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陛下、寵愛なんて望んでません。  作者: 犬村汐里


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第20話


 今挨拶できる限りの寵臣達へ挨拶回りをして、俺は宮へ戻ってきた。そこで使用人として仕える人を肖然から紹介される。



「こちらが李翔、あなたの侍従、そしてこの宮の侍従や侍女、宮女を束ねる人物です」



 李翔は深々と拱手をした。



「李翔と申します。何卒よろしくお願い申し上げます」


「よろしくお願いします」



 肖然が「次に」と言って一人の麗しい女性に手を向ける。



「彼女が侍女として働く任凛風」


「任凛風です。志明さまと同い年ですので、どうぞ気軽になんでもお申し付けください」



 俺は凛風を見て、ツバを飲んだ。



(綺麗な人だ……なんで侍女をしてる?)



 凛風もまた、俺を見て微笑んでいた。


 見つめ合っていると、肖然が咳払いをする。



「凛風は既婚者です。手を出さないように」



 肖然の言葉に俺は深くため息をついた。



「既婚者じゃなかったら手出しても良かった?」



なんて聞いてみると、凛風がくすくすと笑う。



「寵臣としてそこは自重してください」



 軽やかな鈴がなるような明るい声に、俺は凛風が居たら楽しく過ごせそうだと思っていた。


 他にもそれぞれ凛風と李翔の部下が数人いるらしく、顔を合わせることが出てきたときに紹介すると言われた。



「それからあなたの護衛ですが、帝直轄の部下が交代制でつきます」


「分かりました」


「では、私はここで」



 肖然が出ていくと、俺は居間に向かって長椅子に腰を下ろした。



「李翔、凛風、二人はここにきて長いのか?」


「私は2年になります」


「私は10年に」



 凛風と李翔がそれぞれ答える。


 李翔が10年ということは、帝が即位して数年ぐらいの頃からいるということだ。



「李翔、聞いてもいいかな」


「はい」


「沐陽は、いつからいるんだ?」


「沐陽さまは、主上が今の地位に就く前からの知り合いです。外後宮ができてすぐ、沐陽さまは入られました」


「……皇太子時代からそういう仲だったってことか?」


「いいえ。恋愛関係に発展したのは、即位してからだと聞いています」



 帝は初恋がどうのこうのと言っていたが、その時期は被っていない。


 要するに、帝は俺を好きになったあとに沐陽を好きになった可能性が高いわけだ。


 とはいえ、本当に帝は沐陽を好きなのかどうかもわからない。


 ただ“寵愛を受けている”だけかもしれないのだ。



「李翔は、沐陽のこと詳しいか?」


「外後宮に勤め始めた頃は、沐陽さまの宮で働いておりましたから。なにか聞きたいことでもございますか?」


「刺したって本当?」


「本当です」


「うわぁ。その寵臣はどうなったの?」


「怪我を負いました。今はもう外後宮から出ています」



 俺はいいことを聞いたと心の中でほくそ笑む。


 大怪我をすれば出られるかもしれない。


 万が一のときは沐陽を利用する価値はある。



 そんなことを喋っていると、「主上がいらっしゃいました」と護衛が入ってきた。



「まじか!」と俺は慌てふためきながら、身だしなみを確認し、凛風に「大丈夫?」と確認する。


「ええ、大丈夫ですよ」と言われ、そのまま帝を出迎えに行った。



 帝はにこにこしながらやってきた。



「どうだ? 気に入ったか?」


「ええ、まぁ、かなり」


「そうか」


「えっと……どうされますか?」


「お前と夜を過ごしたくて来たのだぞ」


「私と過ごすならば、今晩陛下は寝ることは難しくなるでしょう」


「ほう?」



 俺の言葉に帝は眉を持ち上げた。


 俺は「こちらへ」と行って中へ案内した。

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