85 splendore(スプレンドーレ)
「真、ケイの状況は?」
先程の、電話の話からだろう。
「話を聞いた限りでは、正直どこまで戻せるのか予測がつかないです。厳しいですね」
「そうだよな・・・」
大きなため息をつく。
ケイさんが、俺に言ってなかったと聞かされた症状が、疑いはあったけれど、思ったより酷い。
ご主人様と電話を代わり、すぐに本国へ連絡をし、医師がもうすでに出発している。
「いつ合流できる?」
表情は変えないが、苛立っているのが手に取るように解る。
近頃のご主人様は戦場と違い、ケイさんのことになると、途端に余裕がなくなる。
感情が見えるようになったのは、喜ばしいことではあるのだが。
「splendore【輝き】に着くのがわたし達の船は3時間後。本国からの医者は、1時間ほど早く着いている予定です」
「3時間後か・・・」
「本国でも、とてもケイさんのこと心配されていまして」
本当は、医師の派遣も軍内部のことなので、ご主人様の一存で動かせるのだが、後のことを考え報告はさせて頂いたのだ。
本国へ報告をすると、この先のことを考えて、プライベートの医師を送ると言われた、と 、ご主人様に伝えると、
「プライベートのか?」
一瞬ビックリされたが、
プライベートの医師。
軍ではなく王室が抱える国の最高クラスの医師。
普通ならそこまで関わることが無いはずだが、今回はご主人様が絡んでいる相手の方。
でも、その方が情報が漏れなくていい。
ケイさんの存在をこれ以上広げるわけにはいかない。
「確かに、その方がいいな」
ご主人様も、少し考え送られた意味を納得する。
すると、
「俺たちが星に降りるってことは、追手も今回も必ずsplendoreに来るだろ?」
一瞬、目を細めフッっと口角をあげ笑う。
男の自分でも惚れそうな、ドキッとするような表情をご主人様は時々するが。
これは何かたくらんでいる・・・。
「隼人のほうは、とりあえず親父さんたちに任せて、こっちはこっちのやり方で先に片付ける」
「奴らも懲りてないようだからな。二度とケイに関われないようにしてやる」
真は、そんなご主人様の目を見て、表情は変えなかったが、背中に冷たいものが流れた。
ケイさんのことで、tenerezzaもvulcanoも、ご主人様の激情に触れたようだね・・・。
俺はもちろん止める気などさらさらないが。
どうなることやら。
「splendore?」
「そうだ。そこにあと3時間ぐらいで着く。緊急で泊まるらしいぞ」
ケイを部屋に置き、真さんに、岸田さんへケイのこと伝えにきたら、既に事情を知っていた様子。
「さっき真さんから連絡があってな、今親父さんと話し終わった所だ」
「ケイさん、後遺症が酷いらしいな。隼人、気がついていたのか?」
隼人を別室へ誘い、話し出す。
「そうですね。食事の量が増えないのは凄く気になってましたが、本人に言うと気にすると思い、口にださなかったんです」
「でももっと早く、真さんに相談すべきでした」
がっくりと肩を落とす。
「まぁ自分を責めるな。お前が悪いわけじゃない。この先望みもある」
「えっ?」
顔を上げると、
「今、splendoreに向かって来てるのは、speranza王室お抱えの医者だ」
「はっ?」
speranza王室お抱えって・・・。
「国王直々手配されたんですか?」
「そうみたいだぞ」
声にならない。
てっきり、軍医だと思ってたから、驚いたなんてもんじゃない。
「隼人、その人達が来るということは、櫻井さんがケイさんのこと、本気なんじゃないか?」
岸田さんも真顔で隼人に尋ねる。
「多分・・・間違いないですね」
櫻井さんのケイに対する気持ちが、周りに溢れてるし、最近はそれですら隠そうとはしていない。
「最終的に選ぶのはケイですが」
「俺は、手放すつもりはないです」
「その気持ち、しっかり持てよ。ケイさん、今非常に不安定だ。何処でどう動くかわからないからな」
「降りれる準備しておけよ」
そう言うと 、隼人の頭をクシャっと撫で、部屋を出ていった。
「splendore?」
急いで部屋に帰ってきた隼人は、ケイを抱きしめ、わかる範囲で話をする。
医者は、真さんの知り合いということで。
本当のことは、まだ先にする。
いずれはわかることだが、今は言うわけにはいかない・・・。
「俺はずっとケイの傍にいる」
「うん」
抱きしめていた腕を解き、ケイの不安げな瞳を見つめる。
「どんな結果になっても、俺から離れるなよ。もちろん俺も離さないけどな」
ケイの頬に流れる涙を指でふく。
「ケイ、愛してる」
抱きしめ 唇を重ねた。




