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婚約破棄!? 心の中で大喜びしますわ!  作者: 風月 雫
第2章

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第49話 うわのそら

拙作ですが、よろしくお願いします(#^.^#)

「ねえ、レミリア様。大丈夫?」


 休み時間に隣の席のクリスティーナ様が聞いてきた。私は机に肘をつき顎を乗せ外を眺めていた。


「うん……そうね」

「ねえ、レミリア様。今日もいい天気ですわね」

「うん……そうね」

「今日の昼食は、美味しかったですよね」

「うん……そうね」

「ダリル殿下って、イケメンだと思いますわよね」

「うん……そうね」

「ねえ、レミリア様。1+1=4 ですわね」

「うん……そうね。1+1=4ですわね? え?」


 ぼーっとしながら、なんとなくクリスティーナ様の問いに答えていたけれど、今、途中からおかしなことを自分が鸚鵡返しした気がした。隣の席に座っているクリスティーナ様の方を見る。クリスティーナ様が呆れ顔をし、その後ろの席でダリル殿下はどうしてか赤面していた。


「やっと気が付きました? どうされたの? 何か悩み事でもあるのですか?」

「あ、ごめんなさい。ぼんやりしておりました」

「本当に大丈夫? 悩み事があるなら相談にのりますわよ」


 私はクリスティーナ様の『悩み事』、『相談』という言葉を聞いて、微妙に視線を逸らした。悩み事はあると言えばある。けれど、それを相談するわけにいかない。相談できないのだ。


「大丈夫です……ところで王太子殿下はどうして顔が赤いのですか?」


 私がダリル殿下の方を見ながら言うと、彼は何故か耳まで真っ赤になった。もしかして、考え事をしている間に変な事を口走ったのかもしれない。


「わ、わわわ私、何か変な事を言ってしまっていたのでしょうか……」

「あらあら、大丈夫よ。そんな変なことは言ってないわ。『ダリル殿下ってイケメンだと思いますわよね』って聞いたら『うん。そうね』と答えただけだから」


 クリスティーナ様はにっこりと微笑む。


 やばい。ぼんやりとしすぎだわ。自分の言った事にサアッと血の気が引いた。


「ご、ごめんなさい。ぼんやりしていて、思っても無いことを言ってしまいました」


 そう言ってしまった後に、また余計なことを言ってしまったことに気付く。私はダリル殿下の方をチラリと横目で目線を向けた。先程とは打って変わって彼は青い顔になっていた。仮にもダリル殿下はこの国の王太子だ。心に思っていなくても『イケメンだと思っている』とお世辞でも言った方が良かったのかもしれない。


「レミリア様ったら、本当はイケメンだと思われているんじゃなくて?」


 クリスティーナ様は今まで以上に満面の笑みを浮かべる。その笑みが背筋を凍らせるほどのものに見えた。けれど、これは彼女が助け舟を出してくれたと私は理解する。


「そ、そうね。そうです!!」


 私はそんな事は思ってもないけれど、慌ててクリスティーナ様に言葉を返す。それを聞いたダリル殿下は呆れるように大きな溜息を吐いた。


「レミリア嬢。もう、何も言わないでくれ。血の気の引いた顔で言われても全く嬉しくない」

「王太子殿下。そもそも私なんかに『イケメンです』と言われても嬉しくないですよね?」


 私は正直に思ったことを言った。私より婚約者候補のクリスティーナ様から言って頂いた方が嬉しいに決まっていると思ったのだ。

 なのにダリル殿下はひ弱な声で「……もう何も言わないでくれ」と自嘲するように呟いた。私は小首を傾げると、クリスティーナ様は憐憫の眼差しをダリル殿下に向けていた。


「レミリア様。今日授業が終わったら、気分転換に校内の散歩でも行きませんか?」


 私に気を使ってクリスティーナ様はそんな提案をしてくれる。悩んでいることがあると思われたのだろう。だけど、今の状態を早く抜け出したい。クリフ様に会って、このモヤモヤとする気持ちをすっきりさせたい。すっきりさせて、楽しい留学生活をエンジョイしたい。


「すみません、クリスティーナ様。放課後にエリク先生にお伝えしたい事があって」

「またエリク先生か? 何を伝えるんだよ。俺も一緒に行く! あいつは絶対怪しい!」

「え? 来なくていいですよ」


 また面倒な事を言い出すダリルに私は真顔で返す。何が怪しいんだか。そんなこと言っていないで、大人しくクリスティーナ様と一緒にいてくれれば良いのに、と心の中で呟いた。


「な、なんだよ。俺に聞かれたくないことなのか? え? まさか? 先生に『好きです』って告白するわけじゃ……」

「ど、どうしてそうなるのですか? 何故告白を?」


 けれど朝の大人の色気を漂わせてウインクしたエリク先生の事を思い出したら、少し顔に熱が籠った。自分の手で頬を触ると熱い。きっと赤くなっているわ。


「……っ!!」


 ダリル殿下とクリスティーナ様は顔を少し赤らめさせた私を見て目を大きく見開いて驚いていた。


「ク、クリスティーナ嬢。俺の……見間違いじゃないよな? あのレミリア嬢が顔を赤らめているぞ」

「え、ええ……そ、そんな、まさか……」


 二人は何を驚いているのだろうか。私だって顔を赤らめる事だってあるわ。そんなに驚くことでもないはず。ダリル殿下は私の顔をマジマジと眺め、形の良い眉を顰める。何も悪い事はしていない。いえ、悪い事はしていないけれど、クリスティーナ様の『悩み事があるなら相談に乗りますわよ』という私を心配して親切な言葉をかけてもらったのに、それに応えられない罪悪感があり、私の視線が泳ぐ。


「レミリア嬢。あんな先生に恋をするのは辞めてくれ」


 ダリル殿下は何か勘違いをしたのか真剣な表情でそんなこと言い、絡みつくような視線でこちらを見ている。私は背筋がゾクリとして、体が強張った。


 何も言い返せずに身を竦めていた私に気付いたクリスティーナ様が、「ダリル殿下、堪えてください」ときつめの声をかける。


「あ、すまん」


 クリスティーナ様の言葉にダリル殿下は、私が体を強張らせているのに気付いたようで、目を逸らし謝る。


 この重たい空気は何? 堪えるって何を?


 確かにエリク先生は素敵な先生だ。多分だけれど、女子生徒にもそこそこ人気があると思う。けれど、どうして私が先生に恋をしたという話になるのだろうか。たとえそうなったとしても王太子殿下には関係の無いことだ。私はまた外をぼんやりと眺めた。


 放課後になり、クリスティーナ様に職員室へ行くので先に帰っていた欲しいと伝える。彼女は、「分かったわ。気を付けて帰ってくるのよ」と言って先に帰ってもらった。ダリル殿下は何かもの言いたげな表情でこちらを見ていたが、クリスティーナ様に連れられ渋々帰って行った。


 クリスティーナ様が一緒にいるのだから、もっと楽しそうにすればいいのに。


「さて、私は先生の所にいきますか」


 今の気持ちを少しでも軽くなるように願いながら職員室へ向かう。職員室の扉を開けると、真っ先に目に入ってくるのは、至る所に置かれた多種多様の植物だった。この学院は本当に建物の中でも植物が多い。緑が多いと癒しとなり落ち着いた雰囲気になる。そんな中、エリク先生は少し離れた机で作業をされていた。


 ドアの近くにいた他の先生にエリク先生を呼んでもらった。エリク先生は私に気づくと手を挙げて「今、いくよ」と合図をしてくれる。机の上の書類を大雑把に片付けると先生はこっちに向かって歩いてきた。


「ブロッサム嬢、今日はいい天気だから外で話そうか」


 階段を降り、校舎の中庭に出る廊下を歩くと下校時刻だからだろう。生徒たちは帰り支度をし、エリク先生とすれ違う度に「先生! さようなら!」と声を掛けていく。先生の一歩後ろに着いて行き、外に出ると丁度、花が見ごろな藤棚があった。


「先生。学院にこんな所があったんですね。素敵です」


 私は藤棚を見上げる。紫の小さな花がいくつも連なり、花が天から降り注ぐいでいるようで、とても綺麗だった。藤棚の下にあるベンチに先生は私を座らせ、先生も横に座り、天を見上げる。


「綺麗だろう? 君の瞳の色に似ている……さて、彼に会う決心は着いたのかい?」


 エリク先生の問いに私は「……はい」と頷いた。

最後まで読んでくださってありがとうございます。

もし面白いと感じていただけたなら、応援やブックマーク、評価などいただけましたら励みになります。

次回更新は8月3日0時10分頃の更新予定をしております。

また読んでいただけると嬉しいです。

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