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星の降る街に  作者: 霧島
第8章
82/92

82 buio/出発する

「ここをやっと出られるな」


助手席に座る岸田さんと運転中の真さんがお互いに今は表の顔で、穏やかに話をしている。

影の最強サポーターの2人、あえて裏の顔を知ろうと恐ろしくて思わないが、でも心強いのは確か。


わたし達はというと、真さんの運転する車に乗って、buioから船で移動ために飛行場に向かっている途中なのだけど。


いつもの通り、車内では私の両手は隼人と櫻井さんの手が重なっていて 。

朝のことも思い出すと、私だけがドキドキして、二人は素知らぬ顔。



「ケイさん、もうすぐ空港に着きますが体調はいかがですか?」

ミラー越しに、優しい眼差しの真さんと目が合う。

命の恩人の真さん、櫻井さんの側近になる前は医師で、薬関係もかなり詳しいとか。



「おかげさまで、随分楽に動けるようになりました。身体が思うように動けない時は不安でしたけど」

にっこり微笑んで、答える。


「それは良かったです。でもまだ無理しないようにして下さいね。あの毒はケイさんの身体の機能を一瞬で落としましたから。元気になったようにみえても回復はまだ完全じゃないので」


確かに、立ちくらみや身体の違和感はまだ残ってる。


「船は別々になりますが、体調が変わったら遠慮なく連絡下さいね」


「はい、ありがとうございます。気をつけます。これ以上皆さんに負担かけたくないですし」


出発が遅れたのも、倒れた私のせいだし・・・。


「負担なんて思わなくていいんだよ。ケイが悪いわけじゃないんだから」

櫻井さんの手が、髪を梳くように私の頭を優しく撫でる。


「それに、今はケイの身体の回復が一番優先だ。この先も多分簡単にはsperanzaにはつけないだろうから、ちゃんと元気にならないと」


「はい」


話をしていると、外の景色が変わってきたのに気がついた。

空港が近い。


「そろそろだな」

櫻井さんは、出発してから何本目になるかというタバコを揉み消し呟く。


「岸田さんの船は、buioからどの辺まで行けますか?停泊するのにそちらに合わせますが」


櫻井さんが、前に座る岸田さんへ声をかける。


「順調にいけばforesta❪フォレスタ❫になりますね」


順調にいけば・・・。

私にもその意味が十分にわかるので、わからないようため息をついた。


「真」


「はい、承知致しました」


言葉は少なくとも、櫻井さんの思いを広い意味を持ってわかってるんだろう。

さすがsperanza軍参謀。

隼人は心の中で呟く。


「隼人」

岸田さんがふいに呼ぶ。


「はい」


「・・・油断するなよ」


「わかってます」


岸田さんの言いたいことがわかる。

飛行中、停泊中・・・どこで狙われてもおかしくない。


「いい機会だ。親父さんを見返してやれ。もう独り立ちできるって」


その言葉に隣で、櫻井さんも頷いている。


「十分、今の隼人には戦える力が備わってるから、自信持っていいと思うぞ」


複雑だけれど、櫻井さんの言葉は素直に嬉しいと思う。


自分を守ると同時に、この手の温もりに繋がるケイを絶対守らなければ。



空港の敷地内に入ったようで、車内は緊張感で空気が張り詰めているのがわかる。


私の両手に繋がれている温もりにも力が入る。


真さんは目的地に着くと車を止めた。



助手席の岸田さんが降り、周囲を見渡す。

彼も、隼人のお父さん側近ということ、隼人以上に特殊な訓練も受けてるし、周りには恐れられてるんだ・・・と隼人が教えてくれた。


後部座席のドアが開く。真さんだ。


先に隼人が降り周囲を見渡し、私に手を差し延べる。


「ケイ、おいで」

隼人の呼ぶ声に頷き、隣に座る櫻井さんの方に振り向くと、


「何も心配しなくていい、近くにちゃんといるから」

笑顔でそう言いながら、私の頬にキスをした。車内は薄暗いので誰も気がつかないだろう。


「ほら、隼人が待ってる」

頷いて、外で待っている隼人の手をとった。


外にでて周りを見渡すと、相変わらずたくさんの人達でごったがえしていた。

buioに着いた時もそうだった。

色々な思惑が混じり合っている星。


滞在は数日間だったのに、それ以上に時がたってしまったんじゃないかと錯覚しそうになる。

この先は、何が待っているんだろうか。


最後に櫻井さんが車から降り、そして4人が、私を囲うようにして歩き出し、搭乗口を目指す。


空港内でセキュリティチェックを済ませ、既に出発準備を終えていた私たちの乗る船に着くと、顔の知ったSPさんが入口に立っていた。


「何か変わったことは?」

私の後ろから、声が聞こえる。

いつもより声のトーンが低い真さんの声にドキッとする。

振り向くと、とても厳しい表情をしている。


「特に変わりはありません。いつでも出発できます」


それに答えるように、私たちの前に立つ岸田さんが、


「ありがとう、助かりました」

とお礼をいうと、笑顔でこちらに振り返り


「では、櫻井さん、隼人さん forestaで」

二人が頷いたのを確認すると


「隼人、ケイさん行くよ」

先に船内に入っていった岸田さん。


私は、手にある櫻井さんの温もりを握り、出来るだけ穏やかに言葉を繋ぐ。


「鍵、ちゃんと持ってますから心配しないで下さいね」

胸の間にあった鍵を見せ、存在を確認する。


もしトラブルがあって、私が連れさられたとしても、信じて待っている・・・ということは心の中にしまっておく。


「心配するな・・・というのは、無理な話だが」

そういうと、私の鍵を持つ手に櫻井さんの繋ぐ反対の手が重なり、鍵にキスを落とした。


「これは、ケイを守るものだ。万が一の事があっても必ず助けに行くから信じて待っててくれ」

私の心の中がわかっているように答えてくれる櫻井さん。


「はい」


そして、櫻井さんはそのまま隼人に視線を向けると、


「隼人、この先は今までの相手とは桁外れに違うが、大丈夫。自信を持って戦え。俺たちも全力でサポートする」

その言葉に、隼人も大きく頷いている。


「出発する」


櫻井さんが、私の手を離したのが少し寂しく感じたけれど、いつもと同じように頭を撫でて、真さんと船に向かうため歩いていった。


「ケイ、行くよ」

隼人が抱きしめて、優しく唇を重ねたあと、私の肩を抱き船内に向かって歩き出した。





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