タイショーのご飯は美味しい
「タイショー、オードブルを」
「…なんで執事みてぇな格好してるんだ?」
「タイショー、オードブルを」
「うちはギルドの酒場だぞ?」
「えっと、オードブルを」
「なんかそれっぽいもんを作るから待っててな」
いやー、茶番に付き合わせちゃってごめんねタイショー。
どうやらベルナード領の首都パルマで、美食家の大会が開かれるらしいんだ。それに出てみようと思って、練習したくなったんだよ。
1皿食べるごとに味の感想を言わないといけないから、ある程度のパターンを作っておかないと。
「はい、お待ち」
なんかタイショーらしくない料理が来たね。えーっと?
サラダの上に魚の切り身と果物が乗ってて、変なソースがかかってるね。なんでお皿の端っこにもソースをかけているんだろ。
「ふむ、なるほど…」
味が薄いし、量が少なくて物足りないなー。なんて言えばいいんだろう。
「あっさりとしていて食べやすいが、量が少ないのがマイナスだ」
「オードブルなんだから、だいたいはあっさりしてて少ないもんだろ。食欲を引き立てる役割なんだぞ」
そう言われてもね。せっかく美味しいんだからたくさん食べれた方がいいと思うけどな。
「もしかしてパルマの美食家の大会とやらに出るのか?」
「うん、そうだよ。なんでわかったの?」
「そりゃでかでかと壁にポスターが貼られてるからな」
タイショーはいろいろと察するのが早いなー。
「やめといた方がいいぜその大会」
「えー、どうして?」
「美食家ってのは名ばかりで、ただの接待大会なんだよ」
どういうこと?美食家としての経験や知識を披露する大会って書いてあるけど。
「主催してんのが王都の星付き料理人でよ。料理を作るのもこいつがやるわけだ。この大会の報酬は賞金なんだが、参加するやつはそんなことどうでもいい。料理を過剰なまでに褒めたたえて興味を持ってもらう、アピールの場になってんだ。」
なるほどね、それじゃたしかに私には向いてなさそうだね。あれ?ポスター見ただけじゃそんなこと分からないのに、なんでタイショーは分かったんだろ。
「タイショーはなんでそんなに詳しいの?」
「そうだなぁ…、俺の飯は美味いか?」
「え、すごく美味しいよ?」
「王都ってのはな、いくら美味い飯が作れても上に媚なきゃ生きてけないんだ。クビになっちまったよ、ハッハッハッ!!」
えっ!?
タイショーが王都で料理人をしてたなんて。だからこの大会のことも知ってたんだね。
「大会やめる!」
「あぁ、それがいい。美味い飯を作ってやるからまた来いよ」
「それはそれとして、フルコースみたいなの食べてみたいな」
「お、おう。ちょっと待っときな」
タイショーの料理を毎日食べられるなんて、私はとんだ幸せものだねえ。
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