75 戦闘開始
「ケーーーイっ!!」
隼人の絶叫する声を聞き付けた、櫻井さんと真さんが勢いよく扉を開けた。
「隼人、どうしたっ」
「ケイが・・・・・・この花に触ったら、一瞬で意識がなくなって」
ソファに、ぐったりと横たわるケイ。
真さんが、ケイの近くに寄り様子を診る。
「ご主人様、これは早く処置しないと、手遅れに・・・・・・」
小声で伝える、と
「まずいな」
厳しい表情で、横たわるケイを見た。
「隼人さん、ケイさんをベットに運んでおいてください」
真さんは、走って部屋を出ていった。
隼人はケイをそっと抱き上げ、ベットに寝かせた。
徐々に熱が上がってきているようで、呼吸も荒くなっている。
「ケイ・・・・・」
隼人は、ベットサイドで、ケイの手を握り、声を掛ける。
「なんでお前ばかり狙われないといけないんだよ」
悲痛な面持ちで、寝顔を見つめていると、真さんと数人のSPが、器具などを抱え、部屋に入ってきた。
「隼人さん、この毒は殺傷能力の強い猛毒ですので、今から解毒処置をします」
「えっ・・・ケイの命は?」
亡くなるのか?
そう考えたら、頭の中が真っ白になる。
「数日間、毒で辛いかもしれませんが、私たちがついていますので大丈夫、必ず良くなります」
真さんは、そういいながら、次々とケイの身体の周りに、注射針や点滴の管など、手際よくつなげて、薬を入れていく。
「隼人さんは、ケイさんの傍にいてあげて下さい」
「櫻井さんは?」
先程から見当たらなくなっているので、尋ねると、
「ご主人様は、今、戦闘に入る準備をされています」
「えっ ?」
「本国と連絡をとりながら、花の入手経路が決定次第、動き出すと思います」
「今回は、私も、血を流したくありませんでしたが、完全撤回ですね」
「手加減なしで、潰しに行きます」
そう言う、真さんの瞳は冷ややかに輝いている。
「・・・・・・・軍が動くんですか?」
嫌な予感がする。
「speranza軍の最高司令官は、ご主人様ですし」
「私は、speranza軍の参謀長。最高司令官を支える身ですので、その指示に従います」
えっ !! 真さん・・・・・・が、参謀長 !?
隼人は、呆気にとられてもう言葉にならない。
櫻井さんが、speranzaの皇位継承権第二位というのは、先日聞いて心底驚いたけれど。
speranza軍の最高司令官が櫻井さん、そして、真さんが参謀長って・・・・・・。
二人の、けた外れの強さに納得した。
それにしても・・・・・・・。
隼人の思いに気がついたのか、
「戦いになることも、今回のケイさんの件だけでなく、料理長のことや建物の外での騒動、その他、水面下でvulcanoの情報をずっと探ってきたことを含めて、の判断なのです」
真さんが、経緯を説明をしてくれる。
「vulcanoとは、過去に戦って、こちらが何歩も下がってやっての、休戦協定だったのに」
「奴ら、自ら破ってきた・・・・・・」
「それだけでなく、今回、絶対に手を出してはいけない方を、傷つけた」
真さんは、ケイが眠るベットに視線を送る。
「こうなればもう、ご主人様の怒りを止められる人はいませんし・・・私も、止めようとも思いません」
「ご主人様も、全て決まれば、一度こちらに来ることでしょう」
隼人は、ことが大きくなりすぎてしまって、もう何も言うことはなく、ケイのベットの傍の椅子に座った。
ケイの身体に解毒の薬が入っているが、簡単には良くはならない。
「隼人・・・・・行かないで」
熱でうなされながら隼人を呼ぶ。
「俺は何処にも行かない。お前の傍にいるから」
ケイの手をとり、しっかりと繋ぐ。
夢を見てるのか、荒い息の中、ケイがもう一人の名前を呼ぶ。
「櫻井さ・・ん」
「ケイ」
・・と、隼人の後ろで声が。
振り返ると、そこに勲章をつけ軍服を身につけた櫻井さんが立っていた。
これは・・・・・・一瞬目を見張る。
オーラが違う。
「真、ケイの今の状態は?」
横に立つ、真さんに声をかける。
「先程、解毒剤を投入し、効きはじめているところです。きっと、今夜が山でしょう。1日経てば落ち着いてくるかと思いますので」
「そうか」
そう言うと、ベットに近づき、ケイの額に浮かぶ大粒の汗を拭い、愛おしそうに頬を優しく撫でた。
暫くそうしてると、
「真、全て確定し、本国の了解も得た」
「はい。では・・・・・・」
「準備が整い次第」
「畏まりました」
「隼人」
「はい」
隼人は、顔を上げ立ち上がる。
「今までの経過は真から聞いたか?」
「はい」
頷くと、
「ならいい。今回、花を手配したのも、vulcanoの奴らだ」
「もうこれ以上、待つことはない」
「vulcanoを・・・・・・潰しに行く」
隼人の身体のなかの血液がすぅっと引いていくのがわかる。
「隼人はケイの傍にいてやってくれ」
そう櫻井さんは言うと、
「真、行くぞ」
真さんと共に、部屋を出ていった。
今、部屋の中に聞こえるのは、ケイのに周り置いてある医療器具の、管理する電子音だけ。
ケイも薬が徐々に効いてきているのか、呼吸も落ち着き、眠っている。
「ケイが眠っている間に、信じられないことが起こってるんだぞ」
隼人はため息をつき、先程の櫻井さんや真さんの話を思いだしながら、ケイに話しかける。
地球からでてくる際、自分も追われることを含めて、こんな騒動になるなんて、夢にも思わなかった。
櫻井さんと真さんのあの様子だと、本当にvulcano国を潰してきそうだよな。
もし、潰さないにしろ、同等の苦しみを与えるんだろう。
自国を守るために・・・・・・・。
「この旅は、俺たちにとってどんな意味を持ってるんだろうな」
繋ぐケイの、左手の薬指に光る指輪を撫でた・・・・・・・。




