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婚約破棄!? 心の中で大喜びしますわ!  作者: 風月 雫
第2章

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第58話 再会

リアクション、ブックマーク、ありがとうございます。

拙作ですが、よろしくお願いします(#^.^#)

 今日はクリフ様に会う日だった。

 学院が休日だからクリスティーナ様から、皆で一緒にお出かけしないかと誘われたけれど、用事があると断った。凄く、悲しそうに残念そうな顔をされたけど、皆とは誰がいるのか大体見当がついた。クリスティーナ様、カノン様、カノンの婚約者アルト様とこの国の王太子ダリル殿下だろう。


「あの組み合わせだと、ダブルデートだわ。邪魔しない方が良いわよね」


 何人かで遊びに行っても、カノン様とアルト様は二人だけの世界になってしまう事がある。ダリル殿下は婚約者候補のクリスティーナ様と一緒に居たいだろうし、そんな二人の邪魔をしたくない。私は馬に蹴られたくない!


 そんな事を考えながら、私は姿見鏡の前で悩む。白のブラウスに、緑系のギンガムチェックのフリルスカートを着た。


「これで、おかしくないかしら?」


 ブラウスの襟元にはアクセントに小さな紫の石のネックレスをする。長いシルバーブロンドの髪はポニーテールにし、スカートと同色のリボンを付ける。出来るだけ町娘のような恰好を真似てみた。鏡の前でくるりと一回ひとまわりするとフリルのスカートがふわりと泳ぐように宙に浮く。ちょっとイメージが違う気がした。


 変じゃないかクリスティーナ様に相談したいところだけど、何処に行くのか、何の用なのか詮索されるても詳しく言えないから負い目を感じ、相談できなかった。


 時計を見ると約束の時間まであと20分ぐらいだ。もうそろそろ出ないと行けない。私は瞳の色が変わる眼鏡をした。これで眼鏡越しのから見える瞳は紫から赤色に変わって見える。


 私は肩下げ鞄を肩に下げ、部屋の扉をそっと開け周りに誰もいないか確認した。


「今なら誰にも会わずに外に出られるわ」


 急いで寮の階段を降り外にでる。多分誰にも見られていないと思う。何か悪い事でもしているようで心臓がドキドキしたけれど、ある意味、癖になりそうな緊張感だった。

 無事寮の門の外に出れるとその事が嬉しくて、私はスキップをしながらエリク先生との待ち合わせ場所の公園まで行く。


 公園に着いたのは待ち合わせ時間の5分くらい前だった。

 休日で公園はたくさんの人で賑わっていて、以前来た時の様に屋台がいくつもあった。アクセサリーなどを売っている店、いろんな食べ物を売って美味しそうな匂いを漂わせている店。美味しそうな匂いに私は釣られそうになりながらも約束の場所に立ち、辺りを見回した。けれどエリク先生はまだ来ていないようだった。


「エミーリア嬢」

「……っ!」


 突然、後ろから本名を呼ばれ心臓が口から飛び出すほどドキッとした。恐る恐る後ろを振り返る。見知らぬ男性が笑って立っていたけれど……誰、この人? と眉間に皺を寄せ、用心深くじっと見る。薄橙色の肌、髪は若葉色。だけど、笑った顔がエリク先生だった。


「あ、ああああああ!」

「しーっ! 大声出さないでくれ」


 慌ててエリク先生は私の口に左手を当て、右手の人差し指を自分の口の前に立てる。


「す、すみません。先生、どうしたんですか? その恰好……色を変えて」


 私は大声を出さないでくれと言われ、咄嗟に小声で聞いた。


「一緒に行くと言ったが、よく考えれば休日に生徒と一緒に街にいるのは……やはりまずいだろうと思って。他の生徒に見られると厄介だろう? 特に王太子殿下は……」


 はて? どうしてダリル殿下に見つかると厄介なのだろうか?


「確かに王太子殿下は何かにつけてエリク先生を睨んでますよね。先生、何か恨まれることでもしたんですか?」


 私は小首を傾げる。それを見た先生は頬を引き攣らせて苦笑した。


「エミーリア嬢は面白いね。それは天然? それともわざと? やっぱり天然か

な。ラルスが心配するのも理解できるな……もう時間だ。行くよ」


 少々、呆れ顔でエリク先生は歩き出した。呆れられる事を言ったかしらと思いながら、私は慌てて先生の後をついて行く。ホテルの中に入り、先生はフロントに向かう。フロントには一人の男性がいた。


「2名様ですか?」とフロントでその男性に聞かれた。

「先日、クリフの件でお伺いしたものです。訳あって肌と髪色を変えています」


 その男性は目を見開きじっと見つめ、納得したように小刻みに頷いた。そして、「こちらの部屋をお使いください。中でクリフが待っております」と2階の一室に案内される。


 なんだか緊張して心臓がバクバクと早鐘を打つ。胃の辺りも違和感を感じ擦る。心臓を落ち着かせるため、私は扉の前で大きく深呼吸を1回した。


「大丈夫か? エミーリア嬢が緊張してどうするんだ?」

「それは……そうなんですけど……あんなクリフ様を見ていなければ、多分こんな風にはならなかったと思います」


 今まで見たことのない姿のクリフ様を見て自分なりにショックを受けていた。以前の婚約をしていたあの頃のクリフ様なら何とも思わなかったはず。肩を落とす私にエリク先生は頭のてっぺんを優しく撫で笑顔を向ける。


「もう、そろそろ入るか?」

「はい」


 意を決して私は頷く。扉の向こうには得体の知れないものが待ち受けているような気持になった。

 エリク先生は扉を三回ノックすると、中から「はい。どうぞ」と返事が返ってきた。


「入るぞ」と先生は声を掛け、扉を開けた。


 まず、先生が入室する。


「え? 誰?」


 クリフ様はエリク先生が部屋の中に入ると、先生の容姿を見た瞳が驚きと共に見開いていた。当然だ。こんがりと妬けたような健康的な肌色に、銀色の髪だった先生が入ってくると思っていたのに、別人のような薄橙色の肌に若葉色の髪の人がいるのだから。


「私だよ、クリフ。エリクだ。ちょっと色を変えてみたんだが、似合っているか?」


 先生……相変もわらずノリが軽い。ちょっとどころではない。かなり変わってるよ。あの肌に何を塗ったら薄橙色になるんだろう、不思議なくらいだ。クリフ様だって、先生の変わりように狼狽えているよ。


「あ、ああ。エリク先生? びっくりした。声を聞いたら分かったよ。でも、言われないと気づかないかもしれない」

「だろ? 結構化けたと思ってるんだよ。緊張していた気持ちが落ち着いたんじゃないか?」


 なんか、上手いこと言って誤魔化しているよね。もしかして、最初に言っていた『他の生徒に見られると厄介だろう?』の以外にも他の理由があるんじゃないかと勘繰ってしまう。


「……それで……先生。後ろの子は?」

「クリフ、この子と会ったことがあるだろ?」


 クリフ様は自分の記憶を辿っているようだった。暫くの沈黙のあと、「ある」と声に出して頷いた。


「先日、エミーリアを見つけたら知らせてくると言っていた令嬢と一緒にいた……」

「おう! 思い出したか? 分からなかっただろう? 彼女がエミーリア嬢だ!」


 何故か自慢げに言うエリク先生に私は、はあ、と溜息を洩らした。先生のノリで、先程まで心臓が飛び出しそうなほどバクバクして緊張していたのに、それが何処かに飛んで行ったしまったわ。まあ、エリク先生なりに気を使ってくれているのかもしれないけれど。


 クリフ様に目を向けると、今にも目が落ちそうなくらい驚いていた。


「え? エミーリア? 本当に……エミーリア? 髪色が違うし瞳の色だって……違う」


 私にとっては、別に『感動の再会』のようなものでもない。けれどクリフ様にとっては必死に捜していた、会いたい人に会えたという『感動的』な場面にも関わらず、目の前にいる私が余りにも違った姿だから信じがたいらしい。困惑の表情が見える。


 私は眼鏡をはずし、紫の瞳を見せ少しカーテシーで挨拶をする。


「お久しぶりです。クリフ様。エミーリア・レグレスです」


 クリフ様に紫の瞳を見ると、私がエミーリアだと気付いた。気付いたとたん、クリフ様は私の前で土下座をしたのだ。

最後まで読んでくださってありがとうございます。

もし面白いと感じていただけたなら、応援やブックマーク、評価などいただけましたら励みになります。

次回更新は8月30日0時10分頃の更新予定をしております。

また読んでいただけると嬉しいです。

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