第1話 おばあちゃん
「愛華、明日はおばあちゃんと最後のお別れだから
今日ははやく寝なさい」
「うん、もうちょっとだけ」
愛華が答えると、父はリビングに戻っていった
「おばあちゃん子だったからねぇ」
「6歳の子には、まだお葬式の意味って分からないんじゃないの?」
奥から親戚のおじさんや、おばさんの声が聞こえる。
みんな黒い服を着ている。
病院から帰ってきたとき、おばあちゃんには白いシーツが
かけられていた。
その後、白い服に着替えてお化粧をして、
棺に入れられてキラキラした台に置かれた。
近所の人や、知らない親戚の人もたくさん来て、
おばあちゃんの部屋には、お線香の香りが立ち込めていた。
◇
愛華は物心がついた時から、おばあちゃんに連れられて
家の裏山にある「稲荷神社」に登っていた。
おばあちゃんが境内の掃除をしている間、
愛華は一人で遊んでいる。
でも時折、山に住む子狐が草むらから顔を出す。
「鬼ごっこしよう!」
愛華が走ると子狐は追いかけてくる。
6歳の子供は、あっという間に追いつかれ
子狐が軽く体当たりしてくる。
「今度は愛華がオニね!」
愛華が走り出すと、子ぎつねが逃げる。
速い。絶対に追いつけない。
「速すぎるよー、ずるーい!」
愛華が文句を言うと、子ぎつねは止まって待っていてくれる。
おばあちゃんの掃除が終わり、お酒と稲荷ずしのお供え物をすると
今度は愛華たちのごはんタイムだ。
ベンチに座り、
おばあちゃんが作ってくれた稲荷ずしをほおばりながら、
水筒のお茶を飲む。
隣では子狐も稲荷ずしを食べている。
境内のベンチでお昼を食べる時、
木々が風に揺れてサワサワと音を立てる。
いつも優しい風が頬をなでる。
愛華はこの時間が大好きだった。
(ずっと、こうして遊んでいたいな……)
◇
おばあちゃんが亡くなってから、初めて知ったことがある。
こうした地方にある小さな神社は、神主さんが常駐していない。
掃除や管理は地元の人たちが行い、祭事の時だけ大きな神社の
神主さんが出張してくれる仕組みらしい。
「なんでお通夜の時は、
神主さんじゃなくて、お寺のお坊さんなんだろ?」
理由はよくわからないが、
この辺りでは、それが一般的らしい。
それにしても……
「なんでみんな、無視するの?」
おばあちゃんは、棺の後ろに座って、ずっと笑いかけてくれてるのに




