の出来事には二人は手を出さないって約束は守っていてくれてるんだな。
そして今回の事件は闇の住人である吸血鬼が関わっていたため、ニーナとパンドラが吸血鬼退治を引き受けてくれるという事か。
そしてニーナに続いてパンドラからも俺の意思確認をされる。
「バーン。ここから先は人間のあなたには危険よ。でもあなたにはフレイムソードがある。その気になればこちらの世界でも戦える力はある。ただし命の保証はできないわ。いつでも私たちが守ってあげられるとは限らないってことは分かっていてほしいの。でもそのうえであなたが付いてくるというなら止めないし、ここで待っているというなら、私たちだけでケリを付けてくるわ。」
「つまり俺の意思次第って事だな?」
「ええ。」
「ニーナ。パンドラ。俺も一緒に連れて行ってくれ。」
俺は迷わずそう答えた。
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「分かった。これからのことを説明しておくぞ。」
俺も行くという申し出をすんなり受け入れてくれ、ニーナが説明を始めた。
「これからあの吸血鬼の後を付けて、あいつの根城へ向かう。おそらくそこにはあいつに血を吸われて不死者となった人間がいる。あの吸血鬼のレベルによってその吸血従者の状態は変わる。知性がない徘徊死者かもしれないし、下等吸血鬼である可能性もある。そして、もしかしたらそこにあいつの仲間がいるかもしれない。それは同じ吸血鬼かもしれないし、それ以外のやっかいな魔物である可能性もある。なんにせよ、パンドラと同じ吸血鬼の血族が今回のように人間に危害を加えるのは私たちとして不快なことだ。」
「俺は足を引っ張らないようにしなきゃいけないな…。」
認めるしかない。二人にとって俺は足手まといなんだろう。ただここまで関わったのだから、事件の顛末まで付き合わせてくれるというだけだ。だが俺はそんな人間の世界に隣り合わせな魔物の世界に対し、恐ろしいからと目を背けて生きて行ける自信がない。より大きな困難に対しても戦えるよう強くなりたい。だから今は二人の厚意に甘えさせてもらう。
「で、どうやって追うんだ?」
「まず姿を消すぞ。隠蔽。」
ニーナが俺たち3人に魔法をかけた。
「これで私たち以外の人間から私たちは見えなくなった。では行くぞ。飛翔。」
ニーナは俺の手を取り呪文を唱えた。3人の体が宙に浮く。こ・・・これは?
「俺たちも飛んで行くの?」
「そうだ。最初は飛ぶ感覚がつかめないだろうから手を引いてやろう。行くぞ。」
「わ、わっ!」
ニーナに手を引かれ、俺たち3人は領主の館の窓から夜の空へ飛び立った。
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「ちょっ!待って!!!高い!高い!高い!高い!!!!!」
俺は空を飛ぶニーナの体に抱きつきながらジタバタと暴れていた。
おそらくパンドラの目には、あまりにもみっともない俺の姿が写っていただろう。
「こら!暴れるな!飛びにくいだろう!」
「待って!ちょっといったん下して!」
「そんな事してたらあいつを見失うだろ?!」
「だってこんなに高いなんて聞いてないよー!!!」
「あんまり大声出すと気づかれるから大人しくしろ!あと暴れるのもやめろ!コラ!くすぐったいだろ!」
「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」
後ろでパンドラの笑い声が聞こえる!
「ウフフ。バーンが高所恐怖症だったなんて意外ね!」
「なんだ?お前高所恐怖症だったのか?」
「分かんない!こんな空高く飛んだ事ないし!」
「お前にも魔法をかけてあるんだから、私から離れても落ちないって!」
「待って!ごめんなさい!離さないで!!!」
「コラッ!分かったから暴れるな!変なとこ触るな!」
「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさいいいいいいいい!」
「ウフフフフ…」
そんな俺たちのずいぶん先を飛ぶ大蝙蝠を見失わないよう気を付けながらの飛行が続き、そして山中にある3階建ての大きな洋館に大蝙蝠が降りて行くのを確認した。




