第22話 継承権?
よろしくお願いします(#^.^#)
私は留学する決心をし、父の執務室で父と母と三人でその事について話していた。
「エミーリア、本当に良いのね? 留学するのね?」
「はい。決めました。卒業後にすぐハンシェミント国に行こうと思います。それで、お母様、手続きをお願いしたいのですが良いでしょうか?」
「もちろん良いわよ」
母の声はお淑やかなものだった。
いつもと変わらない穏やかな母の口調に私は安心し、手続きをお願いしたのはいいのだけれど、横に座っている父は、うーんと唸り、苦渋の色を浮かべていた。
やはり留学に関して反対なのかと不安になる。
「お父様…………お父様は留学に反対なのですか?」
「エミーリアの人生だ。反対はしたくない。だが、ハンシェミント国だけは……」
そう言うと父は母の顔を見た。母はキッと父の顔を睨む。
こ、怖い。お母様がまた豹変するのだろうかと心配になった。
どうやら、父はハンシェミント国には出来る事なら行かせたくなく、母は逆のようだった
「理由を聞いてもいいですか?」
「いや、こればかりはわしの口からは……」
ぼそりと呟く。父までもが兄と同じことを言っている。二人とも母の顔色を窺っているようだ。やっぱり母に関することなのだろう。本当に何を隠しているのだろうか。
「まあ、エミーリアも学園を卒業する歳になったのだから、教えても良い時期になったわと思うわ。ねえ、あなたもそう思うでしょう?」
母はにこやかに父に同意を求める。けれどこういう時の母は目が笑っていない。
「いや、教えてもいいのかどうか……ひぃ!」
父が戸惑っていると、母は脅しをかけるかのように一段と父を睨みつけた。母の後ろにメラメラと炎が見え、父も震え上がる。
お母様! こ、怖い! 怖いです!
一体この両親は、私に何を伝えようとしているのだろう。途轍もなく不安になってきた。聞かないという選択肢はないのだろうか。
「お母様……そのお話はどうしても私が聞かないといけない事でしょうか?」
父の様子を見ると、聞かなくてもいい事なら聞かない方が良いという考えになる。けれど、母はニコリと妖しく微笑む。
いや、そのも笑顔怖いです!!
父をもう一度見る。父は、諦めるかのように力なく首を横に振っていた。
それは、どう捉えたらいいのでしょうか。
私は観念して聞かないと後悔する気になるのではないかと段々とそんな風に思えてきた。なんだか胃がキリキリして穴が開きそうだと思いながら、決心をして居住まいを正す。
「お母様……は、話してください。この家では私だけが知らないのですよね?」
「ふふふ、そうね」と母は微笑む。
「本当に聞くのね?」
「え? 聞かなくてもいい事なら聞かない方が…………ひぃ!」
母がすぅっと真顔になった。
笑っても、真顔になっても、怖いです!!
「き、聞きます、聞きます!」
私は緊張のあまり無意識に息を止めた。
「私の母、あなたの母方祖母ね。ハンシェミント国の出身だったとこの間、教えたわよね。ちょっとした貴族だったってことも話したわよね」
はい、覚えておりますとも。父が『あれがちょっとした貴族だと?』と呟いておりましたよね。
「……覚えております」
母がこの上にない満面の笑みを浮かべる。何故かこめかみから汗が流れてきた。
「母は……王女だったのよ」
「…………」
「ハンシェミント国の王女だったのよ」
思考が追い付かない。無言で母の顔を見つめながら、頭の中で母の一言を反芻する。
「え……? はあああぁ!?」
暫しの沈黙から、思いっきり素っ頓狂な声を出してしまった。キッと母に睨まれたけれど、そんな事に構う余裕が無かった。
今、降って湧いたようなそんな大事な話を何故、今まで黙っていたのかと。
それに、王女ならば『ちょっとした貴族』ではなく、『王族』ですと突っ込みたい。
しかし冷静に考えてみれば祖母が王女だったからといって、これといって何か特別な事があるわけでもない。そう私は安易に考えた。
けれど……考えもしなかったことを母から告げられる。
「そして……だいぶ後ろになるけれど、一応貴女にも王位継承権があります。もちろん、ラルスにも」
「え……? はあああぁ!?」
また、お母様に睨まれる。だけど私の思考は本当にそれどころではなくなっていた。
王位……継承……権? 何それは? いや、知っているけれど……何故、私がそんなものを持っているのよ!
「ラルスが7番目、エミーリアが8番目になるのよ。ふふふ、素敵でしょ」
母はお手本ようなの笑みを浮かべる。
素敵でもなんでもないわ! どうしてそんな大事なことを黙っていたのよ! と叫びたい声を必死に堪え、私は心の中でさけぶ。
他国にいる私たちにまで、何故王位継承権があるのか、意味が解らない。
この王位継承権があるため、父は私にハンシェミント国の留学を反対しているのだろうと察した。
あっちに行けば、何かしらの反対する理由もあるのかもしれない。けれど、結局は7番目、8番目だ。これも冷静に考えれば、あってないようなもの。然程、気にすることでもないような気がしてきた。
大丈夫、大丈夫と私は自分に言い聞かせる。自分でも何が大丈夫なのかよく分からないけれど。
「エミーリア、そこで提案なんだが……」
父が母をちらりと見て様子を伺いながら、口を挟む。
「偽名を使って留学しないか?」
偽名を使って留学ということは、私の名前で留学することが、ハンシェミント国に分かると困るということだろうと考えた。
両親は何やら、まだ私に隠していることがありそうなそんな気がしてきた。私は疑いの目で父を見る。
「いや、一応王位継承権がある身だ。そのままだと、向こうの王家が『護衛を付けさせろ』と言ってくる…………かもしれない。だから、偽名で、出来たらその髪色も染めて違う色にして留学をしたらどうかと」
「髪まで染めるのですか?」
「向こうの王家もエミーリアの容姿をご存じだ」
どうやら父はハンシェミント国に私が留学するには身分を隠してほしいらしい。
確かに、何をするにしても護衛が付くのは迷惑だ。行動が制限されてしまうのも嫌だ。そうなったら留学もつまらないものになってしまう。
「せっかくの黒髪ですのに染めてしまうなんて」
自分と同じ色の黒髪を染めることに残念がる母だけれど、染めること自体、反対していないようだった。
偽名もこの国にある貴族の名前を借りた方が良いということとなり、父はあてがあるから任せなさいということでお願いした。偽名用の家名が整い次第、留学の手続きに入るということになった。
父と母との話し合いが終わった後、私は自分の部屋に戻り、ソファーに座りお茶を飲んで一息ついた。
まさか、祖母がハンシェミント国の王女だったとは露程も知らず。母のあの普段はおっとりとして穏やか性格や人に圧をかける時の表情は、血筋ではないだろうか、と思ってしまう。
「エミーリア? いる? 入ってもいいか」
扉の向こうで兄の声が聞こえた。
「はい、どうぞ」
兄は困惑したような表情で部屋に入ってきた。
私の向かい側のソファーにそっと腰かけた兄は、「ごめん」と俯いて呟いた。
「どうして、お兄様が謝るの?」
「祖母の事、聞いたんだろう。俺も学園卒業の時に聞いた。知っていたのに黙っててごめんな」
兄は申し訳ない表情をしていた。
兄の話では、両親は私たちがある程度分別が付く歳になってから話すということにしていたらしい。そして、私がハンシェミント国に留学をしたいという事で父と兄が慌てたという事だった。
「お兄様、もしかして私って疫病神?」
「え?」
兄は目を見開いて驚く。
「何故、そんな事を言うんだい?」
「だって最近、私の事でやっかいごとばかりじゃない?」
兄は私の横に座り直して、優しく頭をなでる。
「大丈夫だよ。誰もそんな事思っていないし、こんな可愛いい妹が疫病神なんて、そんなことがあるはずがない。父上も母上も俺もエミーリアの事が大切なんだから。そんな風に考えないで」
兄の優しい言葉が心に染みわたる。留学は私の我がままだ。けれど、なんだかんだと皆、私のために動いてくれる。もう感謝しかない。
「お兄様、ありがとうございます。いろんな事をたくさん学んできますね」
「そうだね。頑張ってね」
兄はそうやって私の頭をまた優しく撫でた。
「そうだわ、お兄様。私の髪を染めるとしたら何色が良いかしら?」
兄は目を見開いて驚いた。
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次回更新は5月14日22時頃の更新予定をしております。
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