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陛下、寵愛なんて望んでません。  作者: 犬村汐里


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第6話



 執務室で2人きりという状況は、きっと多く与えられることではないだろう。


 そう思った俺は、姉のことを聞くことにした。



「姉、麗霞(リーシア)は元気ですか?」


「ああ、昨日の晩、会いに行った。とても元気そうにしていた」


「……」



 自分で聞いておいて、胸のムカつきが出てくる。


 なぜ姉が後宮に入らなきゃいけなかったのか。


 姉にはもっと相応しい人がいたのに。



「お前は姉のことがとても好きなのだろう? 麗霞(リーシア)からも聞いている」


「はい。姉のことは大切に思ってます」


「姉を奪った男ということになるが、お前は俺のことをどう思う?」



 揶揄うように楽しそうな顔をしていた。


 だからこそ本音を言ってやろうかと思った。


 どんな顔をするのか気になったから。



「私は、姉と過ごせる時間があまりなかった。だから……すごく……あなたは嫌いです」


「ハハハハッ、良い、いいな。見立て通りの性格をしている」



 見立て通りってどんな性格だよ、とツッコみたくなった。


 でも、笑い飛ばしてくれたおかげで、憎悪を抱くことはなかった。



 もし謝られてたら──、殴り飛ばしてただろう。




「姉は、とてもいい妻になるはずです」


「そう思う」


謝志(シエ ジー)家の姫君として過ごし、許嫁と結婚して、幸せな家庭を作るはずだったんですから。オヤジが後宮に入れるなどと言い始めなきゃ……」



 悔しさで唇を噛みしめる。




 姉は許嫁のことを愛していた。


 惚れあっていた。



 後宮に入ると決まったときの姉の様子はずっと頭に残っている。




『どうしてなの!? どうして私が!?』



 オヤジが告げた言葉に、姉は言葉を失っていた。


 そして、その事実を理解したとき、大粒の涙を流して叫んだのだ。




 俺は、その日からオヤジが許せない。




「……高い地位についている一族が後宮入りしないのは、謝志(シエ ジー)一族だけだった」


「オヤジも同じことを言ってましたよ」


「なら、分かってくれるか」


「いいえ。俺はまだガキなので分かりませんね」




 そう言いながら俺は茶をすすった。



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