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千年の森の魔女と魔法の剣  作者: 叢咲ほのを
第1章 西の街へ
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13.対峙

静けさの広がる真夜中。俺たち3人は領主の娘ユーフォリアの部屋の中で黒服の男と対峙していた。


ユーフォリアはベッドの中で静かな寝息を立てている。

どうやら館全体に黒服の男が催眠スリープの魔法をかけたようで、今この建物の中で起きているのはこの部屋にいる俺たちだけのようだ。


ベッドの横で立ち、こちらに殺気を向ける黒服の男。

でかい。190cmはあるだろうか?俺よりも一回り大きく、一対一の格闘になったら明らかに相手が優位であろう。

だがおそらくこの男は魔法使いだ。

こんな体格の良い魔法使いがいていいのだろうか?


しかしニーナとパンドラという見た目が若い娘の魔法使いの存在を知っている今、この男の姿に惑わされることはない。

フレイムソードを構える俺に、武器を持たず敵意を向けるこいつの攻撃方法は魔法のはずだ。


「そうか、お前たちか。愛しいユーフォリアを治療したのは…」


男は右腕を上げこちらへ向ける。


「許さん…」


そしてぶつぶつと何か呟き始めた。

まずい!呪文詠唱か?!魔法使いには先手必勝しかない。俺は剣を振りかぶり男に斬りかかろうとした。しかし剣が男に届く前に、男の呪文詠唱が完了した。


雷撃ライトニングボルト!」


男の右手からほとばしる雷撃が、ダッシュした俺の体を反対側に吹き飛ばした。

全身に電気が流れる激痛。

そして俺の体が反対側の壁に吹き飛ばされてゆくその途中、同時にニーナとパンドラへと浴びせられる雷撃も目にした。

しかし二人へ向けられた2本の雷撃は、1本はニーナの体の前にある見えない丸い防御壁にかき消され、もう1本はパンドラに直撃したもののパンドラの髪とスカートを少したなびかせる程度であった。


激痛に耐えながら、俺はすぐに立ち上がる。

おそらくフレイムソードに魔法に対する耐性があるのだろう。痛みはあるがダメージは少ない。

フレイムソードを装備していなかったら一撃で殺されていたかもしれない。

恐ろしい攻撃だったが、俺はまだ戦闘続行可能だ。

しかもニーナとパンドラに至っては無傷ノーダメージだ。


最初男は剣を構える俺のことを警戒していたであろう。

そして今、俺よりも武器を持たない二人の女の方が脅威と理解し、驚きの声を上げた。


「貴様ら何者だ?!」


言い終わる前にパンドラが男の目の前まで迫る。次の呪文詠唱をさせる時間を与えず、小柄なパンドラの右腕が大男の首に伸び、強力な握力で締め付けた。


「グギギガガ・・・」


のけぞり激痛に苦悶の表情を浮かべる大男。両手でパンドラの腕を掴むが振りほどけない。そして、


「下等生物のくせに調子にのるんじゃないわ!」


とパンドラが呟くと、


生命力吸収エナジードレイン!」


男の全身から生命力の光が、パンドラの右腕を伝わり吸い取られてゆく。

苦悶の表情で男は声にならない悲鳴を上げる。とめどなく吸い取られてゆく生命エネルギー。

数十秒だったのか数分だったのか分からないが、その恐ろしい景色は続き、そしてついに男の生命力が尽きた。

パンドラが掴んでいるのは、干からびてカラカラになった黒い服を着た黒いミイラだった。


そんな男の抜け殻を床へ捨てるパンドラ。

心なしか肌がつやつやしている気がする…。


そしてパンドラはベッドのユーフォリアを覗き込み、日中に見せられたように、また再び唇を重ね、生命力放出エナジーリリースの魔法をかけた。

魔法の光が掻き消えた後には、ユーフォリアは健やかな寝息を立てていた。


終わったのか…。

気が付けば俺の出番はなく、パンドラの圧倒的な攻撃の前に魔法使いは殺されてしまった…。

この二人と一緒にいると、今後俺の出番って一切ないんじゃないだろうか?

そもそもこの二人、人間のことには関わらないって言ってたはずなのに…。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


戦闘が終わり気が緩んだ俺がぼーっとしていた瞬間、黒服の男の死体からもこもこと煙が出ていた。

異変に気付き視線を送ると、灰になっていた男の死体から煙が立ち上っているのが分かった。


「何だ?!」


俺が声を上げた直後、煙の中に大きな黒い影が現れ、バタバタと羽をバタつかせた!


大蝙蝠ジャイアントバット?!


本体は人間より一回り小さいが、羽を広げると3mはあるであろう、巨大なコウモリがそこにいた!!!


「きさまら人間ではないなああああ?!!!」


コウモリが声を上げる。この声はさっきの大男。コウモリになって蘇ったのか?!


「だがしかし吸血鬼バンパイヤたるこの私は不死身だ!特に今夜は満月。何度殺されようと私のエネルギーは尽きることがない!今宵の恨みは忘れぬぞ!覚えておけっ!!」


人間の天敵、恐怖の生物、吸血鬼バンパイヤ。だがパンドラの正体を知っている今、さほど恐怖感は感じなかった。


吸血鬼は捨て台詞を吐くと飛び立とうとする。


すぐさま攻撃しようと俺が一歩前に踏み出すと、ニーナが片手を俺の前に出し静止した。

なぜ?


そして大蝙蝠は窓から月夜の空へ飛んで行った。



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