表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄!? 心の中で大喜びしますわ!  作者: 風月 雫
第2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/59

第54話 夢のまた夢

拙作ですが、よろしくお願いします(#^.^#)

「ど、どういうことですか? 何故、メイナード殿下がこの国にいらっしゃっているのですか?」


 談話室には私たち二人しかいないけれど、こんな話をこの部屋でしても良いものだろうかと思う。二人でドールニア国の第二王子の話をしていると怪しまれるのではないだろうか。エリク先生もその事に気付いたのか、少し声のトーンを落とし話を続けた。


「ラルスの話だと、交流を深めたいとかで無期限で滞在する予定だとか。手続きが後回しになって本人が極秘で先に入国しているらしい。手続きを待たずに急いでこちらに向かったようだと言う事だ」

「無期限で滞在って……そんな事が可能なのですか?」


 背中にゾクゾクと寒気が走る。なんだか嫌な予感がした。


 無期限なんてそんな事が罷り通るものなの!?


「メイナードの立場が王太子ではないから可能らしい。多分、エミーリア嬢を捜しに来たんだと思うよ。だから無期限なんだろう。君も大変だよね」


 エリク先生は苦笑する。


 「やはりそうですよね」


 私はがっくりと肩を落した。無期限の滞在という事は、ドルーニア国の国王陛下は、私との婚約を許可したということなのだろう。私は自由を謳歌し、楽しく送るはずだった留学生活が悉く厄介ごとに巻き込まれていく。


「卒業パーティーの翌日、クリフがエミーリア嬢を訪ねに来たのはこの間教えただろう? 実はその後、クリフと入れ替わるようにもう一人、君を訪ねに来た奴がいたんだ」


 私はそれを聞いて頭を抱えた。そういえば、メイナード殿下とダンスをしている時に彼が我が家に挨拶しに来ると言っていた事を思い出した。


「メイナード殿下が我が家にいらしたのですか?」

「ああ、らしいぞ。ただその時はご両親とラルスの三人でメイナードの相手をしてその中でも母親の圧が凄かったらしいぞ。私もその場に居たかったよ。想像しただけでも面白そうだ」

「エリク先生。かなり詳しく兄から聞いているのですね。けれど、どうして私がこの国にいる事がわかったのでしょうか?」


 エリク先生はソファの背もたれにもドサリともたれ掛かり首を捻る。兄の話だと私は家の自室にいると言う事にしてあったらしい。だからクリフ様のように、この国に来ている事は教えていない。何処で情報を得たのか、不思議に思った。まあ、この事に関して悩んでも仕方がない。私がエミーリアだとバレなければ、なんとかやり過ごせるはず。


「エミーリア嬢、学院から外に出る時は気を付けた方が良いぞ。本当はクリフと会うときに髪色を戻してもらおうかと思ったが、その髪色はそのままの方が良い。滅多な事はないと思いたいが、どこで見られるか分からないからな」

「そうですね」


 そうそうバッタリと会う事もないと思うけれど、前回街に出た時にクリフ様とは会ってしまったから念には念よ。眼鏡も掛けていった方がいいわよね。ここにいることが分かるとまたしつこく接してくるんだろうし。


「じゃあ、今度の休日の13時過ぎに公園で待ち合わせよう」


 エリク先生は立ち上がると部屋の扉を開けた。私は先生に一礼をする。


「本当にありがとうございます。エリク先生」


 兄に私の事を頼まれているとはいえ、何か何まで申し訳なく思った。それが表情に出ていたのか、エリク先生は「気にしなくていい。私は自分の身を守るためにしていることだから」と微笑しながら言った。どんだけ兄が怖いのだろうか。

 私はそのまま、教室に戻った。


 教室に戻るとクリスティーナ様が自分の席で読書をしていた。その後ろの席ではダリル殿下が机にもたれかかりウトウトしている。こう見ると王太子でも普通の男子生徒とほとんど変わらない。


「あら、レミリア様。戻ってこられたのですね」


 クリスティーナ様のその一言にダリル殿下がピクリと肩を動かし、そしてムクッと体を起こす。そして「先生とは話が終わったのか?」と無愛想で不貞腐れているような言い方で訊いてきた。


「はい」

「そうか……」


 ダリル殿下は拗ねた子供のように、また机にもたれかかった。何の話だったのか気になるようで『聞きたい、聞きたい』という念が伝わってくる。それはクリスティーナ様も感じたようで呆れるように軽く溜息を吐いた。そしてまた本を読み始める。


 クリスティーナ様が読んでいる本は小説のようだった。


「何を読んでいらっしゃるの? 面白いの?」


 私はクリスティーナ様の顔を覗き込んで訊いた。


「ふふふ。これね、面白いわよ。裕福な令嬢が自分の生き方に疑問を持って、旅に出るの。そして途中で出会った一人の騎士様と一緒にいろんな国を見て回るのよ。時には盗賊に襲われそうになったり、魔物にも出くわしたりするんだけど、騎士様がケガをしながらでも令嬢を守っていくの。そして、その令嬢と騎士様は恋をするのよ。まだ最後まで読んでいないから、その後どうなるか分からないのだけれど。でも、いろんな国を見て回れるなんて憧れるわ」


「素敵です。憧れますよね。二人も次第に恋に落ちていくなんてロマンティックで、その恋にも憧れます」

「そうなの、そうなのよね!! 素敵ですよね!」


 二人で小説の話で興奮して盛り上がっていると、ダリル殿下がじっとこちらを見ていた。少し熱の籠った視線に気づくと彼が私に訊く。


「レミリア嬢はそんな恋をしたいのか? 俺と旅に出る? 守ってあげるよ」

「はあ!? 王太子殿下が何を言われるのですか!?」


 淑女らしからぬ大声が出る。

 クリスティーナ様は目を細め、こちらを見る。


「レミリア様、声をお気をつけてくださいませ」

「し、失礼いたしました」と私は肩をすくめた。


 けれど私たちにとっては非現実に近い小説の話に、ダリル殿下は何を言っているのだろう。頭は大丈夫かしらと心配になってくる。まあ、冗談だと思うけれど、もしかすると、ダリル殿下も何か嫌な事があって現実逃避でもしたくなったのかもしれない。


「王太子殿下。嫌になる事でもあったのですか?」

「は?」

「この小説の世界観は非現実なものです。何か辛い事や嫌な事があって現実逃避をしたくなったのでしょうか?」


 ダリル殿下とクリスティーナ様の二人は目を見開き、言葉に詰まっているようだった。私はもしかして、可笑しなことを言ってしまったのかと不安になってしまう。そして、二人とも同時に「はあああ」と、呆れが混じったようなため息をついた。


「レミリア嬢……憧れを話すなら、夢を壊すような事は言わないでくれ」


 私は首を傾げた。ダリル殿下の言っている意味が理解出来なかったからだ。私の言った言葉の何処に夢を壊すような事があったのだろうか。


「レミリア様。ダリル殿下は単にあなたと一緒に旅をしてみたいと言ったのよ」


 そんな事を言うクリスティーナ様に対し私はまた首を傾げた。


「この国の王太子殿下ですよ? 私と旅に出てどうるすのですか? もし旅に出るならクリスティーナ様と一緒に行きたいです」

「あら、それも良いわね。楽しそう!」


 クリスティーナ様の表情がぱあっと明るくなった。


「おい! クリスティーナ嬢! どうしてそうなるんだ!? 俺が一緒に行きたいと言っているのに」

「殿下は立場上、そんな事出来ないでしょう。諦めてください」

「いや、クリスティーナ嬢だって出来ないだろう!」

「そうね。あーあ、夢のまた夢ね……」


 クリスティーナ様は本当に残念そうな顔をした。本当にいつかは一緒に旅が出来るといいな、と思う。けれど、やはり侯爵令嬢ともなれば難しいのかもしれない。それに彼女はダリル殿下の婚約者候補だ。身の安全も考えると遠くの国まで行くことも出来ない。


 本当に夢のまた夢の話だ……。

最後まで読んでくださってありがとうございます。

もし面白いと感じていただけたなら、応援やブックマーク、評価などいただけましたら励みになります。

次回更新は8月18日0時10分頃の更新予定をしております。

また読んでいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ