第43話 まさかの再会(1)
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拙作ですが、よろしくお願いします(#^.^#)
クリスティーナ様と一緒に街へ行くと約束した休日の朝、晴天に恵まれた。青い空には、真っ白の綿雲がポツン、ポツンと浮いている。
トーラ侯爵家から護衛を一人つけてくれるという事で、寮の門の所で待ち合わせの約束をした。私が待ち合わせ場所まで行くと、すでにクリスティーナ様が門の所まで来ていた。
クリスティーナ嬢は淡いピンク色のワンピースを着ている。私は何を着て言ったらいいのか分からず、事前に彼女に聞くと「簡単で良いわよ」と教えてくれた。なので私は白のブラウスにカーディガンを羽織、薄い緑色のスカートを着てきた。
「おはようございます。クリスティーナ様」
「おはようございます。レミリア様。約束の時間よりも早いんじゃなくて?」
「はい。とっても楽しみだったので、早めに来てしまいました」
「そんなに楽しみにしていただけたなんてうれしいわ」
クリスティーナ様は柔らかな微笑みを浮かべる。
約束の時間より早いと言っても、それ以上に先に来ていたのはクリスティーナ様の方だ。彼女も楽しみにしていてくれたらいいな、と密かに思う。
そして彼女の隣には、腰に剣を下げた一人の細身の男性が立っていた。スカイブルーの瞳にその瞳と同じ色の肩まであるストレートの髪を後ろで束ね、庶民服に近い簡素な衣服を着て色白の肌に、加えて整った顔の青年だ。
私の記憶では、クリスティーナ様はダリル殿下とは確か護衛は『女性にします』と約束らしきものをしていたはず。護衛は動きやすい服装だったし、何処から見ても『男』である。
「ふふふ、驚いているわね。今日の護衛はこれでも女性なのよ。」
「…………ええええ!?」
私は一拍置いて驚いた。クリスティーナ様が、一瞬何を言っているのか理解できず反応が遅れたのだ。近くで見入れば、女性だと思えなく無いかも。
「ご令嬢、ビアンカと申します」
ビアンカと名乗る男性、いや男装をした女性は私の前で跪き、手を取ると手の甲に口づけを落とす。
勿論、実際には落とした真似をしていたのだけれど、全く自然でかつ優雅な動作だった。そのためか私はこの上なく、もの凄く丁寧な扱いをされた気分で、顔がぽっぽ、ぽっぽ、と熱くなり、自分で見なくとも頬が赤くなっているのが分かった。
「あら? これはどういう事かしら?」
顔が赤くなった私を見てクリスティーナ様は驚いていた。
驚くのも無理は無い。異性から本気の告白ではなくとも『好きだ』と言われて顔を青くした私だ。クリスティーナ様は、私が依然と同じように顔面蒼白になると思っていたのだろう。
「可笑しなこともあるものね。もしかして、レミリア様はそっち系?」
そっち系? ってそれはもしかして私、男性に興味がないと思われてる?
前にもそんな事を言われた記憶が……あれは、メイナード殿下だったかしら。あまり思い出したくない名前と顔を思い出してしまった。
忘れよう! 忘れましょう!! 心の中で呟く。
「私だって、恋愛対象は男の人ですよ」
「あら? そうなの? どうしてわかるのよ。まだ本気の恋なんてしたことないでしょう?」
クリスティーナ様に言われて、何も言い返せない。確かに恋をしたことがない……。
え? もしかして、私って男性に興味がない!?
そんな事はないと思いたいけれど、段々自信が無くなってきた。
「レミリア様、これからは男性を意識してそういう目で見られるのも良いかもしれませんね。さあ、この話は後にして! レミリア様、どこか行きたいところがありますか?」
「はい! 眼鏡を買いたいのです」
「眼鏡?」
特に視力が悪いわけでもない。けれど、カノン様の眼鏡を掛けているのを見たら、自分も掛けてみたいなと思ってしまった。度の入っていない伊達メガネがほしい。
「カノン様の眼鏡姿が可愛くて素敵なので、私も掛けてみたくなったの」
「ふふふ、そういう事なら眼鏡屋さんに行ってみましょうか?」
「はい……」
クリスティーナ様と二人で並んで、一歩下がった後ろにビアンカさんが付いてくる。後ろから跡を付けれらているようで何だか落ち着かない。ちらりとビアンカさんの方を見ると、精悍な目つきだけれど、目が合うと素敵な笑みを浮かべてくれる。
「クリスティーナ様。せっかくなので、ビアンカ様も一緒に並んで歩きたいわ」
「ふふふ。レミリア様はビアンカの事を気に入ったようね」
「気に入ったというより、ビアンカ様も女性なら一緒に女子同士の会話に参加していただきたいです」
私がそう言うとビアンカさんは目を細めて微笑む。
「レミリア様。お気遣いありがとうございます。それでは私の事を『ビアンカ』と呼んでいただけないでしょうか?」
「はい!」
それから、三人で眼鏡屋に行き、眼鏡フレームを選んだ。色違いや少し形の違うもの、種類が豊富で見ているだけで楽しい。試しにかけてみたりして三人で笑いながら選ぶ。私は細めのフレームで目全体がすっぽり入るぐらいのフロントに丸みのある形状のものにした。レンズは特殊効果されたものを入れてもらった。
少し割高だったけれど、これが面白い事に眼鏡を掛けていると、レンズは透明なのに相手からは違う色の瞳に見えるという。私は紫の瞳がルビーのように赤く見えるというものを選んだ。実際かけてみると、不思議な事に鏡越しでも本当に赤に見える。
「雰囲気が変わっていいかもしれないわ」
私の顔を見ながらクリスティーナ様が言うと、ビアンカさんも頷く。
どうして色が変わって見えるのか店主に聞いたけれど、企業秘密だとか。
それはさておき、私は早速、購入した眼鏡を掛け三人で街を繰り出す。食べ物や小物を売っている屋台を見て回ったりと楽しんでいた。
噴水のある公園の所では、丁度小腹も空いてきたのもあってか、甘い匂いに誘われた。
チュロスの屋台だ。三人で顔を見合わせ、「いきましょう」とクリスティーナ様が言う。
屋台には、ココア、シナモン、ストロベリー等の種類豊富なチュロスが並べてあった。三人で好きな味を買う。私はストロベリー味を購入した。お店の人から手渡されたチュロスはほんわりとまだ温かかった。
公園のベンチにクリスティーナ様と二人で座る。ビアンカさんにも一緒に座ろうと誘ったのだけれど、彼女は護衛に来ているので、座らないと言って立ったままチュロスをかじっていた。傍から見て彼女は『男』に見えるので立ったまま食べていても絵になる。絵になるどころか目の保養にもなった。それは私だけでなく、街中を歩いていた女性たちも同じだったようで、皆こちらをチラチラと見ている。
チュロスを食べ終わる頃、ある少年に声を掛けられた。
「あ、あの……」
「……っ!!」
急に声をかけられ、ビアンカさんもとっさに私たちの前に出た。
しかし、その少年は身に覚えのある少年だった。少し頬がこけ、疲れが見える目をしていた。そして以前より痩せたような感じだ。それよりも何故、彼がここにいるのだろうか、と驚いた。私にとっては、会いたくない人だ。
少年は……私の元婚約者、クリフ・ルピナスだった。自分の顔が段々と青褪めていくのが分かる。
彼は、私がエミーリアだと気付いたかもしれない。それで声を掛けてきた、いやそんなことがあるはずがない。今の私は髪色が違う。そして、先程購入した眼鏡のお陰で瞳が赤色に見える。何より彼から婚約破棄をしたのだ。今更、私に用はないはず。
「あ、す、すみません。なにもしないから」
剣を下げた護衛が私たちの前に出てきたので、クリフ様は驚いているようだった。彼は少し気弱な声で、私たちに話しかけてきた。以前のクリフ様とは思えない、丁寧な口調だった。
「ちょっとお尋ねしたいことがあって……捜している子と同じような年代に見えたので、訊きたい事があって。綺麗な黒髪で綺麗な紫色の瞳の女の子をご存知じゃありませんか?」
えっ? まさかのまさか? 私を捜しているの?
いやいやそんなはずはない。きっと私に似た子なんだろう。
うん、そうだ。きっとそうだ。
「いいえ、知らないわ」
クリスティーナ様は怪訝な面持ちで答えた。
「そちらの令嬢もご存知じゃないですか?」
クリフ様は私の方を見ていう。
知らない、と声に出そうとしたが、驚きの余り声が出ない。私は慌てて首を横に振った。
「そう……何処にいるのだろう……」
クリフ様は肩を落とし物凄く残念そうな表情を見せた。
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次回更新は7月16日0時10分頃の更新予定をしております。
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