漁師と海竜王3 八百比丘尼伝承
説明ばっかりです。
当然の事だが知性ある生き物でも竜と人族は別の生き物、ドラゴン番の本分と言えばそれまでなんだが、彼らが、人の常識を知らないのを、フォローをするのが自分の仕事というのはやや理不尽だ。
その場に居合わせたのは偶然だった、最初はよくある『お母さんはお父さんのどこが好きで結婚したの?』的な質問から。
どう話がつながってか、女将さんから同じような本音が零れた。
「まあ、ではそれを考えればこんなに長い間、お父様がお母様に見捨てられなかったのは、いっそ不思議ですわね。」
父親の隣に座って、あどけない声で四才児がしみじみと言った。
父親は無言で娘を見下ろし、母親は爆笑し、その場に居合わせた叔父達は店から逃げ出した。
離れた席にいたドレイクは、冷や汗をかきながら全力で、聞こえていない振りを貫いた。
☆ ☆ ☆
「義姉さん、アレス隊長、トラブィス太守とアラマド会長がいらしゃいました。」
マリウスに案内されて、人目につかないように勝手口から二人が入って来た。
連絡を回して、それぞれの立場から事実確認をしてもらっていた訳だが、さすがに二人とも情報が早い。
持ち寄った情報を確認していると、俺ですら馴染みの無い単語が出てきた。
「それで、この『ヤオビクニ』というのは、一体何ですかな?」
専らアラマド会長がトラブィス太守の質問に丁寧に説明する。
「向こうでもかなり古い『不老不死』伝承です、『ヤオ』は数の800又はとても沢山と言う意味で、『ビクニ』はこちらで言えば女性神官のことです。
『人魚』の肉を知らずに食べてしまった為に、周囲と同じように老いる事が出来なくなり、家族達に取り遺され故郷’を離れ人々に奉仕しながら800年間さ迷い歩き、やっと死ぬことが出来た女性です。」
八百比丘尼又は白比丘尼、妖怪漫画で読んだことがあったような……うろ覚えだ。
眉唾どころか、酒の肴のほら話だったらしいんだが、転生者達の周囲で聞き耳を立てている連中は多い。
金になりそうな知識やアイデアを拾って、一山当ててやろうと近くを常にうろついている、どこのどいつか知らないが、喋った奴が不用意だったのは否めない。
「私が覚えているこの話の『人魚』は、人の顔をした魚又は手足の生えた魚です、海の民のような水棲種族のことではありません。
しかし今回の騒ぎを起こした貴族は、『人魚の肉が不老不死の妙薬』だと言う、この話を真に受けて『ダイムズを処刑されたくなければ、逃がした人魚の代わりを差し出せ』と要求しているそうです。」
俺達の世代(死んだ頃)で『人魚』と言えば、海の泡になった童話のヒロインが一番有名だ、多分噂の発生源からそのイメージで発信されていたのだろう、だから混同した原因は分かる。
「なんと浅ましい、恥の上塗りをどこまで重ねる気だ、情けない。それで君達は要求に応えるつもりはあるのかね?」
加害者貴族を罵る太守に、アラマドがキッパリと答える。
「全くありませんな、ダイムズ本人もそれだけは従うなと、言い置いて代官府へ出向いて行ったそうです。」
無理が通れば道理が引っ込む、まずは道理を正しい位置に戻すとしよう。




