第51話 ダリル殿下の失敗 1
拙作ですが、よろしくお願いします(#^.^#)
俺はレミリア嬢との接し方を間違ってしまった。クリスティーナ嬢が助言してくれていたと言うのに、気持ちを抑えられなくなってしまった。
自然豊かなハンシェミント国の第一王子として生まれ、王太子と地位に付いたのは、4歳のころだった。そして同時に俺の婚約者はドーラ侯爵家の長女、クリスティーナ嬢に決まった。彼女とは3歳の頃から何をするのも一緒だった。野原を駆け回ることも、昼寝をするのも、絵本を読むのも、絵を描くのも。おやつも食べる時も。
彼女とはとても気が合った。だから、彼女と一緒にいるのがごく自然で嫌ではなかった。
だけど自分達が成長するにつれて、恋愛感情は無く兄妹のような存在になってしまっていた。クリスティーナ嬢は自分を兄のように慕ってくれた。俺の中でも、クリスティーナ嬢の存在は姉であり、時には守ってやりたくなる妹のようなものになった。最近では、俺が間違った道に進もうとすると正してくれる厳しい姉のようであった。
だからクリスティーナ嬢にまったく愛情がないわけでもない。しかし、それが兄妹愛のようなもので、そんな愛情のまま結婚してしまうのも違う気がした。クリスティーナ嬢には幸せになってほしい。でも、幸せに出来る人間は、兄、弟のような存在の俺ではない。俺では彼女を幸せに出来ないと思った。彼女も同じ想いだったらしい。
14歳の時にクリスティーナ嬢と二人で俺の父、国王に婚約解消の願いを申し出た。この国でクリスティーナ嬢が一番ふさわしいと考えている国王はなかなか承諾してくれなかった。
わが国には侯爵家の上に公爵家が四家あるが、その内令嬢は二人。しかも国王の姪にあたり、俺の従妹になる。それでは血縁が近すぎる、権力の偏りも出来るというのだ。公爵家以外からのだからドーラ侯爵家のクリスティーナ嬢に決まった。
そんな事情があったのは当時の俺達も知っていた。これが最善だと言う事も。だけど幼い頃から一緒にいた彼女を愛せても兄妹のようにしか思えない。
国王は条件付きで、クリスティーナ嬢を婚約者という立場から婚約者候補に変更することを認めてくれた。18歳になるまでに王家が決めた婚約者候補から婚約者を決めるか、自ら相応しい令嬢を見つけるという条件だった。
俺たちはその条件で同意した。どんな条件でも時間稼ぎが出来る。それからは、王家が選んだ婚約者候補と月に一回程度のお茶会をすることになったが、俺達の年齢の令嬢たちは殆どが婚約者がいた。言うまでもない、結局は余り物だ。それでも王家が選んだ10人候補者人いたが、侯爵家のクリスティーナ嬢と争う気になれない理由で途中で辞退し二人の子爵令嬢だけが残った。子爵令嬢では王太子の婚約者には不釣り合いのような気もする。それでも心豊かで人間性が高ければ何とかなると思っていた。
期待を持ち二人を呼んでお茶会をすれば、酷いものだった。始めは静かなお茶会だったが、次第に足の引っ張り合い。わざと相手にお茶をかけ、かけられた令嬢は仕返しに同じことをする。挙句の果てに令嬢とは思えない取っ組み合いが俺の目の前で始まる。これでは、先が思いやられると言うより、先が真っ暗だ。
そんなお茶会の噂は、父、国王にも届いた。国王もこれではダメだろうと他の令嬢を捜していたようだった。
「ダリル、婚約者候補にもう一人今打診している。国外にいる伯爵令嬢だ。彼女ならなんの問題もない」
聞けば、俺と同じ年齢だと言う。王家が認める令嬢が15歳までフリーなのが不思議だったが、その話はそれ以上進展することはなかった。どうも向こうが首を縦に振らないらしい。なにか問題でもある令嬢なのかもしれない。
そんな時にクリスティーナ嬢から、新学期に合わせて国外から令嬢が一人留学してきたと俺に伝えに来た。新学期が始まる前にクリスティーナ嬢はその留学生と仲良くなり、とても気に入ったらしい。彼女なら婚約者候補に相応しいと教えてくれた。聞けば、ドルーニア国の伯爵令嬢だと言う。
クリスティーナ嬢が気に入る令嬢なら、例の子爵令嬢たちのようなことは無いはず。たとえ、その留学生に婚約者がいたとしても破談にしてしまえばいい。
そして俺は新学期早々に留学生に会った。クリスティーナ嬢が推すだけの事はある。容姿も問題ない。所作も悪くない。だから、俺から少しアプローチをかけてみた。かけてみたのだが……靡かない。一応俺はこの国の王太子だ。そこそこ令嬢たちから見れば魅力があるはず。俺からこの出会いに『運命を感じる』と言っても『婚約者になってよ』と言っても靡かない。挙句の果てには『お断りします』と言われた。
初めてだった。こんな扱いを受けたのは本当に初めてだった。それに、クリスティーナ嬢やカノン嬢と話をしていて、時に見せる笑顔が忘れられない。愛らしいとは違う淑やかで美しい、あの笑顔を俺にも向けてくれないかと思い、話かけてみるが青い顔をされるばかり。俺には全く興味を見せない。こんな令嬢は初めてだ。何故か新鮮で、心惹かれるものがあった。
ああ多分、婚約者候補のあの子爵令嬢たちを見てきたからだろう。
なんか良いな、と思った。あの紫の瞳にも惹かれる。何より初対面だというのに飾り気のない、媚びない話し方が良い。そして、婚約者がいないと判明した。授業中も真剣に先生の話を聞いている。俺の席は彼女の斜め後ろの席だから彼女の表情が時々見えることがあったが、理解できない事になると困惑の表情になり、理解できるとパアッと明るい表情になる。クルクルと表情が変化して面白い。
ランチタイムにはレミリア嬢を捜し、一緒にランチをした。話の流れで彼女の『私、婚約破棄されましたの!!』発言には驚いた。これだけの令嬢を手放すとは普通にありえないと思った。良いなと思ったレミリア嬢に婚約者がいないのならチャンスだ。彼女ともっと話したい、そんな気持ちでいっぱいだった。
それ後からはいつの間にか彼女の姿を目で追うようになった。放課後にはクリスティーナ嬢と彼女が学院内の何処かに出かけた分かると彼女たちを捜した。カフェにいる所を見つけると自然と心が弾む。だが、話しかけようとしたら赤いバラを一輪、レミリア嬢が持っていた。何処かの令息が彼女に渡してきたと聞いた。ランチタイムの『私、婚約破棄されましたの!!』発言を聞いて、アプローチをかけてきたのだろう。彼女を狙うのは俺だけじゃない。
チクリ、と胸が痛む。笑顔を取り繕うとしたが、モヤモヤとした感情が込み上げ、結局、レミリア嬢に誰から貰ったものかと問い詰めてしまった。誰から貰った物かも分からず、しかも彼女の手に持っているバラの意味も知らず、クリスティーナ嬢から意味を聞けば、また青い顔になる。
その表情を見たら、モヤモヤとした感情が少し落ち着いた。その男子生徒に関心がないと言う事が分かったからだ。しかし、それと同時にレミリア嬢は恋愛に関して疎いと分かった。これだけの容姿端麗な令嬢が恋愛に関してどうして疎いのか不思議だった。恋愛に関して嫌な思い出でもあるのだろうか。
しかし翌日の教室のレミリア嬢の机の上に置かれた、たくさんの贈り物には驚いた。これだけの男子生徒が彼女を狙っているのかと。唖然とするしかなかった。
そんなレミリア嬢は新学期が始まって間もないと言うのにエリク先生と親しい。俺はそれが気に入らなかった。今朝も先生と相談したいことがあると言い、朝から先生に会いに行ってしまう。放課後には先生に伝えたいことがあるとか、またエリク先生の所に行こうとする。彼女の行動が俺の胸の内をイラつかせた。
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次回更新は8月9日0時10分頃の更新予定をしております。
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