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婚約破棄!? 心の中で大喜びしますわ!  作者: 風月 雫
第1章

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第23話 兄の友人エリク先生

よろしくお願いします(#^.^#)

「なんだって!? 髪を染めるだって!?」


 兄は珍しく声を張り上げて驚いていた。


「はい。留学するときに染めることになりまして」

「留学するときに? 何故、染めるんだ?」

「向こうの王族の方々が私の容姿を知っているというので、偽名を使って留学することになって……」


 兄に両親と話をしたことを報告した。兄は偽名まで、と言って驚いていたけれど、「ああ、それで……」と理解してくれた。


「仕方が無いけど、もったいないなあ。綺麗な髪なのに」


 私の髪を手のひらに掬い、サラサラと流していく。

 兄も同じく漆黒の髪色だ。母の遺伝なんだろう。


「ふふふ、ありがとうございます。お兄様。でも、やっぱり自由でいたいので、向こうの王族の方に身元がバレてややこしい事になるのも嫌ですし、護衛とかもいらないかな? と思うのです」


 兄も「そうだね」と言ってくれた。けれど、その兄の表情がなんとなく考え込んだ表情に見えた。


「お兄様? どうかされましたか?」


「うん? あ、何でもないよ。治安は良い国だからね、滅多に危ない目に合うこともないだろう。それにあの母の事だ。何か他の理由もあるのかもしれない。それにしても何色がいいかなあ? エミーリアは肌が白いから何でも似合うと思うよ。うーん、あ、そうだ! ルシアみたいな色はどうだ? お揃いで良くないか? エミーリアにも似合うと思うぞ」


「そうね。シルバーブロンドだとこの瞳の色にも合いそうですね。楽しみです」


 兄の話に何か引っかかりがあるけれど、あまり考え込まないようにしよう。


「でも、エミーリア。このことはルシアやリリエラ嬢、ミナリー嬢以外には言わない方が良いと思うよ。どこで、情報が洩れるか分からないからね」

「はい、気を付けます。楽しい留学生活が待っているんですもの。気を引き締めなければなりませんね」




 翌日学園に行くと、早々にルシア様に中庭の人気のない所へ連れていかれた。


「お姉様、やっぱり行かれるのね?」


 ルシア様は周りに気を使い『留学』という言葉を抜いて話す。もうすでに兄からルシア様に伝わっていた。


「ねぇ、ルシア様。いつも思うのですが、昨日の今日ですよ。情報が早くないですか?」


 情報の入手が早すぎるルシア様をチラリと横目で見る。


「そ、そんなのどうでもいい事です」


 ルシア様は顔を赤らめてプイっと顔を横に向ける。兄とはいつもすぐに連絡を取り合っているのだろう。兄も私の事でまともに相談できるのはルシア様だけなのかもしれない。


「それより、お姉様」


 周りを確認して、耳元でルシア様は内緒話をする。


「お姉様、レグルス家のお義父様が私の父に大事な話があるそうで、今日、我が家にいらっしゃるのですが、何の話か心当たりありませんか? 私、もしかして……婚約解消させられるのかしら?」


 私は首を傾げた。


 兄とルシアの婚約解消? 


「はっ……」


 素っ頓狂な声が出そうなったところで、慌ててルシア様の手で口を塞がれた。

 ルシア様はまた周りを気にしながら、「お姉様、声をお気を付けてくださいませ」と耳元で慌てる。


 「でも、本当にそんな事になったらどうしましょう……」


 そしてルシア様は顔を青ざめて本気で心配しているようだった。


 いやいや、そんな事になったら兄が黙っていない……暴れ出すだろう!


 何かあれば、すぐにルシア様と連絡を取り合っている間柄なのに勝手に婚約解消にでもなれば、兄は何をしでかすか分からない。兄はルシア様にメロメロなんだから。


 「ルシア様、大丈夫ですわ。きっとそんな話ではないはずです」


 ルシア様の耳元でコソコソと話す。そして不安になっている彼女の背中を擦ってあげた。私はもしかして昨日の偽名の件なのかもしれないと、思いつつ確信が無いのでルシア様には話せないでいた。


 ルシア様を励ましていると、不意に後ろから声を掛けられる。


「レディ二人が人気のない所で親密に何コソコソしてるんだ? 何か妬けるなー。君たちって仲、良すぎじゃないか? リアはもしかしてそっち系?」


 不貞腐れるような声だった。そして私を愛称で呼ぶ人は一人しかいない。

 そして、そっち系って何? 


 私は振り向き、わざわざ敬称付きで名前を呼んだ。


「メイナード第二王子殿下……おはようございます」 

「おはよう……ございます」


 私が挨拶するとその後にルシア様も挨拶する。その様子を見たメイナード殿下は片眉を上げた。


「あれ? うれしいなあ。挨拶してくれるんだ。でも敬称付き呼びは嫌だな、此処は学園なんだし、俺とリアの仲だろ。昔みたいに『メイ』と呼んでくれたらうれしいな。『メイ』と呼んでほしい」


 メイナード殿下はにっこりと微笑みながらそう言った。


 ルシア様が私の横で肘をコツンコツンと当て、「お姉様、不味いですわ。周りを見てください」とヒソヒソと言う。

 私は、周りを見た。ここは学園の中庭だ。人気のない所で話していたが、人が集まってきている。皆、何事かとこちらを見ていた。


「ど、どうしましょう、ル、ルシア様……」

「すぐに、この場を離れましょう……」

「でも、どうやって……」


 メイナード殿下はまたコソコソ話をしにかかった私たちを見てまた不貞腐れる。


「だから、妬けるんだって言ってるだろう。俺、リアと話がしたいんだけど、ルシア嬢は先に教室に行っててくれないかな?」


 私はルシア様に向かってブルブルと首を振る。けれど、ルシア様もどうしていいものか悩んでいると、聞きなれた明るい声が聞こえてきた。


「お姉様ー! ルシア様ー!」


 ミナリー様だった。彼女は思いっきり走ってきたようで、はあはあ、と息を切らしながら叫んでいた。彼女は私たちの元に来ると息を整えながら、


「エリク先生がお二人をお呼びになっております。すぐに職員室に来てほしいそうです」


 エリク先生からの伝言を伝えてくれた。


「ミナリー様、だ、大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫です。先生をお待たせているので早く行ってください」

「ありがとうございます。お姉様、行きますわよ!」


 ミナリー様をその場に残し、ルシア様は私の手を引っ張っていく。周りの生徒たちも暫くその様子を見ていたけれど、また皆、歩き出していた。


 校舎の中の職員室へ向かう長い廊下を歩きながら私は、ミナリー様が気になっていた。


「ルシア様、ミナリー様は大丈夫でしょうか?」

「大丈夫ですわ、たぶん……」

「先生が呼んでいるのは本当でしょうか?」

「先生のお名前まで言っていたので多分本当だと思います。行ってみれば分ると思いますわ」


 ミナリー様が私たちをメイナード殿下から離そうとしての行動だったのかもしれない。でも本当に呼んでいるのかもしれない。


 私たちは急いで職員室の前まで来るとガラガラと扉が開き、「お、来たな」と背の高く肌はこんがりと日焼けをし、グレーの瞳をした先生の一人が私たちを見下ろしていた。


「え? 本当にエリク先生が私たちを呼んでいらっしゃったのですか?」

「あ、そうだけど」

「え? 一体何の用事でしょうか?」

「まあ、とりあえずこっちに来てくれ」


 エリク先生は職員室の奥にある小部屋に私たちを案内した。そこには、長方形の机が一つに、それを挟むように長椅子が2脚あった。


「ま、座ってくれ」


 私とルシア様は顔を見合わせ、言われるまま、一つの長椅子に二人で腰掛けるとエリク先生は向い側に書類を持って来て、もう一つの椅子に座った。私は何の話だろうと考えていると、先生の口から想像もしない言葉が出てきた。


「さて、何を話そうかな?」

「「え?」」


 私たちはその言葉が不思議だった。

 先生は何食わぬ顔で、書類を私たちに見せる。それは私たちが以前、授業の感想を書いた文だった。私たちはまた顔を見合わせる。


「ごめんな。急だったから、こんな物しか用意できなくて。ラルスから何かあったら頼むと言われていてね……まあ、こうやって何か紙を見ながら話していれば、何か用事があって話しているだろうって思われるだろ? 誰がどこで何を見ているか分からないからね。さっきは、ハミルトン嬢とバルティア嬢が連携して動いていたようだったよ、彼女達にも後でお礼を言うと良いよ」


「あ、ありがとうございます」


 耳に心地よい優しい口調で、私たちを呼んだ理由を話してくれた。

 兄の気遣いも有難いけれど、エリク先生の気遣いが素直に嬉しい。


「まあ、メイナードも悪気ないんだけど、ね。彼もちょっと強引な所があるからね。でもこんなやり方じゃ、レグルス嬢も警戒してしまうのに。少し怖いだろ?」


 もう少し普通に接してくれれば、学友として話も出来るのだけれど、どうしてもこちらが警戒するような話し方をするから、怖い。

 少しどころではありませんわ、と言いたかった。

最後まで読んでくださってありがとうございます。

もし面白いと感じていただけたなら、応援やブックマーク、評価などいただけましたら励みになります。

次回更新は、更新時間を変更して、5月17日0時10分頃の更新予定をしております。

また読んでいただけると嬉しいです。

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