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婚約破棄!? 心の中で大喜びしますわ!  作者: 風月 雫
第2章

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第42話 似た光景

いつも読んでくださってありがとうございます。

拙作ですが、よろしくお願いします(#^.^#)

 今朝は少し肌寒く感じる日だった。

 カノン様とクリスティーナ様と一緒に寮から、楽しく会話をしながら学院に向かっていると、途中で次から次へと男子生徒から挨拶を交わされる。皆も寒いのか、少し顔が赤らんでいた。


「おはようございます。レミリア嬢」

「あ、おはようございます」

「おはようございます。レミリア様」

「おはようございます」

「お、おおおおはようございます! ブロッサム嬢!」

「お、おおはようございます」


 此処にいるのは、私だけじゃないのよ? カノン様もクリスティーナ様もいるのに、どうして私ばかり挨拶してくるのかしら?


 私は頭に『?』を浮かべていると、カノン様が、ふふふ、と楽しげに言う。


「レミリア様、昨日『婚約破棄されましたの!!』て叫ぶように言っていたからですね」

「へ?」

「そう、あれが効いていますわよね。あれでは、『今、私フリーなんですのよ!!』っと宣言しているのと一緒ですわ」


 クリスティーナ様もカノン様と同様に楽し気にクスクスと笑って言う。


「へ?」

 

 あれはクリスティーナ様の言うそんな意味で言ったわけではない。婚約破棄された令嬢は、傷物、変わり者のように見られると思って言ったはずなのに。どうして、『今、私フリーなんですのよ!!』となるのかしら。


 クリスティーナ様は挨拶してきた何人かの男子生徒をすれ違うたび、彼らの顔を見ていた。


「皆、なんて初心なのかしら。顔を赤らめて挨拶するなんて」

「へ? クリスティーナ様。皆様は寒くて顔を赤らめているんじゃないの? どうして初心なのですか?」


 ダメだわ、これは重度の恋愛音痴ね、とクリスティーナ様は呆れ交じりの溜息を吐き呟く。


「皆様は、レミリア様とお近づきになりたくて、顔を赤らめて挨拶しているのよ。それに昨日のカフェでのバラ事件。あれも皆様が知っているようですわ」

「ああ、それは私も聞きました。すごく噂になっていますよ。レミリア様が年下の男子生徒から赤いバラを1本受け取ったって」


 クリスティーナ様の言うバラ事件に対してカノン様がその噂について興奮気味で言った。私は眩暈がして倒れそうになる。まさか、あの『婚約破棄された』宣言から『バラ事件』で、たった1日でどうしてこのようになるのか、誰か教えてほしいわ。


「これは、早くそれなりのいい人を見つけないと、ずっとこのままよ」

「ええ、本当にそうですわね。クリスティーナ様」

「これを機にダリル殿下と婚約されてはどう? 皆様はきっと近寄らなくなりますわよ」

「はあ!?」


 クリスティーナ様の提案に私が淑女らしからぬ声を張り上げると、口を彼女の手で押さえられる。


「レミリア様、その張り上げる声、気を付けてくださいませ。淑女はそんな声は出しません」

「…………ゴメンナサイ」


 私は暫くは婚約の話はいらないと思っている。なんなら、ずっといらない。

 ずっしりと重たい私の気持ちとは裏腹に、私たちは学院の玄関に到着してしまった。

 クラスが違うカノン様と別れ、私は重い足取りで自分たちの教室に行く。教室に来るなり私は、以前に似た光景を目にし立ち止まった。それは、私の机の上には大量の贈り物や手紙が置かれていたのである。そして、その傍にはダリル殿下が立ち尽くしていた。


「あら、凄い事になっているわね」


 クリスティーナ様は楽し気な表情を浮かべ、スタスタと先に教室に入っていって行く。


「ダリル殿下、おはようございます」

「ああ、クリスティーナ嬢、お、おはよう」


 クリスティーナ様は教室へ入ると、茫然と立ち尽くしているダリル殿下と挨拶を交わしているが、ダリル殿下は少し狼狽えているように見えた。私は自分の席に行かなければならないのに、足が動こうとしない。教室の入口で立ったままでいた。


「おはよう、ブロッサム嬢。あれは、何?」

「おはようございます……エリク先生」


 後ろからエリク先生が声をかけてきた。


「あそこは、ブロッサム嬢の席では?」

「はい、そうです……」

「あれは……ははは……1日で、どうしてああなるのかな? バラ事件といい……」


 エリク先生は一笑した。昨日の放課後の出来事がすでに先生の耳に入っている事に驚いた。


「すみません」


 エリク先生ならきっと、私がクリフから婚約破棄された後の事も知っているはず。そう思うと、恥ずかしい。


 穴があったら入りたい……そんな気分だわ。


 「ラルスが知ったら、飛んでくるな」

 

 ああ、先生言わないで下さい!! 兄には言わないで!! と心の中で叫んだ。


 あの兄なら、直ぐにでも飛んでくる。何なら父も一緒に飛んでやってきそうだ。自慢の家族だけれど、私に過保護すぎる。絶対大騒ぎになるに違いない。もう目に見えてわかる。


「先生……言わないで……」

「俺も報告の義務があるんだけどなあ? ……顔が青いぞ。大丈夫か?」


 涙目になりながら私は先生に「兄には言わないで」と訴える。

 

「報告しないといけない案件だが……まあ、見なかった事にしておくよ。まあ、頑張って」


 目で訴えている私を見て先生は、そうい言って私の頭をポンポンと軽く叩いて行った。

 学院にエリク先生がいてくれることには心強い。しかし、何もかも兄に報告されるのは流石に嫌と言うより避けたい。


 私が席に行くと、クリスティーナ様がいつの間にか段ボールを持って来て、手際よく慣れた手つきで、その中に贈り物を入れて片付けてくれていた。


「レ、レミリア嬢……俺は非常に驚いているんだが……」


 ダリル殿下が私に向かって唖然として言う。分るわ、私も唖然としたもの。でも、彼までが唖然としている意味が分からない。


「これは、どうしたらいいのか……」とダリル殿下は呟く。


「殿下、どうなさいますか? これを贈った者たちを裏で手を回す気ですか? 大変ですよ、一人、一人に警告していくのは」


 後ろに控えていたアルト様が、ニヤニヤしながら大量にある贈り物を見て、楽しそうに物騒な事を言っていた。


 裏で手を回すって何? 警告って?


「皆で渡せば怖くない……って感じですわよね。送り主さんたちも考えたようね。ダリル殿下も一人一人に手を回すなんて女々しい事なんて出来ませんものね。ふふふ」

「チェッ、この状況をクリスティーナ嬢とアルトは楽しんでるのだろう?」


 だから、手を回すって何? 女々しい事って何?


 ああ、なんだか胃がキリキリとして来たわ。期待していた私の自由な静かな留学生活は何処いづこに行ってしまったの!?


「レミリア様、お可哀そうに……」


 哀れな表情で呟くカノン様。その横で彼女の頭を優しく撫でるアルト様。


「気晴らしに今度の休日は、街に出かけましょう!!」


 クリスティーナ様が提案してくれた。

 確かに街にも行きたい。いろんなものを見てみたい。


「楽しみですわ。クリスティーナ様。ぜひ!」

「俺も一緒に……」

「却下ですわ!! 女子会に男性はいりませんわ。邪魔しないでくださいませ」


 クリスティーナ様は優雅に優しくダリル殿下に向かって言っているのにも関わらず、強気のオーラが出ているのを感じる。流石はダリル殿下の婚約者候補だわ。


「いや危ないだろう!」

「私の護衛も連れて行きますので、ご心配いりませんわ」

「それは、男か!?」


 ダリル殿下の言葉に、はあ、とクリスティーナ様が深い溜息をついた。そして何故か彼女は哀れむような瞳で私を見る。


「普通は護衛と言えば男性が多いはずなのに、そこは『男か!?』と聞くのですね。分りました。女性の護衛にしますので、付いてこないでくださいませ」


 そして、私とクリスティーナ様は次の休日は一緒に出掛けることになった。カノン様も一緒に行きたいと言っていたけれど、アルト様が「俺のデートよりそっちを優先するんだ……」と沈んだ表情をされ、カノン様はアルト様とデートすることになった。普通の婚約者という言い方は可笑しいのかもしれないが、ごく一般的な婚約者はこんな感じなのだろうか。アルト様は変な執着が見られるような気がした。


 もしかすると、アルト様は物凄く面倒くさい男なのではないのかしら……


最後まで読んでくださってありがとうございます。

もし面白いと感じていただけたなら、応援やブックマーク、評価などいただけましたら励みになります。

次回更新は7月13日0時10分頃の更新予定をしております。

また読んでいただけると嬉しいです。

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