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婚約破棄!? 心の中で大喜びしますわ!  作者: 風月 雫
第1章

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第36話 【side ルッツ】 密かな想い(2)

いつも読んでくださってありがとうございます。

拙作ですが、よろしくお願いします(#^.^#)

 エミーリア嬢がクリフのあとを追いかけたのか?

 それともクリフが彼女のあとを追いかけたのか?


 エミーリア嬢がクリフを追いかけたとは思いたくない。そんなはずがない。


 可能性があるとしたら、クリフがエミーリア嬢を追いかける方だ。だけど、あのクリフが彼女を追いかけるのかどうかだ。

 私が今まで見てきたクリフの態度では到底考えられない。

 卒業パーティの前半まではキーラと一緒にいて、後半は二人は別行動をしていた。何かあったとすれば、その卒業パーティーの最中だ。キーラの様子を見てくるか。


 キーラ・バルト子爵令嬢の家に様子を見に行くと、丁度、家から出てくる所だった。しかし、別の男を連れて出てきた。どこかの侯爵令息だった。それもベッタリと腕をからめ、くっ付いている。あの調子だと、クリフとは別れたようだ。あんなに派手に皆んなの前で婚約破棄を言ったのに、まさかクリフは、エミーリア嬢と復縁を求めているという事なのか。

 そう思うと嫌な感情が沸き上がってきた。イライラとそれと同時に、チクチクと胸が痛み、次第に自分の鼓動が早くなるのが分かった。


 落ち着け……。

 落ち着け……。


 まだ可能性があるというだけの考えだ。それにまだエミーリア嬢がハンシェミント国に行ったかどうかも分からない。大丈夫だ。


 そう自分に言い聞かせ、小刻みに軽く息を吸って吐く。徐々に深い息をし、呼吸を整えた。脳に酸素を送り込むように鼻から息を吸って大きく深呼吸をし、気持ちを落ち着かせた。


 ハンシェミント国に……そこに行けば何か分かるかもしれない。クリフがそこに行った目的だけでも分かれば……この気持ちは安心し、落ち着くだろう。

 でも、そこにエミーリア嬢とクリフが一緒にいたら、私は……。


 立ち直れるだろうか、この想いをどうすれば良い?


 とにかく、先にメイナード殿下の所に戻らなければならない。早く戻り報告をしないといけないと、焦る気持ちになる。だけど、そんな想いと裏腹に地面に張り付いたように足が思うように動かない。

 私の心の中にどす黒い得体のしれない物がとぐろの様に渦巻いている。エミーリア嬢が、さっさとメイナード殿下を選んでくれてさえいれば、私はこんなどうしようもない想いを早く捨てられたかもしれないのに。




 私は何とか重く感じる足と心を動かし、王宮まで来た。メイナード殿下の部屋に行くと、彼は私を見るなり叫んだ


「ルッツ! どうしたんだ!? 顔色が悪いぞ!」


 私の顔を見るなり、メイナード殿下は私の側にに来た。


「あ、はい……大丈夫です。色々調べていて疲れたのかもしれません」


 メイナード殿下の部屋にある姿見鏡に自分の姿が写っていた。見るからに顔色が悪い。普段と変わらないよう心掛けていたつもりだったが、自分では気づかなかった。ごちゃごちゃと考えてしまったのかもしれない。今は、クリフの行動をメイナード殿下に報告しなければならない。


「メイナード殿下。クリフの件でしたが、キーラ・バルト子爵令嬢とは別れている可能性があります。令嬢は他の侯爵令息と一緒に居る所を目撃しました」


 メイナード殿下は驚いた様子だったが、黙って報告を聞いていた。私は報告を続けた。


「ルピナス家の使用人の話だと、クリフは卒業パーティーの二日後にハンシェミント国に行っております。それも急いで行かれたようです」

「ハンシェミント国?」

「はい。どのような理由で行ったかは使用人達も聞いていないそうです。なので、殿下のお許しを頂けるのなら、クリフの行動を確認して来ようと思います」


 メイナード殿下はきょとんとした顔をしていた。


「何故、そこまでしないといけない? クリフがハンシェミント国に行ったからと言って、ルッツがわざわざ見に行かなくてもいいのでは?」


 事情を知らない人なら、そう思っても仕方がない。この国に好きな子の元婚約者がいなくなったのなら、メイナード殿下にとってどちらか言えば嬉しいはず。今さら元婚約者の所在なんてどうでもいいだろう。だけど、この可能性を知っても同じ事が言えるのだろうか?


「エミーリア嬢もハンシェミント国に行ったかもしれないと言っても?」

「え……? どういうことだ?」


 エミーリア嬢の家の様子をメイナードに伝えた。彼女が家にいる雰囲気ではなかった。家にいない確率の方が高い。そして同じ時期にいなくなったクリフの事を考えると、私はその事が心に引っかかり、居ても経ってもいられない気持ちになる。それにきっと、ラルスにエミーリア嬢の所在を確認しても教えてくれないだろう。ならば、思い当たる場所に行くしかない。


「運が良ければ、会える」か、とメイナード殿下が呟いた。


「先日、リアの兄のラルスが言っていた言葉だ。リアに会いに来た卒業生には彼女に会わせなかった、と言っていたが、その後にそう言ったんだ。『運が良ければ会える』と。リアはハンシェミント国に行っていて、それをクリフが追いかけた? まさか……」


 メイナード殿下の顔色がどんどん土気色に変わる。

 エミーリア嬢とクリフが会っているかもしれないと想像したんだろう。私だってそんな想像したから顔色が悪かったのだから。

 ラルスがそのような言葉を言っていたのなら、その卒業生がエミーリアに会いに行った時点で、すでにハンシェミント国に出発しているはずだ。卒業式翌日にエミーリア嬢が出発し、その日に卒業生が訪問し、その後にメイナードが訪問。卒業生がクリフだった場合、二日後に家を出ている。その後に私が数日後にクリフが家にいないことに気が付いた。それから、エミーリアの家を数日見張った。と言う事は……クリフはすでに家を出てから一週間以上経っていると言う事になる。

 そう考えるとまた心臓が激しく鼓動を打つ。目の前にはメイナード殿下がいる。極力冷静を装わなければならない。自分の心に秘めている想いを気付かれてはならないのだ。


「メイナード殿下、私は殿下の側近で護衛も兼ねております。殿下の許可なしでは国を出ることが出来ません。お願いです。許可を出してください」


 この願いを受け入れてもらえないだろうか? 


 メイナード殿下は暫く目を瞑り黙ったままだった。そして軽く息を吐くと、「分かった」と言った。そして目を開ける。


「俺も一緒に行こう!!」

「はあ!?」


 私は素っ頓狂な声を張り上げた。何故、メイナード殿下まで一緒に来るのか分からない。来ないでくれ、と心の中で叫んだ。


「何故、殿下までが一緒に来られるのでしょうか?」


 私は平然とした表情で、そう言ったものの、本当は「来ないでくれ!」と心の中ではなく、声に出して叫びたかった。


 メイナード殿下は平然とした顔で「ダメか?」と私に訊く。


 いや、ダメとは言わないけれど、次男といえど一国の王子だ。一国の王子が他の国に行くとなると、それなりの手続きが必要になるはず。早くても一週間はかかる。すぐに出来るはずがない。


「国王と兄に伝えてくる」


 メイナード殿下は部屋から出て行こうとする。


「ちょっとお待ちください! そう簡単に王子が他の国に行けるわけないでしょう。手続きだって必要です。護衛だって」

「手続き何て後で良い。護衛だってルッツが居るじゃないか」


 そう言って、メイナード殿下は部屋を出て行った。


 私はメイナード殿下の出て行った扉を暫く見ていた。一瞬、メイナード殿下が一緒に行くと言った言葉にショックを受けた。

 どうにかして、彼を王宮に留めたいと思ってしまった。そしてあわよくば、エミーリア嬢と二人で、会えるのではないだろうかという気持ちを僅かに期待した。段々とそんな自分が嫌になってくる。



 何がこの気持ちに蓋をする……だ。可笑しい……。


 結局その後は、メイナード殿下は国王から手続きが終わるまではお忍びで行くことを条件にハンシェミント国に行く許可を貰ってきてしまった。


 これで良かったと思いたかったけれど、がっかりする自分もいた。


 私はメイナード殿下と一緒にハンシェミント国へ行くことになった。

最後まで読んでくださってありがとうございます。

もし面白いと感じていただけたなら、

応援やブックマーク、評価などいただけましたら励みになります。


ここで、第一章が終わりです。

第二章は、エミーリアの留学先の話になります。

次回更新は6月25日0時10分頃の更新予定をしております。

また読んでいただけると嬉しいです。



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