9 決心
溢れんばかりの思いをお互い感じながら、今は隼人の運転する車に乗っている。
「まだ時間早いけど、家にこない?」
まだ気持ちがフワフワしている私に声をかける。昨夜の辛く悲しい思いが嘘のようで、
今の状況が信じられない。
頷くと、繋いでいる手をギュッと握ってくる。私も彼の体温を感じながら握り返した。
部屋に入ったとたん、隼人に抱きしめられた。
最初は優しくキスをしてきたのが、だんだん深くなり足に力が入らなくなる。
「俺、もうだめ…。」
不意に身体が浮く。
「隼人?」
すでにお姫様だっこされていて、つれて行かれたのは寝室…。
ベッドにそっと降ろされ、それからは、お互いの熱を感じながら激しく求めあった。
それは、まるで今までの時間を埋めるように…。
カーテンから差し込む朝日…。
隣で私をしっかり抱えて眠っている隼人がいる。
普段は、隙のないかっこいい彼も、寝顔はあどけない・・。
寝顔を見ながら昨日からのことを思い出す。
「夢じゃないよね…。」
と呟く・・と、
「夢じゃないよ。」
と声がする。
「おはよ。」
私を抱きしめながら、額にキスをおとす。
「おはよう。起きてたのね。」
「さっき目が覚めてケイの寝顔みてた。」
恥ずかしくて顔を隠す。
「こうやって腕の中に居てくれることが嬉しいと思ってさ。」
「私も、嬉しい。。」
「ケイ…愛してるよ。もう誰にも渡さない。覚悟してて?俺、わりと独占力強くて、すっごいヤキモチ妬きだから。」
「隼人が?信じられない。きっと私の方が、ヤキモチ妬くことが多いわね。これから。」
「なんで?俺、会社のやつらにも嫉妬するし、今までもしてたし。」
「…さりげなく爆弾発言ね。今までもしてたの?」
「してたよ。ケイと話す男の奴らに。だから特に男相手には容赦なかったかも…。」
「え???私がらみだったの。『氷のプリンス』は。」
「そう。その『氷のプリンス』はやめて。」
ほんとうに嫌そうな顔をする。
「じゃあ『氷』はとってあげる。でも『プリンス』は、私にとっても隼人は王子様だから間違ってないわ。今までも、会社でヤキモチ妬いていたのは私もそうだし。」
隼人の抱きしめる力が強くなる。
「お互い、近くに居すぎて気がつかなかったのね。」
「これからは更に近くなるよ。」
隼人の顔をみると、柔らかい優しい笑顔で、意味深なことを言う。
「会社もそうだけど、旅にでれば、いつも一緒だろ?」
現実に頭が戻される。
「隼人、本当にsperanza[スペランツァ]に行くの?私は月曜日辞めるように話するつもりだけど。」
「行くよ。決心は変わらないし俺も辞めるよ。急で引き継ぎもやらなきゃいけないから、会社には言っておいた方がいい。一緒に話いくか?」
「う~~ん。」
「どうした?」
「会社というより、会社の女性陣の反応が怖い…。あの視線が私に突き刺さりそう。」
「なにそれ。月曜日には俺ら付き合ってるの公表するつもりだし。男除けに。」
「え?」
「言っただろ?俺独占力強いって。他の奴らに絡んで欲しくないから。」
普段見せたことがない、意外な反応に、笑みが零れる。
「わかった。言うのは別々の方がいいと思うわ。お互い立場も違うし、それに。」
「それに?」
「二人で行ったら、いろいろ追求されるの目に見えてるし。」
隼人もクスクス笑いながら、
「そうだなぁ。そりゃ根掘り葉掘り聞かれるだろう。」
明日が怖い……。
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月曜日。
隼人が言った通り、私たちが付き合ってるのを公表してから、私の周辺の視線がいつもより厳しい。
それ以外に、私が男性の後輩と喋ったりしてると、別の視線を感じるのは気のせいではない…。
その後の後輩には、隼人は容赦なかった。
会社には、一身上の都合で辞めるということで、年明け1月末で辞めることになった。
隼人は引き継ぎの関係で、2月末に辞めることになったらしい。どういう話をしたかは聞いてない。
会社の方が、決まったので、週末の土曜日に、隼人と不動産屋に行くことにした。
一枚の張り紙を見たことによって、周りの環境が激変している。
運命なんてわからないし、この先これからどうなっていくのかなんてわからない。
それでも・・自分自身で決めたこと。私は後悔はしない。
部屋の窓から夜空を見上げる。空気が澄み、満天の星空が広がる。輝く星たちに、旅の無事を祈った。




