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婚約破棄!? 心の中で大喜びしますわ!  作者: 風月 雫
第2章

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第50話 会う決心

拙作ですが、よろしくお願いします(#^.^#)

 クリフ様に会う決心をした私に、エリク先生は「わかった」と頷く。


「じゃあ、私も一緒に同行しよう。まず、彼を捜さないといけないね」

「いえ、何処にいるのか知っていますから捜さなくて大丈夫です」


 おや、とエリク先生は片眉を上げた。


「実は……この間偶然会った時に、私を見つけたら連絡をしてほしいと頼まれて……公園の横のホテルに泊まっているって言ってました。夜はそこで働かせてもらっているとも言っておりました」

「驚いた。クリフが働いているって?」


 エリク先生は目を見開いて驚く。先生もまさかクリフ様が働いているとは思っていなかったらしい。やっぱり驚かれるわよね。とても想像が出来ない。


「私も驚きました」


 仮にも侯爵令息だ。いくらお金に困っていても平民がするような労働までするとは驚きだった。以前のクリフ様ならプライドが許さなかっただろう。


「かなり本気でエミーリア嬢を捜しているんだね」

「……」


 私との婚約が無くなると、領地を没収されると聞いていた。領地のない貴族は貴族と言えない。爵位はあっても惨めなものだ。


「先生。もしかすると、クリフ様は私と婚約をし直したいと思ってるのでしょうか? 婚約をし直して領地を取り戻そうとしているのでしょうか?」


 そんなことは思いたくない。以前の彼ならありえる話なのかもしれないけれど、あの苦し気に話していたクリフ様をそんな風に思いたくなかった。でも、もしかしてそんな考えを持っているのでは、と頭の片隅でそんな事を思ってしまう。そして、そんな自分にも嫌気が差す。


「どうかな? そればかりは会ってみないとクリフの考えていることは分からないからね」


 エリク先生は少し考え込んだ。


「そうだね。一度会うにしても、私から先にクリフに会って様子を見てくることにしよう。その時に会う日時を決めて来てあげるよ。いきなりエミーリア嬢から会いに行くのも不安だからね」

「何から何までありがとうございます」


 私はぺこりと先生に頭を下げた。


「気にしないで。これは私自身のためにしていることだから。君に何かあったら、ラルスが怖いからね。私をラルスの代わりだと思って頼ってくれ」


 エリク先生は兄のせいにしているけれど、本当に面倒見が良い。兄と一緒にいるようで安心感がある。だから、つい頼りたくなってしまう。


「さて、何時いつがいいかな?」

「先生の都合と向こうの都合に合わせます」

「いや、向こうが会いたがってるんだ。エミーリア嬢に合わせるのが普通だ。まさか、向こうが働いているからと気を使ってるんじゃないだろうな」

「……」

「図星か……君はどこまでお人好しなんだ?」


 お人好しになったつもりもない。一番暇をしているのは私だ。けれど、働いている人の事を考えずにこちらで予定を決めてしまうのは心苦しい。それに、先生の都合もあるはず。


「分かった。じゃあ、こうしよう。学院の次の休みは4日後だ。その日の午後からでも良いかい? この日は私の予定も空いている。あとはクリフがその日で良いと言えばその日に決めよう。都合が悪ければ、申し訳ないがこちらで日時を決めさせてもらう。どのみち学院が休日の日にしか決めないから安心して良いよ」

「はい。ありがとうございます。それでお願いします」


 私がお礼を言うと、エリク先生は「任せておけ!」と頼もしい言葉を微笑みながら言った。私の気持ちがまだ軽くはならないが、一歩前に進めることに少し安堵する。


 なのに、何故かまたいややこしい人が、目を見開いて驚いているダリル殿下が目の前にいた。


「レミリア嬢……」


 帰ったとばかり思っていた。

 ダリル殿下の驚いた表情をみれば多分二人で散歩をしていて、たまたまここまで私に会ってしまったのだろうと思った。傍にはクリスティーナ様が一緒にいる。彼女は両手を顔の前に合わせ、声もなく唇を「ごめんなさい」と動かす。


「じゃあ、話が終わったから私は職員室に戻るよ」

「あ、はい。先生ありがとうございます」

「気にしなくていい。また何かあったら相談に乗るよ」


 ダリル殿下を見れば彼は鋭い視線で先生を睨み付けている。けれど、エリク先生はなにも気にしないで立ち上がると私の頭を軽くポンポンと叩き、ひらひらと手を振りながらこの場を離れた。


「レミリア嬢、あの先生に何もされなかったっか?」


 私は眉間に皺を寄せた。とても不愉快という感情が込み上げてくる。

 エリク先生は親身に相談に乗ってくれていた。そんな先生に何をされるというのだろうか。いくら私が秘密にしている事があり、先生にしか相談出来ないことがあっても疑うにもほどがある。


「何をされるというのですか? あれほどの面倒見の良い先生になんてことをおっしゃるのですか? それに、ここは学院の庭です。他の生徒もいるというのに……」


 私は段々と腹が立ってきた。

 長くこの場にいたら不愉快な思いをするだけだと思い、仏頂面でこの場から離れようとした。


「待ってくれ」


 ダリル殿下が私の手首を握る。

 かなりの力が入っていたのか、痛く感じ顔を歪めた。


「殿下、ダメです」


 それを見たクリスティーナ様は顔色を変え慌ててダリル殿下に注意し手を離させるように促した。ダリル殿下も彼女の声で、慌てて私の手首を離す。

 わたしは自分の手首をみれば少し赤くなっている。その赤みはダリル殿下にも見えたのだろう。彼の顔は青ざめていた。


「だ、大丈夫か? レミリア嬢……すまない」


 私は狼狽えている彼をキッと睨み付けると、何も言わずにその場をすぐ離れた。その時にはクリスティーナ様がダリル殿下に何か怒っている声が聞こえた。


 私は寮の部屋に戻ってくると、タオルの水で濡らし赤くなった手首を冷やす。


「もう! 何なのよ!」


 手首を冷やしながら涙が流れて来る。決して私は一人ではない。クリスティーナ様やカノン様がいる。エリク先生だっている。だけど、やっぱり家族に会いたい。ルシア様にも会いたい。皆に会って愚痴を聞いてほしい。


 手首を冷やしていると、トントントンと扉をノックする音が聞こえた。


 はい、と返事をすると「私です、クリスティーナです」と沈んだ声が聞こえた。扉を開けると今にも泣き出しそうな顔のクリスティーナ様が立っていた。


 どうぞ、と部屋に入ってもらうと、ボロボロと彼女が泣き出した。


「ごめんなさい。レミリア様。本当にごめんなさい」


 目を真っ赤にして彼女は私に謝る。クリスティーナ様が謝る理由なんて一つもない。なのに彼女は必死に謝ってくる。


「クリスティーナ様が謝る事じゃないです」

「いいえ、私がもっとしっかりとダリル殿下にきつく言っておくべきでした」


 クリスティーナ様はタオルで冷やしている私の手首にそっと手を寄せた。そしてタオルをもう一度、水に濡らし冷やしてくれる。手首を見ると、だいぶ赤みが引いていた。


「ありがとうございます」

「いいえ、本当にごめんなさい。ごめんなさい。ダリル殿下にはきつく言っておきます。だから、殿下の事は嫌いにならないであげてください」


 必死に謝ってくるクリスティーナ様を見ていると、先程まで感じた憤りもどこかに消えてしまった。私は泣いているクリスティーナ様をベットに座らせた。私もその横に座る。


「大丈夫です。少し度が過ぎたことに腹が立ちましたが、王太子殿下の事は嫌いになっておりません」


 彼女の両手を包み込むように手を握った。


「……本当に?」


 泣くのを止めたクリスティーナ様は涙で濡れてキラキラとした金色の瞳で私の顔をじっと見つめる。やっぱり彼女の瞳は綺麗だ。


「はい。王太子殿下は私の大切な親友、クリスティーナ様の婚約者候補です!」


 私がそう言い切ると彼女は目を見開き、眉を僅かに寄せ残念そうな表情をした。


「これほど殿下が不憫に思ったことはないわ。もう脈なしなのかしら」


 と呟いた。

 どういうことかしら、と私が小首を傾げると彼女は「必ず明日、ダリル殿下から謝らせます」と目に涙を溜めながら私の両手を握り返した。

最後まで読んでくださってありがとうございます。

もし面白いと感じていただけたなら、応援やブックマーク、評価などいただけましたら励みになります。

次回更新は8月6日0時10分頃の更新予定をしております。

また読んでいただけると嬉しいです。

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