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陛下、寵愛なんて望んでません。  作者: 犬村汐里


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第16話



 外後宮へ入る日がやってきた。


 荷物は驚くほど少ない。


 もともと寮で暮らしていたし、寮はかなり狭かったので荷物は行李一つでまとまった。



 行李を抱えて寮父に挨拶をしに行くと、うやうやしく拱手される。


「おい、やめてくれよ」


「側室になる志明さまに失礼なことをしたら……」と言い始める寮父に俺はため息をついた。


「そんなこと言ってると“宝”やらないぞ」



 そう言うと、寮父は顔を上げてにやりと笑った。



「どこに置いてある?」


「寝台の下にまとめておいてある。さすがに春画は持っていけないらしい」


「さすがだ。また頼むよ」


「いやいや、それは自腹切ってくれよ」


「側室だろう?」


「さっきと態度違いすぎだろう!」と笑いながら寮父の軽く肩を叩いた。


「じゃあな、また来るよ」


「おう」



 寮を出ると、寮の前には馬車が止まり、その前には肖然が立っていた。


 その周りを興味津々と言うように官たちが野次馬をしている。



「志明さま、お迎えに参りました」


「ありがとうございます」


 そう言って馬車に上がると、肖然と向かい合って座る。



「これから外後宮に入っていただきますが、武官としての所属は帝直属の配属に変わります」


「随分と俺も出世しましたね」


「午前は他の武官と共に訓練していただき、午後は帝の相談役として仕事をしていただきます」


「分かりました」


「これから外後宮に案内致しますが、護衛が一人がつきます。護衛の紹介は後ほど」



 ガタガタと馬車が走る音が聞こえる。


 揺れも感じるが、さすが側室の使う馬車というだけあり、いつも使ってるような馬車より揺れは抑えられている。




 そして、馬車が止まる。


 馬車の扉が開き、外に降りる。


 赤を貴重にした建物が目の前に立っていた。

 

 門は装飾品が彩られていて豪華絢爛である。



「わあ……」


「ここが志明さまの住処になる場所になります」


「すごいな……うちより豪華だ」



 そう呟くと後ろからハハハッと帝の笑い声がした。ハッとして振り返る。



「当たり前だろう? ここは皇帝のなんだと思ってる?」


「そうでした。失礼いたしました」と頭を下げた。


「このあと、肖然と他の寵臣たちに会いに行くといい」


「では、早く荷物を置いていきましょう。待たせるのは良くない」


「そうだな」


「陛下はなにをされるのですか?」


「志明の観察だ」



 その言葉に俺は思わず「はっ?」と言ってしまった。


 肖然からの冷たい視線を感じて口を一の字に閉ざし、「申し訳ありません」と謝る。



「俺の口はかなり悪く……その……直します」


「今に始まったことじゃない」


「いいえ。側室ならば直すべきかと」と肖然がはっきり言い切った。



 どうやら俺は口の悪さを治す必要があるらしい。



「だそうだ」と帝は楽しそうに笑った。


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