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凡庸な男爵家次男は、誰にも好かれたくない 〜前世でモテすぎて疲れた俺、今世は静かに暮らしたいのに学院の火種ばかり見えてしまう〜  作者: 平八
第一章 逃げ道と、石畳の学院

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第16話 凡庸な男爵家次男は、沈黙に名前をつけられたくない

前回まで:

リオネルは、初めて「理由を言わずに断る」ことを実践しました。

自分がいなくても自治会の会議は進み、少しずつ「リオネルだけが背負わなくてもいい形」が生まれ始めます。

しかしその直後、学院新聞同好会の特集案――『沈黙の傍聴者』という新しい火種が生まれかけていました。


主な登場人物:

リオネル・アルバート……男爵家次男。静かに暮らしたいが、火種を見つけると放っておけない。

ギルバート・レイヴン……伯爵家嫡男。リオネルの隣に立つ不器用な友人。

クラウス・ヴェルナー……子爵家三男。冷静に政治的な構図を読む。

ニール・ロイド……平民出身の奨学生。自分の言葉で立ち始めている。

セシリア・グランベル……侯爵令嬢。リオネルの逃げ道を見つける共闘者。

レオンハルト・ヴァイス……公爵家三男。生徒会長。運用で線を引く人物。

オスカー・フェルン……学院新聞同好会の編集長。言葉の価値をよく知る上級生。

『沈黙の傍聴者――新指針の裏にいる男爵家次男』


その文字は、紙の上にあるだけなのに、妙に重かった。


沈黙。


傍聴者。


男爵家次男。


どれも、間違ってはいない。


間違ってはいないからこそ、たちが悪い。


嘘なら否定できる。


悪意なら避けられる。


だが、事実を並べられると、逃げ場が狭くなる。


名前を出さなくても、分かる者には分かる。

匿名でも、輪郭を描けば人は特定できる。

そして、一度ついた呼び名は、自分の意思とは関係なく歩き始める。


社交がうまい。

気が利く。

穏やか。

相談役。

火消し。

傍聴者。

沈黙の傍聴者。


やめてほしい。


俺はただ、行かなかっただけだ。


理由を言わずに断る練習をしただけだ。


それなのに、欠席にまで名前がつく。


逃げ道にまで看板を立てられる。


本当に、王都の学院は油断ならない。


「見せろ」


ギルバートが言った。


「見ない方がいいです」


「なら、なおさら見る」


「その理屈はおかしいです」


「火種なら共有しろ」


正論だった。


腹立たしいことに、かなり正論だった。


俺は渋々、紙を渡した。


ギルバートは文面を読み、眉間に深い皺を刻んだ。


「誰が置いた」


「分かりません」


「新聞同好会か」


「おそらく」


「潰す」


「やめてください」


即答した。


本気でやめてほしい。


伯爵家嫡男が新聞同好会を潰す。


字面だけで新しい火種だ。


しかも、俺のために。


最悪である。


クラウスが後ろから紙を覗き込み、静かに言った。


「これは、潰すより先に確認した方がいいね」


「何をだ」


ギルバートが問う。


クラウスは紙の端を指で示した。


「これは完成原稿ではなく、特集案の見出しだ。まだ記事になっていない可能性が高い」


「だから?」


「止めるなら今だ。出てから否定するより、出る前に形を変えた方がいい」


分かっている。


分かってしまう。


本当に嫌だが、クラウスの言う通りだった。


火は燃えてから消すより、火花のうちに潰した方がいい。


見なかったことにすれば、記事になる。


記事になれば、読まれる。


読まれれば、意味がつく。


意味がつけば、俺ではどうにもならなくなる。


俺は紙を見た。


沈黙の傍聴者。


また、俺の外側に名前が作られようとしている。


「学生自治会へ」


ニールが言った。


彼は少し緊張した顔をしていたが、視線は逃げていなかった。


「新聞同好会の記事も、発言の再利用に近いと思います。本人の同意なく、別の文脈で意味をつけるなら」


強い。


以前のニールなら、そう言えなかったかもしれない。


自分の言葉で立つ、ということを覚え始めている。


俺は頷いた。


「そうですね。ただ、自治会へ持ち込む前に確認します」


「一人で行くな」


ギルバートが言った。


「一人では行きません」


「なら、俺も行く」


「威圧しないでください」


「努力する」


努力では不安だ。


かなり不安だ。


クラウスが肩をすくめた。


「私も行こう。ギルバート様が努力に失敗した時のために」


「クラウス」


「事実です」


「否定しづらい」


セシリア嬢が少し離れた場所からこちらへ歩いてきた。


彼女は紙を一瞥し、すぐに状況を理解したようだった。


本当にこの人は、状況の読解が早い。


「新聞同好会ですか」


「おそらく」


「記事になる前に話した方がいいでしょうね」


「はい」


「ですが、アルバート様が前に出すぎると、それ自体が記事になります」


その通りだ。


嫌になるほど、その通りだ。


「では、どうすれば」


俺が尋ねると、セシリア嬢は少し考えた。


「取材対象としてではなく、掲載に関する確認として行くべきです」


「確認」


「はい。記事を否定しに行くのではなく、本人同意のない特定表現を避けてほしい、と伝える形です」


クラウスが頷いた。


「新聞側の面子も守れる。いい落としどころだ」


ギルバートは不満そうだった。


「面子など必要か?」


「必要です」


俺とクラウスとセシリア嬢の声が重なった。


ギルバートは少し驚いた顔をした後、黙った。


分かってくれたらしい。


たぶん。


学院新聞同好会の部室は、旧講義棟の二階にあった。


扉の外まで、紙とインクの匂いがする。


壁には過去の新聞が貼られていた。


『新入生代表挨拶、今年は異例の静かな拍手』

『剣術大会、レイヴン家嫡男が圧勝』

『グランベル侯爵令嬢、慈善茶会で見せた手腕』

『クラインベルク侯爵家嫡男、上級生交流勉強会を主催』


見出しだけで、人の立場が見える。


新聞というものは怖い。


数行で人を作る。


数行で関係を作る。


数行で、火をつける。


扉を叩くと、中から声がした。


「どうぞ」


中にいたのは、三年生らしき男子生徒だった。


銀縁の眼鏡。

細身で、整った顔立ち。

机の上には原稿、紙束、インク壺。


そして、壁には見出し案がいくつも貼られていた。


その中に、あった。


『沈黙の傍聴者――新指針の裏にいる男爵家次男』


胃が沈む。


本当にあった。


「これはこれは」


男子生徒は、俺たちを見ると微笑んだ。


「ずいぶん豪華な顔ぶれですね。レイヴン様、グランベル様、ヴェルナー君、ロイド君。そして……アルバート君」


名前を最後に置いた。


わざとだ。


この人は、分かっている。


「学院新聞同好会編集長、オスカー・フェルンです」


彼は丁寧に礼を取った。


フェルン家。


たしか、子爵家だったはずだ。


文官系の家柄で、王都の官報や記録局に縁があると聞いたことがある。


つまり、情報の扱いに慣れている家だ。


面倒な相手だ。


非常に面倒な相手だ。


「突然失礼いたします」


俺は礼を返した。


完璧すぎないように。


だが、乱れすぎないように。


難しい。


「少し確認させていただきたいことがございます」


「確認。いい言葉ですね」


オスカー先輩は笑った。


「抗議ではなく?」


「内容によります」


クラウスが横で微かに笑った気配がした。


もう完全に定着している。


本当によくない。


オスカー先輩は興味深そうに俺を見た。


「なるほど。噂通りだ」


「噂の扱いには慎重になさった方がよろしいかと」


「そのための新聞ですよ。噂を整理し、事実にする」


最悪のことを言う。


噂を事実にする。


新聞とは、そういうものなのだろう。


だからこそ怖い。


「それで、確認とは?」


俺は壁の見出し案を示した。


「あちらの記事についてです」


「沈黙の傍聴者」


オスカー先輩は、隠す気もなく言った。


ギルバートの空気が硬くなる。


俺は横目でそれを制した。


ギルバートは止まった。


本当に、最近よく止まる。


「まだ草案です」


オスカー先輩は椅子に腰掛けたまま言った。


「ですが、良い見出しだと思っています。今回の新指針は学院生活に大きな影響を与える。誰が、どのような視点でその流れを生んだのか。生徒たちは知りたがっています」


「その“誰が”を、特定する必要がありますか」


俺が尋ねると、オスカー先輩は目を細めた。


「必要がある場合もあります。責任の所在を明らかにするために」


「今回の責任は学生自治会にあります」


「公式には」


またそれだ。


公式には。


その言葉は、何度聞いても胃に悪い。


「非公式には、君の視点が大きい。違いますか?」


「違うとは申しません」


言った瞬間、ギルバートがこちらを見た。


クラウスも少し目を細める。


だが、ここで完全否定は無理だ。


無理な否定は、逆に記事になる。


「ですが、それを私個人の物語として扱うことには同意しません」


オスカー先輩の笑みが深くなった。


「物語」


「はい」


俺は壁の見出しを見た。


「沈黙の傍聴者、という言葉は、事実の説明ではありません。意味づけです」


部屋が少し静かになった。


「私は傍聴者として置かれました。会議を欠席しました。それは事実です」


「ええ」


「ですが、沈黙という言葉をつけた瞬間、それは意志や思想や演出になります」


オスカー先輩は黙っている。


「私は、自分の欠席に名前をつけることを許可していません」


そこまで言って、少しだけ息を吸う。


言えた。


理由ではなく、拒絶に近い言葉。


「記事にしないでください」


部屋が止まった。


ギルバートが、驚いたように俺を見る。


セシリア嬢は静かに目を伏せた。


クラウスは、口元に薄い笑みを浮かべている。


ニールは、真剣な顔でこちらを見ていた。


オスカー先輩は、ゆっくりと指を組んだ。


「理由を聞いても?」


来た。


やはり来た。


理由を聞く。


理由を求める。


理由を差し出させる。


俺は少しだけ手を握った。


理由はある。


いくらでもある。


目立ちたくない。

男爵家に影響が出る。

自治会指針が個人の思想に見える。

新聞同好会の見出しが派閥争いに使われる。

俺の平穏が死ぬ。


理由なら、作れる。


いくらでも作れる。


だが、それを差し出せば、また検分される。


記事にする公共性。

学院新聞としての意義。

生徒の知る権利。

透明性。


どれも正しい顔で、こちらの拒絶を削ってくるだろう。


俺は、レオンハルト会長の言葉を思い出した。


断りたいなら断れ。


理由は必要ない。


「申し上げません」


俺は言った。


オスカー先輩の目が、わずかに動いた。


「理由なく、記事にするなと?」


「はい」


短く答えた。


怖い。


胃が痛い。


だが、言った。


「私は、取材対象として同意しません」


沈黙。


しばらくして、オスカー先輩は小さく笑った。


「強いですね」


「強くありません」


本当に強くない。


手は冷たいし、背中は嫌な汗をかいている。


「理由を言わないだけです」


ニールが一歩前に出た。


「フェルン先輩」


「ロイド君?」


「今回の指針は、理由を言わずに断れる余地を作るためのものでもあります」


その声は少し震えていた。


だが、逃げていなかった。


「アルバート様が、ここで理由を説明しなければ記事にされるのなら、指針の意味がなくなります」


オスカー先輩はニールを見る。


「君は、彼を庇う?」


「違います」


ニールははっきり言った。


「私は、指針の当事者として話しています」


その一言に、俺は少しだけ息を呑んだ。


平民全体の代表ではない。


俺の代弁者でもない。


指針の当事者。


自分の立つ場所を、彼は自分で選んだ。


かつて俺は、彼を守るために言葉を置いた。


代表にされないための盾として。


だが今、ニール君はその盾を、自分の意志で前へ向けた。


誰かを傷つけるためではない。


自分の立つ場所を示すための、細く、まっすぐな剣として。


強くなった。


いや、違う。


きっと、最初からその強さはあった。


ただ、自分の言葉で立つ場所を、彼はようやく見つけたのだ。


セシリア嬢が続けた。


「新聞は大切です。ですが、取材対象が断れる余地を奪う記事は、支援や啓発ではなく圧力になります」


クラウスが淡々と補足する。


「しかも、男爵家次男という属性まで見出しに入れるなら、特定性は十分です。名を伏せても匿名とは言えないでしょう」


ギルバートは腕を組んでいた。


何も言わない。


だが、ものすごく言いたそうだ。


努力している。


非常に努力している。


オスカー先輩は、一人ひとりを見た。


そして、最後に俺を見る。


「君は、周囲に恵まれているね」


その言葉に、胸が少しざわついた。


恵まれている。


そうかもしれない。


最近、そう思う瞬間が増えた。


怖いことに。


「はい」


俺は答えた。


「そうかもしれません」


ギルバートがわずかにこちらを見た。


セシリア嬢も、ほんの少し目を細める。


クラウスは何も言わない。


ニールは少しだけ笑った。


認めてしまった。


関係があることを。


それは怖い。


だが、今は否定しなかった。


オスカー先輩は机の上の原稿を一枚取った。


「記事そのものを取り下げるつもりはありません」


やはり。


「ただし、見出しと焦点は変えます」


「どのように」


「個人ではなく、指針の内容を扱う。見出しは……そうですね」


彼はペンを取り、紙に書いた。


『断るための理由はいらない――新指針が示した学院の礼儀』


俺は、その文字を見た。


悪くない。


いや、かなり良い。


少なくとも、沈黙の傍聴者よりはずっとましだ。


オスカー先輩は、俺の拒絶に敗れた顔をしていなかった。


むしろ、封じられたはずの見出しを、別の、もっと広く燃える紙束として買い取ったような顔をしていた。


この人は、火を消されたのではない。


火の向きを変えただけだ。


「個人名は出しません。男爵家次男という表現も使わない。関係者の一人、という書き方もしない」


「ありがとうございます」


「ただし」


来た。


「この件で、私は君に借りができたとは思いません」


少し意外だった。


俺はオスカー先輩を見る。


彼は笑っている。


だが、先ほどよりも少しだけ本音に近い顔をしていた。


「記事を直すのは、君に譲歩したからではない。記事として、そちらの方が強いからです」


「強い」


「個人の謎を追うより、学院全体の礼儀が変わりつつあると書いた方が、読者は自分事として読む」


編集者の目だ。


この人は、この人なりに情報を扱っている。


危ない。


だが、浅くはない。


「君を見出しにするより、君が嫌がったものを見出しにした方が、記事になる」


それはどうなのか。


かなり複雑だ。


だが、少なくとも俺個人の名前は避けられる。


「では、その形でお願いします」


「掲載前に、自治会へ確認に回します」


「私には?」


「回しません」


オスカー先輩は即答した。


「君に確認を求めると、君がまた責任を背負うでしょう?」


言葉に詰まった。


この人まで、それを言うのか。


オスカー先輩は軽く肩をすくめた。


「新聞屋は、人が何に縛られるかを見るのが仕事です」


怖い。


この人も怖い。


レオンハルト会長とは違う。


ユリウス先輩とも違う。


光でもなく、重力でもなく、紙とインクで輪郭を描く人間だ。


「では、学生自治会へ」


俺は言った。


「ええ。そうします」


話は終わった。


少なくとも、表面上は。


部室を出ると、ギルバートが深く息を吐いた。


「殴らずに済んだ」


「殴るつもりだったのですか」


「少し」


「やめてください」


「努力した」


「助かりました」


ギルバートは少しだけ満足そうだった。


クラウスが呆れたように言う。


「今日は本当に褒めていいです。ギルバート様が黙っていただけで、話がかなり平和に進みました」


「黙るだけで褒められるのは複雑だ」


「成長とはそういうものです」


ニールが小さく笑った。


セシリア嬢も、ほんの少し微笑んだ。


俺も、少しだけ笑った。


完璧ではない笑い方で。


「アルバート様」


セシリア嬢が言った。


「今の拒絶は、とてもよかったと思います」


「拒絶を褒めないでください」


思わず言うと、彼女は少しだけ目を伏せた。


「では、言い直します」


「はい」


「逃げ道を守れたと思います」


それなら、少しだけ受け取れた。


「ありがとうございます」


その日の放課後、学生自治会の掲示板に短い告知が貼られた。


『学院新聞同好会による新指針関連記事については、学生自治会が内容確認を行う』


早い。


本当に早い。


マティアス先輩か、レオンハルト会長か。


どちらにしても、動きが早い。


その下に、学院新聞同好会の次号予告が貼られていた。


『断るための理由はいらない――新指針が示した学院の礼儀』


俺はその見出しを眺めた。


沈黙の傍聴者は消えた。


少なくとも、紙の上からは。


問題は解決した。


記事は個人特集ではなくなった。


俺は理由を言わずに断った。


ニールは自分の立場から発言した。


セシリア嬢は逃げ道を守った。


ギルバートは黙った。


クラウスは面子を保つ落としどころを作った。


悪くない。


かなり悪くない。


だが。


掲示板の前で、誰かが囁いた。


「沈黙の傍聴者って見出し、消えたらしい」


「誰かが止めたのかな」


「でも、止めたってことは、やっぱり本人がいるんだろう?」


「断るための理由はいらない、か。誰の言葉なんだろう」


俺は静かに目を閉じた。


消したはずの名前は、紙から人の口へ移っただけだった。


火は消えた。


だが、煙は残る。


本当に、面倒だ。


隣でギルバートが言った。


「茶は」


「飲みます」


即答した。


ギルバートが満足そうに頷く。


クラウスが小さく笑う。


ニールが少し心配そうにこちらを見る。


セシリア嬢は、掲示板から視線を外し、静かに言った。


「それでも、前よりはましです」


「はい」


俺は答えた。


「前よりは」


紙の上に名前が残るよりはいい。


見出しになるよりはいい。


沈黙に名前をつけられるよりはいい。


完璧ではない。


平穏でもない。


だが、少しだけまし。


今は、それで十分なのかもしれない。


寮に戻ると、机の上に新しい封書が置かれていた。


差出人は、学生自治会。


またか。


俺はしばらく封書を見つめた。


今日はもう十分ではないか。


本当に十分だ。


だが、封を切らないわけにもいかない。


中には短い文面。


『本日、学院新聞同好会との件について報告を受けた。


記事の焦点変更は妥当と判断する。


なお、次回の学生自治会定例会にて、取材・掲示・新聞等に関する本人同意の扱いを議題とする。


傍聴は任意。


レオンハルト・ヴァイス』


俺は天井を見上げた。


問題は解決した。


新聞の見出しも変わった。


だが、俺の平穏はまた死んだ。


取材。

掲示。

新聞。

本人同意。


また制度が増える。


また言葉が残る。


おまけに、明日の議題は「同意」だ。


俺がただ嫌だと言っただけのことが、また新しい法律のような重さを持ち始めている。


本当に、どうしてこうなる。


俺は封書を畳んだ。


そして、母の茶葉をいつもより少し多めに淹れた。


今日は、絶対に足りない。


たぶん。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。


今回は、新聞同好会による「沈黙の傍聴者」特集案をめぐるお話でした。


リオネルは、記事にしないでほしいという拒絶を、理由なしで伝えました。


ニールは当事者として声を出し、セシリアは逃げ道を守り、ギルバートは黙ることで支えました。


「沈黙の傍聴者」という見出しは消えましたが、今度は新聞・掲示・取材と、情報そのものの扱いが次の火種になりそうです。


逃げたいのに、火を消すたび制度が増えていくリオネルを、ブックマークや評価で見守っていただけると嬉しいです。

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