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星の降る街に  作者: 霧島
第8章
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83 お父さんと初対面

「forestaか・・・」


ケイたちと別れ、船に乗ったとたん気持ちが沈む。


「近くにいないから不安でしょう?」

頭上から真の声。


「ああ、目の前からケイが居なくなっただけでな」


頭を抱え否定することなく答える櫻井に、真はもう驚くことがなくなった。


戦場で敵なしの彼も、一人の女性には全くかなわないようだ。


「思いは複雑ですね、ご主人様が女性関係で真剣に葛藤する姿、初めて見ましたよ」

周りに人がいないと、真も話し方が変わる。


「正直、自分でも驚いているんだ。こんな感情が自分自身にある事を」


過去に女性のことを思って悩み苦しむ・・・という経験はなく、付き合うにもすべて女性側からのアプローチで、自分から言ったこともなかったし、それ以前にそういうことも煩わしいと思っていたぐらいで、面倒な女性関係は兄に任せ、自分は戦地に赴いていた。


今は、自分の心を変えてしまったケイを心から、愛している。。


その気持ちに気がついたとしても、ケイの隣には隼人がいる。


この先、もし思いが叶わなかったとしても、ケイは近くにいて欲しいと思っている自分。


出るのは、ため息ばかり・・・。


「まずは、先に進みますか?」


「・・・そうだな」


目の前に広がる無数の星。


気持ちを切り替え、出発する頃には、いつもの櫻井に戻っていた。




「隼人、凄いね」

船内に足を踏み入れた瞬間から、ケイは、キョロキョロしながら、ちょっとした興奮状態。


俺自身は、幼いころからこの船には何回か乗っているので、物珍しさはないけれど、隣でケイのはしゃぎっぷりを見てるだけでも嬉しくなる。


「隼人、ケイさんおいで」

岸田さんが、手招きをする。


「荷物は後で、奥の部屋に置いてこればいいから」


岸田さんが、手元のボタンを押すと、船内の目の前の大きな画面に何やら映りだす。


「オヤジ・・・」

急に画面に映った人を見て、呆気にとられる隼人。


「えっ、隼人のお父さん?」

急なことで、どうすればいいのかわからなくて、隼人を見上げる。


隣で岸田さんが大笑いしている。


「サプライズだ。隼人の親父もケイさんと話がしたいって言ってたからな」



「ケイさん、初めまして。隼人の父です」


画面から優しい笑顔で、隼人がそのまま歳をとったような素敵なお父さんの話す声が聞こえる。


ここはちゃんと挨拶しておかないと。「初めまして。鳴沢ケイです」

引きつらないように笑顔で、頭を下げる。


「私たちの仕事に巻き込まれて、ケイさんが、大変な思いをしてきている事に、本当に申し訳ないと思っている。すまなかった」


「私は大丈夫ですから、どうか頭を上げて下さい」

お父さんに頭を下げられるなんてありえないこと。


「今は体調はどうだい?薬の方は抜けてきたかい?」


「はい、ありがとうございます。おかげさまで真さんの処置も早かったので、元気になってきました」


「あの人は薬のプロだからな、近くにいてくれてよかったよ。処置が遅かったらなんて考えたらゾッとする」


「でもケイさんが元気になってきて良かった。隼人、素敵な女性だな」


「もちろん。やっと手に入れたんだ」


「地球にいるんじゃ、ケイの命も危ないからと思って出てきたけれど、こんな事になるなんて思いもしなかったよ」

腕が伸びてきて、私の腰を引き寄せる。


「あはは、そうか。でも隼人、ちゃんとケイさんを捕まえて置かないと、何やら周りは強敵そうだからな、連れていかれるぞ」


「親父までそういうか・・・。大丈夫だ、ちゃんと俺が守る」


「だそうだ、ケイさん。しっかり隼人に守って貰うといい」


親子の2人の会話を見てると、旅の最初の頃に感じた、隼人のお父さんへの影がなくなっているのに気がついた。


隣の岸田さんも、嬉しそうに微笑んでるし。



「はい。隼人が傍にいてくれるだけで心強いです」


それを聞いた隼人は私をギュッと抱きしめた。


「ねぇ隼人、私の命が危ない云々って何?」

話を聞いていて引っかかった。

私が標的になったのは、地球をでてきてからなのに。


「俺が、幼少の頃から襲われてきたのは言ったよな」


「うん」


「俺は、普段仕事していても、いつ襲われるかわからない状態で、ケイにアプローチして標的が俺からケイに移る危険性が十分あったから、ケイのことが好きでも、葛藤しながら怖くてずっと手が出せなかったんだよ」


初めて聞く事情に、声が出ない。


「・・・で、ケイから会社でsperanzaに行く話を聞いただろ?あの時、もう我慢は辞めようと思ったんだよ」


「行くなら一緒に行けばいいって」



「でも、本当に後悔はしてないの?私と一緒にきて」


宇宙にでてきてしまったからこそ、言われようのない標的になってるんだから。


「後悔どころか、一緒に来て良かったと思ってるよ。一人で行かせてたら、誰にケイを奪われてたかわからない」


クスクス笑う声が、画面と隣で聞こえる。


そういえば・・・忘れてた。


「隼人も大変だね」

岸田さんが、隼人の肩をポンポンと叩く。


「ケイさんを奪われないよう頑張れ」



「隼人、事情はわかった。今回の件が全て解決しても、地球にはまだ戻って来るんじゃないぞ」


隼人へ話す表情は、完全に甘いお父さんの顔。

本当は、お父さんは隼人を可愛くて仕方が無いんだろうな・・・。


とふんわり思っていると、


「結婚式をやるなら、こっちからsperanzaへ駆けつけてやる」


「えっ?」


「親父?」


私と隼人の声が重なる。


「そうと決まったら、さっさとあいつら片付けるぞ、データは入ってきてるんだ。せっかく猶予与えてやったのに自分達で首絞めてるんだからな」


「俺たちを舐めてもらっちゃ困る、キッチリ後悔させてやるから隼人、見ておけ」


しっかり仕事モードのお父さんの一言が、とーっても怖いです。


「親父さんに、そろそろ本業の仕事もやってもらわないと困るからな。これが片付かないと他の仕事やらないんだから・・・」

と岸田さんが呟く。


それぞれの思いを乗せて、船はforestaに向けて出発した。


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