漁師と海竜王4 眉唾な怪談
2話連続投稿の、2話目です前話からどうぞ。
人族の身分と、竜の序列は似て非なるものだ、竜にとって序列とは生まれ持った魔力量の差、身体の頑健さ、そして生きてきた年月と経験、誰もが認める品格、この全てで『序列』は決まる、強い親の卵からは確かに強い子が孵るが、竜王の卵だから孵った雛が必ず次の竜王になるとは限らない。
現に神竜王の継子は、血筋は近いが元々神竜王の右腕に成るべく選ばれた若竜、その後孵った神竜王の実子は今は地竜王として王達の一角を担っている。
だから彼らは、人族の身分の根拠が理解できない。
ましてや同じ種族の人間を家畜のように扱う奴隷制度は、もっと理解できない。
ただの噂話を信じて、よくぞ行動にまで移したものだと、暴走ぶりに呆れるが。
ダイムズに率いられた自警団に、拠点になったレストラン(……)に踏み込まれるまでは、問題の老貴族は隠密に行動していたらしい。
まず、ヨルド市の裏社会の顔役の元に、不審なよそ者が海の民の奴隷を買い付けに来た。
「この顔役には、けんもほろろに断られたそうです。」
「儲け話しどころか、道連れで丸裸になりますからな。」
この国では奴隷は違法だ、6代前の国王が即位してから、奴隷商人は無茶苦茶な方法で国内から駆逐された。
国王その人の『金が無ければ奴隷は買えないだろう』とのお言葉で、売買しただけで双方財産没収(法令発布直後は、国庫が大変潤った)。
加えて誘拐を『仕入れ』の手段にしたら20年以上の懲役刑。
貧しい者なら家族の為に自分の身を売りたい者もいるだろうと思いきや、このヨルド市に互助会が発足して以来、もっと言えば魚と”真珠“の養殖を始めてから、人族も海の民も区別無しに市はいつでも好景気で人手不足、海中作業の主力は当然海の民だ、真珠を狙った犯罪に巻き込まれる事も度々遇ったので、領主コーラデス伯爵の命令で、人族よりも手厚く保護されていた。
金で『穏便』に解決するならばと、もっと怪しげな輩に話を持ち掛けた挙げ句、足元を見られたよそ者は騙されて手付金だけとはいえ、詐欺の被害に遭ったのだ。
「同情は、まったくしないけれどね。」
女将さんの言葉に全員が頷いた。
時期を同じくして、ガラの悪い連中が多数ヨルド市に入り込み、海の民の娘達に身ではなく『肉』を売らないかと持ち掛けた、これを知った自警団の連中が、関係各所へ注意を呼びかけていた。
「どんなに金を積まれても、戦闘職でも無い若い娘が、自分から身体に傷跡を残したがる訳が無いじゃろうに、何故若い娘なんだ?」
『人魚』であれば男でも、いっそ老い先短い年寄りでも良かった筈だ。
「流れていた噂がなかなか内容が細かくて、『うら若い乙女』、『体質に合わなければ凄惨な死に方をする猛毒』とか、他にも『取り出した直後の心臓を……』とまあ、向こうの創作小説ではありきたりネタなんですがなぁ。」
うん、全部漫画やホラー小説によくあったな、後半祟られて死ぬより恐ろしい目に遭うんだが、酒場で話した奴は怪談話しで場を盛り上げていただけだったのかもしれない、最後に『この話はフィクションです』と、断りを入れろよ。
「いろいろ手を回しても、希望の人魚が手に入らないので結局自分で調達を実行したのね?呆れて物が言えないわ。」
その老貴族の方がよっぽど妖怪ジジイだが、ダイムズは互助会会長として、転生者のしでかした不始末の責任を取らなければいけなかった訳だ。




