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婚約破棄!? 心の中で大喜びしますわ!  作者: 風月 雫
第2章

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第61話 気まずい雰囲気

拙作ですが、よろしくお願いします(#^.^#)

 翌朝、すっきりと目が覚め、学院に行くための準備をする。制服に着替え、シルバーブロンドの髪を丁寧にブラッシングした。テーブルに目を向けると、スターチスの花が目に入り込む。その花の存在が、昨日の出来事が『夢ではない』と教えてくれていた。


 コンコンコンとドアのノックする音と共に「レミリア様、クリスティーナです」と扉の向こうで声がした。毎朝のように彼女が呼びに来た。


「おはようございます」

「おはようございます。クリスティーナ様」


 クリスティーナ様の挨拶に私は挨拶を返す。けれど、彼女の雰囲気がいつもと違った。


 え? 今日のクリスティーナ様は何だか怖い。 


 微笑んで挨拶をしているのに、彼女の目が笑っていない。私たちの身長差はなかったはずなのに一回り大きく見えるのは何故だろう。

 上から見下ろされているような感じがして、私は一歩後ろに下がった。


 私は何かしでかしたのかしら?


 身に覚えのない事に必死で思い返す。昨日は休日だったはず。そしてその前日は……特に変わったところはなかった。何かあったとすれば昨日……でも、私たち会ってないわよね。


「あら、レミリア様? どうなさったのかしら。早く学院に行きましょう!」

「あ、は、はい……」


 クリスティーナ様の威圧感に私はたじろぐ。やっぱり、クリスティーナ様は何かに怒っているようだった。全く目が笑っていない。オドオドとしながら私は彼女の後ろをついて行く。その間もクリスティーナ様は一言も声を発しない。私の胃がキリキリと痛み出してきた。


 学院の入口まで来ると、ダリル殿下と目が合った。


「おはようございます。王太子殿下」


 私は普段通り挨拶をする。けれど、ダリル殿下は狼狽えるように私に挨拶を返した。


「お、おは……おはよう。レ、レミリア嬢……」


 ダリル殿下は挨拶以外にも何か言いたげな顔をしていたけれど、クリスティーナ様に睨まれると何も言えずに黙り込んだ。この国の王太子を黙らすことの出来るクリスティーナ様って凄いと思ったけれど、彼女はいつまででも機嫌が悪い。


「レミリア様。教室へ行く前にお話があります。中庭に寄ってくださる?」


 ツンとした声で言われ、「はい」と返事する事しか出来なかった。そして、ダリル殿下も付いてくる。


 え? な、何よこれ? 一体私が何をしたというの!?


 私は冷や汗を流しながら、心の中で叫んだ。


 重い、漬物石よりも重い雰囲気の中、中庭に着くとベンチに「座ってください」とクリスティーナ様に指示される。中庭の至る所に置いてあるベンチには談笑している何人かの生徒もいた。私たちの周りだけが気まずい空気が漂っている。私はクリスティーナ様とダリル殿下の顔を交互に見ながら、言われるままベンチに座った。彼女も座るのかと思いきや、大きな壁が聳え立つように立ったまま見下ろされる。流石、侯爵令嬢。迫力がありすぎます。将来、王妃になっても何の問題もないわ。そして、何故か一歩下がった所に王太子が立つ。立つというより控えるの方が言葉として合う雰囲気だった。


「レミリア様」

「ひゃ、ひゃい!」


 緊張のあまり、声が変に裏返ってしまった。もう怖い。何を聞かれるのだろうか。変な汗が流れる。


「昨日は何処にいらっしゃったのですか?」


 冷ややかな声が聞こえた。

 昨日? ……昨日のこと、言えるわけがない。どう答えようかと私の目は右、左と泳ぐ。返す言葉も見つからず、迷っているとクリスティーナ様は長い溜息を吐く。


「質問を変えます……昨日は誰と一緒におられましたか?」


 心の中で「エリク先生です」と呟いた。声に出して言う訳にもいかない。何故そんな事を聞くのだろう。


 まさか、誰かに見られていた?


 それでも、パッと見た感じではエリク先生だと分からなかったと思うけど。どうしよう……あ、心配して様子を見に来た従兄と言えばいいのかもしれない。


「昨日、私たち見たのよ。紫の花束を持って、顔を赤らめたレミリア様と男性が一緒に歩いている所を……あの人は誰? レミリア様が顔を赤らめさせる相手って誰!?」


 感情を殺すように静かに話していたクリスティーナ様の声が、次第にヒートアップしていく。


「誰なの!? レミリア様!? 誰なのですか!?」

「お、おい。クリスティーナ嬢! 落ち着けって」


 ダリル殿下がクリスティーナ様を止めに入り、落ち着かせようとしている。


「これが、落ち着いていられますか!!」


 どういう事? いつもの逆では? 


 いつもはダリル殿下に問い詰められ、クリスティーナ様が止めに入る。そんなパターンだったような……。


 「レミリア様の……」


 クリスティーナ様の方を見ると、瞳に涙を溜めていた。


 どうして? 泣くことなの? 


「す、好きな人なのですか?」


 クリスティーナ様は瞳に溜まっていた涙が流れ出し、頬を赤らめて言う。


「はああああ?」


 素っ頓狂な声を上げてしまった。何を言い出すのかと身構えれば、まさか、私の好きな人だと思われていたとは……もしかして、私がその男性から花束をもらって、顔を赤らめていたと思われているのかしら?


「好きな人ではないです」

「「本当に?」」


 クリスティーナ様とダリル殿下の声が重なる。

 逆にどうして二人がそんなに気になるのよ。気にすることでもないと思うけれど。


「そんな事で嘘をついてどうするのよ」

「じゃあ、あの美男子は誰だったの?」

「あ、い、従兄よ。心配になって私を見に来たのよ」

「本当に?」

「……本当よ……」


 クリスティーナ様の質問に答える声が次第に小さくなっていく。嘘をついていることに罪悪感が沸き上がり、キリキリと胃の痛みが強くなる。でも、エリク先生だったと教えると、話がややこしくなりそうだし。先生だってせっかく色を変えてくれていたのだから。


「良かった……だって、男性の髪色と同じ色のスカートを履いて、同じ色のリボンを頭に付けていたら色を合わせたのだろうと思うじゃない? だから、てっきりお二人は付き合っているのかと……」


 やはり、勘違いしていますよね。クリフも同じことを言っていたし。


「レミリア様に好きな方だったらどうしようかと心配で……心配で昨日はなかなか寝付けなかったのです」


 私は眉間に皺を寄せた。物凄く語弊のある言い方だわ。そんな言い方をしたら、クリスティーナ様が私のことが好きで好きで仕方がないと勘違いされる方がでてくるのでは。


「クリスティーナ嬢、それは語弊があるぞ。クリスティーナ嬢がレミリア嬢の事が好きすぎて心配で眠れなかったと聞こえる」


 ダリル殿下が呆れて言った。よくぞ言った、と心の中でダリル殿下を褒めた。それより話が変な方向に行きそうな気配がした。この話題から抜け出したい。話を変えなければ……。


「そういえば昨日は何処にダブルデートに行かれたのですか?」


 ダリル殿下とクリスティーナ様は顔を見合わせる。


「何故、ダブルデートになるの?」

「確かにアルトとカノン嬢はデートしてたな。アルトは俺の護衛だ。カノン嬢とデートする時に俺も一緒に居れば、休みの取れない日でもカノン嬢とデートできるだろ? で三人じゃ気まずいからクリスティーナ嬢とレミリア嬢を誘ったんだが」

「だから、王太子殿下とクリスティーナ様とデートをなさったのではないのですか?」


 クリスティーナ様はダリル殿下を恋愛対象と見ていないようだけど、ダリル殿下は違うはず。

 そんな二人は同時に溜息を吐く。どう見ても二人は私に対して呆れているようだった。


「なあ、クリスティーナ嬢。俺はこのままでも良いのか? 自分の気持ちをちゃんと伝えた方が良いのではないか?」

「ええ、その方が良いように思えてきたわ」


 クリスティーナ様は額を押さえながら小さく呟く。二人がこそこそと話している間に周りを見れば、生徒の数も少なくなっていた。もうすぐ授業が始まる時間だわ。


「王太子殿下、クリスティーナ様。授業に遅れるので教室に戻りましょう」

「そ、そうね……」


 三人で慌てて教室に戻った。

 それにしても昨日のエリク先生と一緒にいる所を見られるなんて、全然気づかなかった。これからは気を付けないといけないわね。

最後まで読んでくださってありがとうございます。

もし面白いと感じていただけたなら、応援やブックマーク、評価などいただけましたら励みになります。


また読んでいただけると嬉しいです。

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