89 短期決戦
「やっぱり、こうなるのね」
splendoreで検査をし、新堂先生に治療されることが決まったと同時に、岸田さんの船ではなく、櫻井さんの船でsperanzaまで行くことになった。
検査の後、皆に注目されながら食事をしたが、私の食べる量を見て、
櫻井さんは、
「痩せるわけだ、前よりも食べる量がかなり減ってる」
と、眉間にシワを寄せ、
「大丈夫、これからは俺がついてるんだから」
と、クスクス笑う進藤先生。
隼人は、無表情で食事をしていた。
どうしたんだろう・・・?。
今は船に戻って、船内の部屋で隼人と2人でくつろいでる。
「もう国も公認みたいだし、櫻井さんも大丈夫なんだろう。進藤先生も乗ってきてるし・・・」
そういうと、隼人は私の腰を引き寄せ抱きしめ、強引に唇を重ねてきた。
余裕のない貪るような口づけ。
「ん・・・っ、うふぅぅ」
息も出来ない激しさの中、潤んだ瞳の隼人と目が合う。
「ごめん・・・今の俺は、余裕がないんだ」
「櫻井さんや進藤先生にはケイを渡さない」
ふと、身体が軽くなる。
隼人にいつの間にかお姫様抱っこをされている。
「ねぇ、櫻井さんや進藤先生って」
言い始めると、隼人の唇で塞がれた。
「これは男のカン。櫻井さんはわかっていたけど、進藤先生までとはね」
私を抱えたまま、隼人は足で寝室のドアを開けると、ベットにゆっくり下ろされ、隼人が私に覆いかぶさる。
「私はずっとずっと、隼人だけを愛してる」
「でも、隼人は不安なの?」
真っ直ぐ隼人の瞳を見つめる。
「ああ、わかっていてもどうしようもなく不安になる」
「隼人、その不安な気持ちも受けるから」
「ちゃんと私を抱いて・・・」
両手を伸ばし隼人の頬を包み込む。
実際、櫻井さんの存在が、私の心を揺さぶっているが、それを隼人に気づかれるわけにはいかない。
フッと口角を上げ、
「ケイは俺だけのだ」
隼人の右手が私の左の薬指にある指輪を触る。
「縛り付けて監禁しておきたいくらいだよ」
「縛り付けなくても大丈夫よ」
隼人の頬を包んだ手を引きよせ、私から唇を重ねた。
いつもと違うケイに驚くも
「ケイ、今夜は手加減しないから覚悟しとけ」
こういうケイは珍しい。
手加減なんてするつもりは最初から無い。
「うん・・・」
今までになく、激しく身体を重ね、喘ぐケイの身体じゅう、赤い花弁が咲く。
そして、最後はケイは疲れて眠ってしまった。
「無理しすぎたか・・・」
ケイにぶつけても仕方が無いのに。
溜め息をつき、俺の腕の中で眠っていることを確認すると、ケイの頭を撫で唇にキスをしベットを離れた。
リビングで1人、タバコを吸っていると電話が鳴った。
「はい」
「隼人か?」
電話の主は親父からだった。
「今話しても大丈夫か?」
「ああ、ケイも今寝たし大丈夫だ」
「そうか。ケイさんの状態あまり良くないみたいだな。さっき岸田から連絡もらったが」
検査結果がでて、進藤先生が岸田さんに詳しく説明してたな。
船もかわる手前、あたりまえか。
「ケイの脳の機能が一部死んでるって。命には今の所別状はない・・・」
とそこまで言うと、隼人の言葉が詰まる。
「親父、俺はどうすればいいんだろうか。近くにいてもぜんぜんケイを守りきれてない。脳も機能が戻らないんだよ」
初めて声を涙で震わせ、泣き言を言う息子の隼人に、優しく声をかける。
「お前は今、ケイさんの側から離れることができるのか?」
「俺が命懸けで愛してるんだ、できるわけないだろ」
「それなら、迷うことはないんじゃないか。ケイさんの側にいてあげればいいことだ」
「親父・・・」
「speranzaまでは、あとわずかだ。今の不安定なケイさんを支えられるのはお前だけだぞ」
「隼人は俺の息子だ。大丈夫、自信を持て」
「まぁ、隼人が不安になるのもわからんでもないがな。ケイさんの周りにいい男が揃い過ぎてる」
電話口でクスッと笑う声がする。
当たってるだけに、何も言えない・・・。
「そういえば、隼人を狙ってる奴らの居場所は突き止めたぞ」
「えっ?突き止めたって」
「うちの情報網は優秀だからな。アイツらの動く所なんてすぐわかる」
「だからこっちのことは、心配ないぞ。これからどうやって片付けてやろうかとワクワクしてるんだ」
親父の言葉に違う意味で、背中に汗が流れる。
穏やかに話してるようで、絶対笑ってない。
「俺の大事な息子と未来の娘に手を出したんだ。しっかり代償は払ってもらわんとな」
「あんな奴ら、1~2日で片付く。お前たちも、船にいないからちょうど良かった。乗ってたんじゃ作戦変えなきゃならなかったからな」
「終わったら連絡する。王子たちにはさっき話したから」
「ケイさんの近くにいてやれよ。じゃぁまたな」
親父の一方的な切り方に呆気に取られ、電話を握りしめぼーっとしてると、
「隼人?」
ドアを開け、ケイが起きてきた。
「寝てたんじゃなかったのか」
歩いてきたケイを抱きしめる。
「横にいなかったからびっくりして起きたの。今の電話は?」
「親父から。奴らの居場所突き止めたって」
「そうなんだ。私達船に居なくて良かったのかもね」
「ああ、1~2日で片付けるから心配するなって」
「お父さん 、隼人絡みだと容赦なかったよね、確か」
「俺だけじゃなく、ケイも絡んでるからな。例外なく今まで以上に容赦ないと思うぞ」
「岸田さん的には、早く片付けて親父に本業の仕事に戻って欲しいみたいだからちょうどいいだろ」
岸田さんの喜ぶ顔が目に浮かぶ。
親父と岸田さんが揃えば・・・、もう考えるのはやめよう。
「さて、寝るか」
「それともケイ、まだ足りなかった?」
腰にある隼人の手が、私の湿った下腹部に滑り込む。
「ううん、もういい」
首を横にふる。これ以上は身体がもたない。
「でも身体は正直だぞ」
隼人の指が、刺激になる。
「ケイは俺のだって、ゆっくり身体に覚えさせてやる」
次の停泊星まで、地球時間で2日・・・。




