77 岸田さん【再会】
「ご主人様、ケイさんが、意識を取り戻したと連絡が入りました」
司令官がいる部屋へ、参謀長の真が入ってきた。
vulcanoに向かっている船の中でも、ケイのことが、頭から離れることはない。
「山を越えたようです。毒が完全に抜けるまでにはもう少しかかりますが」
「良かった・・・。真の処置のお陰だな」
思った以上に、身体が強ばっていたようで、椅子に座ると、力が抜ける。
「最初、倒れたケイさんを見たとき、助からないかもと思いました。しかし、私の命にかけても助けなければと・・・」
「それだけ、強力な毒だからな、あれは」
「はい、ほんの少量で人を殺せるくらいの。専門医の、私でさえ滅多に遭遇することがないものです」
真が医師の時でさえ、数える位のものだった。
そういうものを使うvulcanoに、改めて、強い殺意を覚える。
「あのまま、処置をせず時間を置いたら、間違いなく・・・ケイさんは命を落とされてましたね」
「そうだな」
ケイが殺されるなんて、考えるだけでも・・・・握る手のひらに力が入る。
立ち上がり、船の進行方向にある大きなモニターを見つめる。
「真」
「はい」
「あと10分程で、vulcano上空に入る」
「準備は?」
「全て、指示通り整っております」
「よし。すべては予定通りに」
前回は、事情があっての休戦協定だったが。
vulcanoとは今回で・・・・・・すべて終わりだ。
数えきれないほどの船体が、vulcanoに向かっている頃。
buioでは、隼人は、地球からきた客人と再会していた。
「お久しぶりです」
部屋を訪ねてきた、岸田さんとハグをする。
岸田さんは、現在親父の仕事の片腕でもあり、小さい頃からお世話になっている母方の叔父でもある。
「隼人、いろいろ大変だったな。親父さん、心配していたよ」
ここにたどり着くまでの騒動のことをいってるのだろう。
「そうですね。でも俺以上に大変な思いをしているのは、彼女です」
ベットで、眠っているケイのほうへ視線を動かす。
「ケイさんだったね。entrataで襲われたのは」
「はい」
「襲った奴らの残骸が、今もって隼人を追ってきてるんだよな」
「親父じゃなく息子で、その上彼女まで狙うなんて・・・・・・・」
「隼人、今回は完全に組織潰す」
「そのために、はるばるここまで来たんだ」
本当なら、岸田さんではなく親父が来たかった所だろう。
「今潰しておかないと、隼人たちも後々厄介だろ?」
「ケイさんと結婚するんだろうし」
「はい、そのつもりです」
「それにしても隼人、バック大きいな」
「櫻井さんたちのことですか?」
「そう、親父さんに聞いたときは、腰がぬけるくらいびっくりしたぞ」
「もともと、俺たちは、親父の仕事柄みの事件も、国同士の争いも、巻き込まれた方だから、被害者みたなものですよ」
「今、正にその真っ只中ですし・・・・・・」
「そうだな。でもentrataの騒動の時、隼人だけだったらケイさん守りきれたか?」
そう言われると、何も言えない・・・・・・。
「まぁ、へこむな。隼人も軍隊上がりレベルまで、鍛えあげてあるんだし」
岸田さんに連れられて、訓練に行ったからな。
「時が来たら自信をもって戦え。ケイさん守りきれなければ、他の男たちに持っていかれるぞ」
冗談にも聞こえないことを、さらっと言う・・・・・・。
返事に困っていると
「お、隼人。心あたりがありそうだな」
にやり、とこちらに視線を向ける。
「旅にでてから、悩みの種ですよ」
「ケイは、tenerezzaの王までにも狙われてるし」
「tenerezza??」
「ええ、櫻井さんたちに言わせると、欲しいものはどんな方法を使ってでも手に入れるとか」
「確かに、あそこの王のあんまりいい噂は聞かないよな」
「で?tenerezzaとケイさんと接点があるのか?」
「親父から聞いてないですか?tenerezzaの連中に2回も薬使われて、ケイが連れてかれているのを」
「目的は、ケイが持っている鍵とケイ自身」
「ケイの元カレ繋がりで知ったらしく、王妃として迎えたいと言ってるらしいです」
「そうか、それはケイさん大変だなぁ、国王レベルでの話じゃ」
「そういえば櫻井さんも、ケイさん狙ってる一人だろ?」
「そうですね。櫻井さんもsperanzaの王族で、軍総司令官ですし。国レベルです」
否定はしない・・・・・・。
「相手がどうであれ、隼人、大事なら手放すんじゃないぞ」
「当たり前です。ケイを手放すつもりはない」
「今回の隼人を追って来ている奴らの処分しだいでは、地球に戻るより、speranzaで生活したほうがいいかもしれないけどな」
「それは考えていますよ。ケイの安全が一番ですから」
「親父が今の仕事をやっている以上、同じように危険が付きまとうから、地球には帰れない」
「それにsperanza国も移住を薦めてるから、ちょうどいいでしょう」
「そうだな、住むことは問題ないだろう」
二人で話をしていると、岸田さんの携帯電話が鳴る。
「岸田です。はい、先程隼人と合流しました」
岸田さんと目が合い頷く。
「そうですね。ではこのまま繋ぎます」
話をしながら、何やら荷物の中から取りだし、目の前の机に画面を広げ、スイッチをいれるとそこには、
「親父・・・・・・」
久しぶりに見る親父の顔だった。
「この方が話が早いからな」
岸田さんも隼人の横に座る。
「隼人、ケイさんの状態はどうだ」
画面から聞こえてくる親父の声。
「真さんの処置が早くて、とりあえず山は越えた。でもまだ油断はできない」
「そうか。彼は薬剤関係に詳しいみたいだから大丈夫だろ」
「ああ、元々その分野の医師だって聞いてる」
SPさんに聞いた話だから間違いない。
親父も知っているということは、櫻井さんたちから、詳しい情報が入っているんだろう。
「相変わらず二人とも素っ気ない会話だな。未来の身内が大変な事態なのに」
隣で岸田さんが呆れたように呟く。
「さてと、ここから本題の打ち合わせいきますか」
と、さすが親父の片腕。きっちり話を動かしてくる。
「そうだな、隼人も含めて」
画面に映る親父は、既に仕事モードに切り替わっていた。
ベットで眠るケイを視界に入れながら、打ち合わせを始めた。




