王弟殿下を捜す?
「アウトゥール殿下が逃げたらしい」
竜術の授業中、グレイス様が突然言った。
アウトゥール殿下とは、末の王弟殿下のことだ。
グレイス様は、その王弟殿下のお目付け役を任せているらしく、今までにも城から逃げ出した殿下を捜しに行くことは多かった。
今度もグレイス様が出かけて行って、私は一人で勉強するのだと思っていた。
ところが、今回は私も一緒に来るように言われて驚いた。グレイス様と外出するのは、セラージュ湖に行く以外では初めてだ。
王弟殿下を追いかけるだけだけど、弟子としての初仕事だ。足手まといにならないように頑張ろうと思った。
私たちと一緒に行くのは、タイゼンさんという竜騎士だ。もちろんパートナーの竜のクルトも一緒だ。
キュアーも連れて行くように言われて、私はキュアーに離れないように言い聞かせた。セラージュ湖よりも遠くに行くので、迷子になったら大変だ。
「キューちゃん、もしも迷子になったら、お城に向かって飛ぶんだよ」
「キュ!」
キュアーとはすぐに同調できるようになっていたので、離れていても居場所は分かる。
けれど、あまり遠く離れたことはないので、どのくらいの距離まで感知できるのかは分からない。
同調できないくらいまで離れてしまったら、術式を編んで捜すしかない。でも、その術式を上手く編めるか不安だった。
(でも、いざとなったらグレイス様にやってもらうこともできるし)
そう思うと安心できた。




