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星の降る街に  作者: 霧島
第8章
74/92

74 標的

「どんな様子だ」


「ここにきて、他の星が動き出してきていますので、今状況確認しています」


「他の星?」


「はい。彼女を狙っているのは、私たちだけではないということです」



「どこだ?」



vulcano(ヴォルカーノ)です」



「vulcano?」


「確か・・・、speranzaと休戦協定結んでなかったか?」



「はい、結んでいます。力の差は歴然としてるのに休戦とはどうなのかと、当時不思議に思ったことがありました」


「speranzaも、vulcanoを潰せる戦力はあるからな」


「そうですね。今も十分あります。司令官も健在ですし、彼がいる以上は、戦力が維持されていますので、vulcanoは勝ち目はないかと思われますが」



「そうだな。speranzaは、司令官も胡散臭くて隙がないが、司令官についている参謀も手強い・・・」



「確かに、手強いですね」



「それにしても、vulcanoも力関係がわかっていて、吹っ掛けてくる理由が分わからんな」



「どこで情報を得たのかわかりませんが、ケイさんが、speranzaの『鍵』を持ってますので、狙いやすいと思ったのでは?」


「正面からいっても敵わないのはわかってるはずですし」



「なるほどな。こうなったら、先にケイを連れてこないと」


「情報が入り次第報告を」


「畏まりました」



話を終え、部屋に一人になる。


「speranzaに着く前に何とかしなければ」


建物の最上階から見下ろす街は、所々から漏れる、明かりで輝いている。


「ここも変わったな・・・」


星の名のように、暗闇だったbuio。


明かりの奥を見ると、影のように山が連なって見えていた。


日中は、たくさんの人々が、一攫千金を狙いに山へ籠る。


「欲の塊だな、この街も」


これから先のことを考えつつ、グラスの中のアルコールを飲み干した・・。


「ケイ、待ってろよ、俺が必ず奪いに行く」




物騒な言われ方をしていたケイは、騒動の真っ只中にいた・・・。



建物の前の銃撃戦で周りも大混乱、かと思いきや、確かに当たり一面血の海だったけれど、その後の処理もあっさり行われ、今は建物の中の、櫻井さんの部屋にいる。



ここに来るまでは、歩けるという私の声を耳に入れず、隼人にしっかり抱えられてきたけれど・・・・。


「それにしても、ケイが無事で良かった。隼人の判断がよかったな」


穏やかな笑顔に戻っている櫻井さん。


先程までの現場では、今までになく近寄れない程に、負の熱いものを感じていたのに。


「私は大丈夫ですが、周りの状況が全く掴めていません・・・」

何が起こっているのかわからない。


「そうだよな」

大きな手のひらで、私の頭を優しく撫でる。


ふと、道中の出来事を思い出す。


「櫻井さん、ここは話をしていて良いところですか?」

自然に声のトーンが下がる。


「ああ、この部屋は大丈夫だ。入る前に全部確認してあるから。盗聴器はないから安心していい」


「それなら良かったです」


話をしていると、真さんが部屋に入ってきた。


「終わったか?」


「はい。無事終わりましたので報告いたします」


「席、外しますか?」

私たちが聞くと、不都合なこともあるかと思い、声をかける。


「外さなくても大丈夫だ。聞いておいた方がいい内容だと思うからな」


「そうですね、居てくださっても構わないですよ」


真さんも、資料を櫻井さんに渡しながら答えてくれる。


「隼人にも関連してくるから」


そう言うと、櫻井さんがテーブルの上にあった一枚の書類を隼人に渡した。


隼人は、手にした書類に目を通すと、とたんに表情が変わる。


「これは・・・・」


「嫌な勘が当たったな、隼人」


櫻井さんは、手元の書類に目を通しながら、隼人に声をかける。


「ええ・・・そうですね」


「何処まで追ってくるんだか・・」


「追ってくる?」


隼人の関連・・・・・。


「親族が云々ってやつ?」


「そう・・・参ったな」


「櫻井さん、この情報は確定ですか?」


「ああ、間違いない。奴らはずっと探って隼人を追って来てる」


「勘違いの憎しみもいいところだな・・」

隼人は、大きなため息をつく。自分には全く関係ないのに・・・。


「奴らの動きは、把握してるし、怪しい動きがあれば、すぐ連絡が入る」


「隼人から、親父さんに連絡しておいてくれないか。こっちから言うと、ややこしくなるからな」


「わかりました。連絡してきます」


そういうと、立ち上がり隣の部屋へ歩いて行った。


「大丈夫なのかな・・・・」


隼人の後姿を見ながら、漠然と心配になる。



ふと、身体が体温と薫りで包まれた。


櫻井さんが私の隣に座り、抱きしめたからだった。


「櫻井さん・・」

急なことなので、身体が強ばる。


「大丈夫といいながら、ケイが狙われるのを見ると、普通ではいられない」

私を切なそうな瞳で見つめる。


「さっきの騒動、実はケイが標的だったんだ」


「・・・え?」


「隼人が早く気がついたから良かったものの、もう少し判断が遅かったら、ケイが撃たれていた」


それを聞いたとたんに、身体が震えてきた。


震える身体を、覆うようにぎゅっと抱きしめてくれる櫻井さん。


私も手を伸ばし櫻井さんに抱きつく・・。


鼻を擽る櫻井さんの薫りにほっとする。


「ケイ、愛してる・・。必ず守るから、信じろ、俺を」


耳許で囁いたあと、私の唇に一瞬櫻井さんの柔らかな体温を重ね、笑顔を残し、私から離れて行った。



櫻井さんが離れたタイミングで、隣の部屋から隼人が戻ってきた。


「櫻井さん、親父があとで直接連絡すると言っていました」


「そうか」


「親父さん、こっちに来るのか?」


「いえ、今は仕事場を離れてこれないから、側近を向かわせると」


「ああ、岸田さんか?」


「よくご存知で?」


「この間の件で話したからな」


「そうでしたか」


「仕事次第では、親父もこっちに来るかもとは言ってましたが」


「既に岸田さんは、向かってきているはずです」


「そうか、それなら話は早いな」


「相手は、懲りもせず、ケイを狙ってくるみたいだからな」


「ええ、奴ら標的間違えてます。ケイじゃなくて、俺を狙えばいいことを」


「ううん、隼人に何かあったら嫌よ」


それは真剣に思う・・。


「俺もケイに何かあっても困る」


そう言うと、引き寄せられ今度は隼人に抱きしめられる。


「嫌どころか、ケイを狙った時点で相手には容赦しないがな」

煙草を煙らせながら、櫻井さん。


「さっきの騒動のように・・・」


「やっぱり、あれはケイ狙いだったんですね。そう思ったから、奴らを遠慮なく倒しましたが」


「隼人の判断は間違いなかった。あれはvulcanoの奴らだからな」


「今、奴らを外から追い込んでますから。焦りが出てきてるのかもしれませんね」

表情を変えず真さん。


真さんの追い込みの仕方って・・あえて聞かないけど・・。


「相手にも、襲うのに暗くなって周りが見えないから丁度いいなんて思われていたら、大きな間違いだ」


「俺たちは、明るくても暗くても見えなくても関係ない。そんなもの気にしていたら戦えないからな」


私は・・・・困るな。いつも助けて貰ってばかりで。


「ケイは、一緒にいればいいんだよ」

隼人も私の気持ちに気がついたみたいで。


「うん、ありがとう」

悩んでも仕方ないことよね・・。


vulcanoとtenerezza、そして、隼人の追っ手・・と。


全て私を標的にしてきているのなら、気持ちだけでも負けないようにしなきゃ。


打ち合わせと食事が終わり、櫻井さんの部屋を出て、自分たちが泊まる部屋に移る。


外を通らず、個々の部屋に動けるようになっている。


どれだけの数の部屋数なんだか・・・なんて考えながら、部屋の扉をあけた。


真さんによると、盗聴器は確認済みで全部撤去してあるから大丈夫・・とのこと。


安心して、隼人とソファーに座り、目の前にある、見たことない綺麗な花が目に入る。


「綺麗ね、珍しい」

触ろうと手を伸ばすと・・


「ケイ、触るなっ」

隼人の声と同時に、


「イタっ」

という刺激の後、意識が飛んだ・・・。




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