87 精密検査
「あ、あの時の・・・」
隣にいる隼人も気がついたみたい。
「ケイ、彼をなぜ知ってるんだ?」
櫻井さんが怪訝な顔をしていたので、
「Albaで襲われた時に、助けて頂いたので」
「海唯どういうことだ」
櫻井さんが隣に立つ彼に説明を求める。
「Albaに1泊するつもりで寄った時に、ケイさんが目の前で二人組の怪しい奴に連れて行かれそうだったから助けただけ」
「その時には、もしかしたらもう一度逢えるかもって予感めいたことを思ったんだけど、実際に逢えて嬉しいよ」
それを聞いた途端、周りの空気の温度が下がったのは気のせいか。
「でもここまで来るのに、色々大変だったみたいだね」
彼の言葉に、私は頷く。
「改めて自己紹介。新堂 海唯です」
「新堂先生、宜しくお願いします」
「というわけで、早速ケイさんの診察に入っても良いでしょうか」
今までの柔らかな雰囲気だった表情が変わる。
プライベートから仕事モードか。
「ああ、頼む。終わったら報告してくれ」
と櫻井さん。
「じゃぁ、ケイさん部屋を移動しよう」
「はい」
「彼も一緒に来るかい?」
隼人に声が掛けると、
「もちろん、行きます」
新堂先生と私と隼人、数人のSPさんと部屋を後にした。
「あの時ケイを助けたのは、海唯だったんだな、驚いた」
部屋に残った櫻井さんと
「そのようですね、あいつなら一撃だったでしょう」
真さん。
「ケイから碧色の目って聞いたときにまさかとは思ったんだが。本人だったとは」
櫻井さんが大きな溜め息をついた。
何ともややこしいことになりそうだ・・・と、真さんは、ケイ達が出ていった扉を見つめた。
新堂先生に別の部屋、といって通されたけれど、ここは・・・・・・。
1歩部屋に入るとそこは、まるで別世界。
ここは病院か???という位、最新医療機器が揃っていた。
この建物はなんなのだろう。
お城かと思ったら、中には病院もどきがあるし。
「ここの部屋で手術もできるんだよ」
と、準備をしながら、さらっと教えてくれる新堂先生。
「さてと、ケイさん。一通り調べたいからこれに着替えて来てもらえるかな、そこに更衣室があるから」
病院着のようなものを渡され、着替えに行くことにした。
「隼人くん」
ケイが更衣室に入るのを確認すると
「はい」
「彼女の今の状態から、どこまで戻せるかわからないから最悪の事態は覚悟しておいて」
「最悪の事態?」
「そう、検査次第でこのままか良くなるか、それともこれ以上悪くなるかがわかるから」
「この状況になった事情を、木理谷から聞いてる。あの毒の影響力は計り知れない」
「新堂先生、真さんとのご関係って?」
木理谷と呼び捨てにしたのが引っかかる。
「ああ、あいつと病院関係で専門は違うが同期でね。よく知ってる」
多分それだけじゃないと、隼人は思ったが。それ以上のことは聞くのを辞めた。
いずれにしても、後でわかるだろうから。
「隼人くんは、ケイさんがこの先どうなっても手放すことはない?」
「もちろん、手放しません。ケイは俺が一生守るんですから」
何があったって、離れるつもりはない。
「それを聞いて安心したよ。まぁ周りにちょっとうるさいくらいのサポートがたくさんいるから大丈夫か」
クスクス笑う。
「新堂先生だったんですね、王室からの医師って。突然の再会に驚きました」
「そう。Albaの時は丁度出張中で帰り道だったんだよ」
「ケイさんは知らないんだよね?私が王室の関係者って」
「はい」
「この検査が終わってからきっと、彼女に色々と説明があるんじゃないかと思うよ」
「というと?」
「引き続き治療になると、speranza王室に関わるわけで、隠しようがないし」
「彼も多分、言う時がきてるんだと思う」
彼を指すのは、櫻井さん。
「カチャ」
話をしていると、扉が開く音が。
「お待たせしました」
着替えたケイが出てきた。
「お、似合うねぇ」
膝上の薄いピンク色のワンピースのよう。
色白のケイには似合っている・・・が。
病院着には到底見えないぞ。
「何だか恥ずかしいです」
着ているケイもモジモジしてる。
「検査はすぐ終わるからね、隼人くんそこの椅子でも座って待ってて」
そういうと、ケイの腕を引き奥の方に歩いて行った。
「最悪の事態か・・・参ったな」
隼人は椅子に深く座り込み頭を抱えた。
暫く無機質な医療機器が動く音を聞いていると、音が止み話し声が近づいてきた。
検査がどうやら終わったらしい。
結果はどうなんだろうか。
「隼人」
愛しい彼女の呼ぶ声。
「終わったか」
病院着のままこちらに歩いてきたケイを抱きしめ頬にキスをする。
ケイも腕を伸ばし抱きついてきた。
病院着の生地が薄くて、直に体温がわかる。
「すぐ結果がでるらしいの。櫻井さん達がいるさっきの部屋で話すよって新堂先生が言ってた」
そういうと、ケイが俺の胸に顔をすり寄せる。
「・・・どんな結果がでるんだろう。怖い」
気のせいか震えてるようだ。
「大丈夫だ。心配するな」
抱きしめる腕に力が入る。
ケイの不安げな瞳が俺を映す。
「どういう結果だろうと、俺がちゃんと傍にいる。万が一良くない結果だとしても、二人で一緒に乗り越えていけばいいじゃないか」
「隼人・・・」
ケイの頬に大粒の涙が流れるのを唇ですくい取り、
「お前を一人にはしない。必ず守るから」
顎に指を伝わせ、静かに唇を重ねた。




