12.真夜中の異変
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夕食を終え、俺は寝室へ戻る。
食事の後も領主の家族といろいろおしゃべりをしていた。
領主の娘ユーフォリアは、自分を助けたパンドラに対してすごく感謝の言葉を述べていた。なんだか目がハートになっていた気がする。あれは感謝というより何か別の感情が芽生えているような気がしたのは俺の気のせいだろうか?
それともう一つ気になったのは、領主は俺のことをニーナとパンドラのしもべか何かだと思ってるふしがあるな。なんか誤解されたままなのは癪なんだけど、説明するのも面倒くさい。
そんなことを考えながら寝心地のよさそうなベッドにもぐりこむ。
今日はいろいろと疲れた・・・。
旅の疲れのせいかベッドの寝心地の良さのせいか分からないが、俺はすぐに熟睡してしまった。
その日の夜は大きな満月で、窓から見える月明りが部屋を明るく照らしていた。
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何時頃になったのか分からないが、まだ月明りの差す真夜中のことだった。
枕元で俺を起こす声がした。
「バーン、バーン……。起きて!・・・んもぅ!睡眠覚醒!」
「ん…?」
なんか眠りから覚めるための魔法をかけられた気がする。
「誰だ…?」
寝ている俺を覗き込む人影。殺気は感じなかったため俺は焦ることなくその人影を確認した。
月明りに照らされ、透き通るように光る銀色の髪。
美しい顔の若い女性…。
「ん…?パンドラ?えっ?えっ?えっ?」
別の部屋に寝ているはずのパンドラが、真夜中に俺の部屋に何をしに?
「えっ?ちょっと待って!心の準備が…」
「何言ってるのよ!早く着替えて一緒に付いてきて。」
「へ?」
よく見ると後ろにニーナもいて、パンドラは旅の時と同じ服装をしている。どこか出かけるのだろうか?
この二人と行動してきて分かってきたことがある。それは、こういう時にはあまりしつこく質問せず、黙って付いていけばいいという事だ。だいたい後で理由が分かる。
取り乱したのは寝ぼけたせいにさせてもらおう。
いそいそとブーツを履き、革の鎧を着てショートソードを腰に差した。
「行くわよ。」
「どこに?」
「しっ!静かに!」
…とりあえず黙って付いていこう。
パンドラとニーナに先導され、夜の領主の館の中を歩く。
状況を理解するため、俺は脳みそをフル回転させる。
階段を上る。
玄関に向かっているわけではないという事だ…つまり夜逃げとかではない。
もちろんここから逃げる理由もないしな。
夜中に他人の家でこそこそ歩いていると、自分が盗賊にでもなった気分だ。
しかしこの二人がこの館から何か盗もうなんてことはないだろう。
欲しいものがあれば正面から強奪できるだろうし。
だからきっと何か目的があるのだろう。
それにしても勝手に徘徊して見つかったら怒られないか?
意外と小心者の俺はビビり始めていた。
「?」
廊下を歩いてゆくと、廊下の片隅に黒い塊が見えた……
人が倒れている?
さらに近寄ると、領主と一緒にいた警備の兵士だと分かった。
死んでいるのか?・・・いや眠っているだけだ。
なんで廊下で寝てるんだ?そんなに疲れていたのだろうか?
すぐ横は確か日中に訪れたユーフォリアの部屋だ。
部屋の外で警護中に疲れて居眠りしてしまったのか?
すると突然パンドラが、ユーフォリアの部屋の扉を強く開けた!
バタン!!!
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扉を開けると外からの風が吹き付けた。
窓が大きく開いており、カーテンが風でバタバタをなびいている。
窓の外には満月が輝き、部屋全体を薄明るく照らしていた。
部屋に一歩踏み込んだ俺たち3人が見たのは、ユーフォリアが寝ているであろうベッドに覆いかぶさるように屈みこむ一人の男だった。
「はて…?館全体に催眠の呪文をかけたはずだが…。」
男がこちらを見る。
「寝つきの悪い者もいたものだ…」
そう言いながら、ゆっくりと男は立ち上がった。
感じる敵意。
その男の姿、黒いタキシードに黒い外套…
俺はこの姿を見たことがある!
そうだ!こいつは傭兵を雇い俺を襲わせた魔法使いだ!!!
瞬時に、俺はフレイムソードを抜刀した。
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