76 希望
「いよいよ、始まるな」
「はい。先程尚人様から、軍に指令が入りました」
「今回は、尚人と木理谷の揃えだからな、普通のやり方はしないだろ」
「おそらく・・・・・・」
「この間の隼人絡みの事件処理なんて、生易しいもんだからな」
「今、ケイはどんな具合なんだろうか、大丈夫か?」
毒薬・・・って聞いた時は、血の気がひいたが。
「木理谷が処置をして、今夜越せば落ち着くだろうと、尚人様はおっしゃっていましたが」
「そうか、木理谷は薬剤関係のプロフェッショナルだからな、あいつが言うなら間違いないだろう」
「尚人様も木理谷も、ケイさんが被害を受けたことに心を痛めておりますので、今回のvulcanoに対しては、今までになく、非情な扱いになるかと思われます」
「vulcanoの奴ら・・・・・・とんでもない地雷を踏んだな」
一番、刺激してはいけないところを狙ったからな、仕方ない。
「随時報告を、場合によっては俺も加わると、尚人に伝えてくれ」
「畏まりました」
speranza軍が動き始めた頃・・・・・・・。
「報告致します、speranza軍がvulcanoに現在向かっております」
「やはり動き始めたか」
「司令官と参謀が動いてる・・・ということは」
「buioにはケイがいるんだな」
「はい、でも現在非常に危ない状態とのことです」
「危ないってどういう意味だ?!」
「宿泊先で、ケイさんが猛毒に触るトラブルがあり、意識がない状態で、今は医療管理下にいます」
「猛毒に触るって、誰か触らせたのか?」
「どういう流れでというのは、まだ掴みきれていませんが、どうやら居室のあった花をケイさんが触って、その直後のようです」
「おそらく、それを仕掛けたのは、vulcanoの奴らか」
「speranzaも動き始めるわけだな・・・・・・」
もし、自分も同じ立場なら、やった奴らは、生かしておかない。
「ケイを強引に連れて来るのもありだが、今、下手に動かして、毒が回っても困るからな」
「少し様子をみることにしよう」
櫻井さんと真さんが部屋を出ていって、暫くすると、
「ん・・・・・・」
眠っていたケイが動き始めた。
「ケイ、目が覚めたか?」
枕元で、隼人は声をかける。
声に反応したのか、声のするほうにゆっくりと頭を動かし、うっすらと瞼を開く。
ぼんやりしているので、
「ケイ?わかるか?」
ケイの頬をなで、顔を覗く。
「・・・・・・はや・・と?」
ケイの右腕がゆっくり動き、頬に置いてある隼人の手のひらに重なった。
「そうだ。やっと意識が戻ってきたな」
ケイの口周辺には、呼吸器が着いているので、少しずらし、唇を重ねた。
「私・・・?」
今のこの状態が、納得できてないな。
「部屋にあった花に毒が塗ってあって、ケイはそれに触ったんだよ」
「真さんが、すぐ解毒処置をしてくれたからよかったんだけどな」
先程の緊張感を思い出すと、背筋がぞっとする。
「そうだ、SPさん」
コールボタンを押すと、入り口で人の気配がする。
「隼人さんどうされましたか?」
「ケイの意識が戻ったので」
「そうでしたか。今すぐ伺います」
数分後、部屋の入り口の扉が開き、数人のSPが入ってきて、ケイの様子を診察する。
「山はこえたようですね。もう安心です」
少し離れた所に、待機をしていた隼人に声をかける。
「よかった・・・ありがとうございます」
全身の力が抜ける。
「櫻井さんに、ケイの意識が戻ったと、伝えて頂けますか?」
「はい、伝えておきます」
そういうと、道具を片付け部屋から出ていった。
「櫻井さん・・・?」
ケイが、微かな声で尋ねてくるので、
「何か調べに行くって、真さんと出掛けているんだ」
今はまだ、本当のことを言うわけにはいかないから。
「もう少し眠るといいよ。俺も傍にいるからさ」
手を繋ぎ直し、ケイの頬にキスをする。
ケイの頭を撫でていると、静かな寝息が聞こえてきた。
どれだけの、毒がケイの体内に入ったのかわからないが、しばらくは動かすのは危険だ。
この先の旅は、どうなるんだろうか。
ケイの身体の回復や、speranzaとvulcanoの争いの結果で、列車に乗ることができないかもしれない。
まぁ、ここまで来たんだ・・・・・・なるようになるしか、だよな。
それにしても、櫻井さん達、vulcanoをどうするつもりなんだろうか。
前にも戦って、あえて休戦協定を結んだと言っていた真さん。
でも何故、休戦協定だったんだ?
あの言い方だと、speranza軍のほうに力があったよな。
ばからしい・・・・・・俺には、関係ないことだ。
争いなんて、深入りしたらろくなことないからな。
俺は、ケイが早く元気になってくれれば、それだけでいい。
一日でも早く結婚式あげて、一緒に暮らしたい。
何処で生活しようか。
ケイは、どうしたいのだろう。
今回は、そんな甘い思いでいっぱいの旅になるはずだったのに、どこでどう間違えて、ケイが、こんなに苦しまないといけないんだ?
一緒に暮らす前に、俺を追ってくるやつも片付けておかないとな。
岸田さんも、夜が明ける頃には到着する。
俺に近づいたことを、後悔させてやる・・・・・・。




