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陛下、寵愛なんて望んでません。  作者: 犬村汐里


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第10話



 帝の相談役として働き、1週間が経過した。


 あっという間に1週間が過ぎていた。



 その間に執務室の人間関係の泥沼を垣間見たし、人間観察の場としては面白い場所である。


 とはいえ、あんな泥沼劇場が行われるところで働きたくはない。




 仕事が終わり、寮へと歩いていると後ろから「志明さま」と肖然に呼び止められる。



「なんでしょうか」


「1週間働いてどうでしたか?」



 初日の出来事は強烈だったが、2日目から特に何かされるわけでもなかった。


 仕事をして、寮に帰って眠る。

 そして起きて仕事をする。


 それを繰り返した。


 帝は帝の仕事をしていた。



「特に問題はありません」


「では、相談役を続けていただけますね」


「ああ、それに関して一つ提案してもよろしいですか?」


「はい」



 肖然が大きく頷く。



「1週間働いて思いましたが、父は常に執務室に常駐していなかったということですが、私も常駐しないで過ごすことはできませんか? 武官として日々生活しながら、仕事終わりに執務室へお伺いします。その際にご相談をお受けいたします」


「あ、ああ……ええ……そう、ですね」



 その曖昧な肖然の態度に俺は首を傾げた。


 何か隠している。なにか理由がある。



「なんでしょうか。俺が帝につく必要性があるのですか?」


「いえ。特にありません」



 そう答える肖然の態度は硬い。


 何かを隠しているからだろう。


 余計に体が硬直している。


 今手を出せば1秒差で勝てるだろう。



「頬が強張ってますよ」



 そう言って俺は自分の頬を指で持ち上げて笑顔を見せた。



「私は嘘が分かります」


「……」


「では、失礼します。異動届に関しては受理していただけると助かります」



 俺は拱手をして、肖然に背中を向けて歩き出した。しかし、すぐに声をかけられる。



「お待ちください」


「なんでしょうか」


「我が主上のおそばにいてくれませんか」


「私がおそばにいなくてもいいのではないでしょうか? 執務室の文官や護衛はおそらく帝のお手つきでは?」


「……否定はしません」


「帝の欲を満たしてくれる。愛してくれる。そのような存在がいるではないですか。私はただの相談役です」



 なぜ、帝のそばにいてほしいと頼まれるのかが理解できなかった。



「では、私の頼みとして聞いてくれませんか?」


「いや、私はあなたになにかしてもらった恩もないので」



 はっきり言い切ると、肖然は眉間を寄せて「それもそうですね」と困ったようにため息をついた。



「では、それで構いません。武官としての仕事がある日に来て下さい」


「ありがとうございます!!」



 俺は腹から声を出すほどに嬉しく、感謝の言葉をあげた。

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