第2話 初めてのカチッ
おばあちゃんが、笑いながら何かを話しかけている。
「なに?おばあちゃん、聞こえないよ」
うっすらと見えているおばあちゃん。
でも声は聞こえない。
リビングからお母さんの声が聞こえた。
「愛華~、いい加減に寝なさ~い!」
(私が寝ると、部屋の電気が消されちゃう。
まだ、おばあちゃんとお話ししたいのに!)
愛華が棺に身を乗り出した次の瞬間---
---カチッ---
愛華の頭の中で、何かの音がした。
(あれ? おばあちゃんが、はっきり見える!)
はっきり見えるおばあちゃん。代わりに部屋の色彩が薄くなった。
「あれま!愛華、こっちに来れるのかい?」
今度はおばあちゃんの声が、はっきり聞こえる。
「おばあちゃん、どっか行っちゃうの?」
涙声の愛華に、おばあちゃんは優しく語り掛ける。
「おばあちゃんはね、七日後に霊界ってトコにいくんだ。
そこで49日過ごした後、天国に行けるらしい。
昨日、迎えに来てくれた人が教えてくれたよ」
「もう、会えないの?」
「霊界に行っても、天国に行っても、
おばあちゃんはいつでも愛華の事、見てるから大丈夫だよ」
「愛華も天国に行ける?そしたらまた、おばあちゃんに会える?」
「愛華が一生懸命に生きて寿命をまっとうしたらね。
天国っていうのは、人の道を踏み外さなければ
誰でも行けるんだよ」
「おばあちゃん……」
愛華が涙声でつぶやいたその時、
部屋のふすまが空いた。
「愛華!いい加減に寝ないと……」
父親が入ってきた。
そして、愛華を見た瞬間、固まった。
「あ、愛華?」
部屋には愛華一人。
ただ、その身体はうっすらと透けている。
おばあちゃんが語り掛ける。
「さあ、愛華。もう部屋に戻って寝なさい。
あしたのお葬式でウトウトされたら、おばあちゃん悲しいよ」
「なんか部屋が白黒なんだけど、どうしたら元に戻るの?」
「強く『戻れ!』って念じれば、もどれるはずだよ」
愛華は念じた。
(戻れぇーっ!)
---カチッ---
また頭の中で音がした。
部屋の色が戻り、おばあちゃんは見えなくなっていた。
振り返ると、呆然とした顔の父親が立っている。
うっすらと透けていた愛華が元に戻ったのを見て、父親は尋ねた。
「あ、愛華? 今、何をしてたの?」
恐る恐る尋ねる父に愛華は答えた。
「おばあちゃんと、お話ししてたの」
父はそれ以上、何も言わなかった。




