第45話 クリスティーナの悪戯心
今回はクリスティーナ視点です。
拙作ですが、よろしくお願いします(#^.^#)
今朝は護衛のビアンカを連れて、レミリア様と街に出かけた。
このビアンカは女性だけれど、男装が甚く気に入っているようで、大体は男装の恰好、それも騎士様に近い恰好をしている。そんなビアンカも今日は庶民服に近い簡素な衣服を着てきた。私たちが簡素の服装だと聞いて、それに合わせてくれたのだろう。本当に昔から男装をしている。まあ、その話はおいおいにして。
街へ出かけ途中で、レミリア様の顔色が悪かったのもあり、数時間で帰って来た。
私は寮門の所でレミリア様が寮に入って行くのを見送ったけれど、出来れば一緒に部屋まで送って行くつもりだった。だって全寮制で、私もこの寮に住んでいるわけだから。それなのに私の婚約者候補と寮門の所でバッタリ会うとは思いもしなかった。
「おい、クリスティーナ嬢! どういうことだ! 今日の護衛は女性にするといっていただろう!」
そう怒鳴っているのは、この国のダリル王太子殿下である。私の婚約者候補。厳密にいえば、ダリル王太子殿下の婚約者候補が私なのだ。
まあ、私たちに恋愛感情なんて、そんな甘いものは雀の涙ほども一切ない。小さい時から一緒に遊んできたけれど本当に一切ないのだ。国王にしたら、そこで恋愛感情が芽生えてくれれば、なんてバカみたいな考えを持って期待していたようだけれど、ダリル殿下も私も兄妹愛みたいなものが出来上がってしまい、婚約どころではなくなった。まあ、そんな話もおいおいにして。
「ダリル殿下。どうして女性にこだわるのですか?」
「あ、当たり前だ。護衛が変な気を起こして、レミリア嬢に手を出されても困る! 先程も手に……してたじゃないか!」
このダリル殿下は意外に初心である。
『手に……してたじゃないか!』ですって。『……』には何が入るのかしら?
私の悪戯心がウズウズしてくる。真顔のビアンカの表情筋も、笑いたいようでピクピクしていた。でも、もう少し我慢してほしい。もしかして、ビアンカはダリル殿下がいることに気付いていて、あんな事をしたのかもしれない。
「手に何をしたんですか?」
「……っつ!!」
ダリル殿下の顔がみるみるうちに紅潮してくる。
ふふふ、可笑しいですわ。
何処まで本気なのかは知りませんが、学院ではレミリア様に向かって『好きだ』と良い感じで言っていたはず。
あの時は周りに何人か人が居り、冗談のような感じで言っているようにも見えた。けれど、あの時のダリル殿下の耳が真っ赤になっていた事に気付いたのは私ぐらいで、あの告白を聞いてレミリア様はどう感じたのか分からないけれど顔が真っ青になっていた。
「キ、キ……キ、キ……キ、キキキキ、キ、ス……を」
どれだけ『キ』を言えば次の『ス』を言えるのか。本当にまだまだお子様である。ちょっと揶揄って見たくなる。
「手の甲ぐらいにキスをしたからどうだっていうの?」
「ど、どうって……あ、あれは……こ、こ、こう……好意を持っている人にするものだ!!」
「じゃあ、今日の護衛さん、私にも同じ事してもらえるかしら?」
私はビアンカの前に手を出す。ビアンカは先程と同じように跪き、私の手を取り、同じように口づけをする真似をした。優雅な所作だったけれど、必死で笑いを堪えている。
「え?」
「これが先程、彼女がレミリア様にした仕草です」
「え?」
ダリル殿下の驚いた顔が物凄く間抜けな顔をしていて可笑しくて、私は笑い出してしまった。それを見て、ついでにビアンカも笑ってしまう。
「ま、まね? 実際にはしていないのか……し、しかも……今、彼女と……言ったか?」
ビアンカは、ダリル殿下に優雅にカーテシーで挨拶する。もちろん持ち上げるスカートは履いていないわ。ズボンだから。だから真似だけね。
「ビアンカと申します。本日はクリスティーナ様とレミリア様の護衛をさせていただきました。もちろん、殿下とのお約束通り『女』の護衛でございます」
爽やかな笑みを浮かべるビアンカに対して、「はあ!? 女!?」とダリル殿下は目を白黒させた。
女性に護衛を任せるのも悪くは無いけれど、男性の方が見た目の安心感がある。決して、女性だから不満と言う訳でもない。ビアンカもそこそこに剣術には覚えがある方だ。だから男性の恰好が好きなビアンカに護衛をお願いした。これなら、ダリル殿下との約束も守れるのだ。
「ダリル殿下、何か問題でもありましたか?」
「い、いや……な、何も問題……ない」
顔を真っ赤にして狼狽えているダリル殿下も見ごたえがある。でも、いつまででも殿下で遊んでいるわけにもいかない。ビアンカに今日のクリフと言う少年の捜している令嬢の情報を集めをしてもらわないと。
「ビアンカ、今日の例の件、お願いしても良いかしら?」
「はい、かしこまりました。お見かけ次第、クリスティーナ様にご報告いたします」
「ええ、よろしくね」
ビアンカに黒髪に紫の瞳の令嬢を捜すように言うと、彼女は令嬢の顔から騎士の顔に変わる。本当に頼りになる護衛だ。この国の治安は悪くない。だから何かの犯罪にでも会っていなければ案外と早くに見つかるかもしれない。流石に1、2日で見つかるとは思っていない。でも、容姿が気になる。ダリル殿下はダークブラウンの髪だけれど、国王は黒髪です。この国の王家は髪色は黒に近い。だから黒髪と言われると王家の血筋ではないかと疑いたくなる。考えすぎなのかもしれない。
ビアンカの護衛の仕事はこれで終わったので、彼女をトーラ侯爵家に帰ってもらた。此処には今、ダリル殿下と私はいない。婚約者候補の私の立場からしても、ダリル殿下と一緒に二人だけでいても何の問題はない。
「ダリル殿下、少々お話をお伺いしてよろしいでしょうか?」
「な、何だよ。クリスティーナ嬢……」
「場所を移動してからお話しましょう」
生徒同士の交流を持たせるために、寮の敷地内に軽くお茶が出来るカフェがある。外のカフェでも良かったけれど、それだとダリル殿下に護衛を付ける必要が出てきてしまうのだ。私たちは寮の敷地にあるそのカフェに入り、向かい合わせで座った。休日とあって、中には何人かの生徒がお茶をしていた。
「クリスティーナ嬢、それで何の話だ?」
この方は、周りに人がいると王太子の顔になります。この切り替えは素晴らしいとしか言いようがない。帝王学の賜物なのだろう。私は店員に紅茶を二つ頼んだ。
「レミリア様の件です。殿下は、レミリア様をどうお思いですか?」
ダリル殿下は少なからずレミリアに好意を抱いていると私は思っているはず。級友としての好意なのか、それ以上なのか、本人に確認してみないことには私が勝手に判断するわけにはいかない。ダリル殿下が好意を抱き、将来伴侶として迎えるの気があるのであれば、今日のレミリア様を見ていると、このままではダメな気がする。
「ど、どうって……」
カチャリと店員が私たちの前に紅茶をそっと置いていく。私は、その紅茶を一口に飲みました。ダリル殿下は、湯気立つ紅茶の入ったカップをじっと見つめていまま、どう答えたらよいのか迷っているようだった。
「好きですか?」
「……はい。多分……」
何なの、その『多分……』て。煮え切らない返事だわ。
「それは、恋ですか?」
何か尋問のような会話ですが仕方がない。さあ、ダリル殿下『はい!』と答えてくださいませ。
「…………………………分かりません」
はあ?
何拍置いたか分からないほどの時間を取って、まさかの『分かりません』ってどういう事なのか。レミリア様を恋愛音痴っと言っておきながら、ダリル殿下も似たり寄ったりではないか。そう言えば、殿下の恋愛話しを聞いた事がない気がする。
まさかとは思うけれど……。
「殿下、恋をしたことがありますか?」
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次回更新は7月22日0時10分頃の更新予定をしております。
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