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婚約破棄!? 心の中で大喜びしますわ!  作者: 風月 雫
第2章

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第53話 謝罪

拙作ですが、よろしくお願いします(#^.^#)

 翌朝、カーテンと窓を開けると爽やかな風が部屋に入り込む。

 そしてクリスティーナ様が約束通り、部屋まで迎えに来てくれた。


「おはようございます。レミリア様」


 先程部屋に入り込んだ爽やかな風とは違い、クリスティーナ様の表情がいつもより暗い。いつもならにこやかな微笑みを見せてくれるのに、昨日の事をまだ気にしているのだろう。彼女が悪いわけでもないのに、本当に王太子殿下の事を大切に思われているのだわ。


「おはようございます。クリスティーナ様」


『気にしないで』という想いを込めて、いつもと変わらない声のトーンを心掛けて挨拶を返す。それを見たクリスティーナ様は安堵したように微笑んだ。


「レミリア様、今日は教室に行く前に学院の応接室に来てほしいの」


 申し訳なさそうにクリスティーナ様が言う。多分、そこにはダリル殿下が待っているんだろうと察しがついた。

 王族……王太子殿下がそこで私を待っているのだ。行かない訳にはいかない。もう二度と顔を合わさないで済むのなら行かないけれど、そんな事は無理だよね。

 同学年で同じクラス。つくづく自分が変なタイミングで留学したものだと思ってしまった。


「良いですわよ。行きます」


 そう返すとクリスティーナはまたもや申し訳ない表情になる。私は親友のそんな顔をできるだけ見たくない。


「クリスティーナ様、そんなに気になさらないでください。そんな表情はクリスティーナ様に似合いませんわ」


 私が微笑んでそう言うと、彼女は一生懸命、笑顔を作ってくれた。


 今朝は丸い眼鏡の特徴のカノン様は待っていなかった。アルト様と一緒に登校してもらったと言っていた。多分それもクリスティーナ様が気を回したんだろうと思った。


 学院に到着すると、そのままクリスティーナ様と一緒に応接室に向かった。応接室は職員室の隣にあり、扉をノックすると「どうぞ」と言う声が聞こえた。

 クリスティーナ様が扉を開け、私を先に入室させる。中に入ると、やっぱりそこにはダリル殿下がいた。ソファに座っていたダリル殿下だったが、私の顔を見るなり慌てて立ち上がる。彼の目の下にはうっすらと隈が出来ていた。


 クリスティーナ様にエスコートされ、ダリル殿下の向い側に立つ。私の目線は下を向いて上になかなか向けれない。


「座って……」


 蚊の鳴くような声でダリル殿下は私に座るように促す。私はクリスティーナ様に肩を支えられながら座った。

 数秒程、広い応接室が静寂に包まれる。


「レミリア嬢……昨日はすまなかった。謝罪する」


 ダリル殿下は立ったまま90度近くまで頭を下げた。私はギョっとした。まさか、頭まで下げるとは思いもしなかったからだ。簡単に王族が頭を下げてはいけない。


「王太子殿下、頭をお上げください!」


 私は慌てて立ち上がり、そう言うと彼はゆっくりと頭を上げた。


「もう昨日の事は何とも思っておりません。先生に対しての事も……手首を掴まれたことも……手首の跡も消えました。なので、もう気にしておりません」


 ダリル殿下に昨日掴まれて赤くなっていた手首を見せた。掴まれて赤くなった部分はすっかり消えている。それを見たダリル殿下は胸をなでおろしたようにホッとした表情を見せた。


「しかし、怖い想いをさせてしまったようだったし、本当にすまない……」

「謝罪は受け入れますので、もう謝らないでください」


 ダリル殿下は私の顔をパッと見て「ありがとう」と微笑した。クリスティーナ様も「胸のつかえが取れたわ」と安堵の表情を浮かべる。


「レミリア嬢……そ、そのエリク先生の事だが……先生に好意を持っているのか?」


 ダリル殿下は、少し自信なさげのおどおどとした感じで問いかけてきた。

 私は小首を傾げる。

 もしかしてダリルはまだ私が先生の事を好きなんじゃないかと思っているのかしら。

 それにしても一国の王太子だ。もっと堂々としていればいいものを、まるで迷子になった子犬のようだわ。


 エリク先生は頼れる兄のような存在だ。そういう意味では好意は持っているのかもしれない。


「エリク先生は……い、従兄と雰囲気が似ておりますの。だ、だから、つい、相談してしまいますの……」


 確かブロッサム家にはルシア様が長子で弟がいたはず。兄と雰囲気が似ているというにはちょっと無理がありそうだから、従兄にしてみたのだけれど、なんという苦しい言い訳をしてしまったのだろう。

 咄嗟に出たとは言え、もう少しまともな言い訳がなかったのかと、頭の中で自分の頭をポカポカと叩く。そんな苦しい言い訳をこの二人が信用すると思えない。


「そ、そうか……そうだよな。一人で留学に来て、間もないし。そうだよな」


 私は眉間に皺を寄せた。

 私の苦しい言い訳をダリル殿下は自分に言い聞かせるようにして納得しているようだった。まあ、納得してくれるなら有難いけれど、嘘をついている事に罪悪感が湧いてくる。私はこれ以上、この話を引きずりたくない。教室に戻ることを提案した。


 三人で応接室を出て職員室の前を通ると、丁度エリク先生が職員室から出てきた。


「あ、エミ……ブロッサム嬢」


 先生……今、エミーリアと呼びそうになっていたわ。


 私がエリク先生を上目遣いに軽く睨みつけると、先生は視線を斜め上に向けとぼけた表情になった。その表情が可笑しく、吹き出しそうになるのを私は必死で堪えていた。


 ダリル殿下はエリク先生の事が気に入らないのか、不機嫌な顔で先生を見ていた。


「殿下、落ち着いて下さい」とクリスティーナが声をかけると「ああ、分かっている。同じヘマはしない。大丈夫だ……」と呟いていた。


「ブロッサム嬢、後で私の所に来てください。お伝えしたい事があります」

「あ、はい。分かりました。後でお伺いします」


  エリク先生はそう言うと自分たちの教室に向かっていった。私たちも教室に行くためその後について行く。先生の後姿を見ながら、先程の呼び出しはクリフ様の件なのかもしれない、もうクリフ様に会いに行ってくれたのだろうか、と考えていた。


 昼のランチタイムが終わり、休み時間にエリク先生の所に私は一人で行く。ダリル殿下は何か言いたげな顔をしていたけれど、見て見ぬふりをして職員室に向かった。


「おお、来たか。こっちだ」


 エリク先生はこの間の談話室に案内してくて、向かい合わせでソファに座る。


「話と言うのは、まずはクリフの件だ」


 まずはって? え? クリフの件以外に何かあるの?


 神妙な顔で私は先生の顔を見た。


「クリフはエミーリア嬢の言っていた通り、公園の隣のホテルで働いていたぞ」


「……やっぱり、そうなんですね」


「それで、話も出来た。今度の学院の休日の昼に会う約束をした。念のために聞くけれど、本当に会うんだよな?」


 私はこくりと頷いた。


「分かった。あとは……これは伝えた方が良いのか、悩んでいる」


 エリク先生は腕を組み、うーんと唸りながら悩んでいた。物凄く悩んでいるようで、話が進まず先生に声をかけた。


「先生……」

「あ、うん。昨日、ラルスから連絡が有ったんだが、あまりいい話ではない。エミーリア嬢がそんな話は聞きたくないと言えば言わない。それでも聞きたいと言えば……話そう」

「兄からですか? では、兄は私に伝えてほしいと?」

「ラルスも悩んでいたようだった。どうしていいのか分からず、結局、私に投げてきた。私の判断に任せると」

「……先生。兄に良いように使われてますね」

「ははは、そうだな。で、私も悩んでいる」

「それで、結局……私任せと言う事かしら?」


 まあ、そういう事になるな、とエリク先生は苦笑する。


「先生を困らせるのも申し訳ないので、教えていただけますか?」


 エリク先生は顔を歪ませ首を捻る。かなりやばい事なのかもしれない。


「大丈夫ですから、教えてください」

「よし、分かった! 心して聞いてくれ!」


 先生の意志は固まったらしい。

 そんなにも心して聞かないといけない事なんだろうか。聞かない方が良いのかもしれないと思いストップをかけようとしたけれど遅かった。


「ドルーニア国の第二王子、メイナード殿下がこの国に来ている!」

「はああああ!?」


 エリク先生の感嘆符が付く程の一言に驚き、私は素っ頓狂な声を張り上げた。

最後まで読んでくださってありがとうございます。

もし面白いと感じていただけたなら、応援やブックマーク、評価などいただけましたら励みになります。

次回更新は8月15日0時10分頃の更新予定をしております。

また読んでいただけると嬉しいです。

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