73 buio/駆け引き
「料理長さえ食べられない料理を出すように、させたのは誰?」
容赦ない真さんの尋問が続く。
料理長も顔を臥せ、黙ったまま・・。
「まぁ 今ここで、言おうが言わまいが、どちらでもいい」
「連邦会議にかけられるのは決定だから、その時にでもゆっくり話して貰いましょうか」
口角を上げ、冷ややかな眼差しで、料理長を見下ろす。
「えっ、連邦会議って」
料理長は、顔を上げ焦る。
「フッ、誰が相手だと思ってたのですか?」
料理長の視線が、櫻井さんの方へ・・。
「私の大事な方達に、手を出そうとしたんですから、それなりの結果はついてくるのは当たり前でしょう」
「あなた方は・・・?」
料理長の顔から、すでに血の気が引いている。
「依頼者から聞いてなかったとはお気の毒、まぁいずれわかります」
話をしていると声が聞こえてきた。
ノックと共に、入ってきたのは、SPさん達・・。
「連れていけ」
真さんの命令で、料理長さんが、部屋から連れ出されて行った。
部屋の中に、静けさが戻る。
「さて、宿泊先に戻りましょうか」
いつものように穏やかに話す真さん。
先程まで、凍るようなオーラを発していたのが嘘みたい。
「そうだな、部屋で食事にするか」
黙って様子を見ていた櫻井さんも、立ち上がる。
「隼人、ケイ、あとで説明するから・・行くよ」
櫻井さんの言葉に頷き、店を後にした。
隼人と手を繋ぎ、宿泊先に向かうため歩いているが、何も話さない隼人。
お店の中から一言も発していない。
「隼人?」
呼び掛けに反応して、顔を向けるが、厳しい表情のまま。
「どうしたの?」
隼人の気持ちが読めなくて、不安になる。
「ああ・・ごめん。状況が、どうやら変わってきてるなと思って」
「さっきのこと?」
お店での出来事からなのか・・・・。
「含めて・・・だな」
「動きだしてるのが、tenerezzaだけじゃないからな、厄介だよ」
「確かに」
「ケイの持っている鍵も重要だけど、その前に、櫻井さん達の命が、ここに来て本気で狙われ始めてる・・・」
「俺たちも一緒に・・だけどな」
私も言葉に出ない・・・。
二人で、ボソボソと話しているのに気がついた櫻井さんが振り向く。
「二人とも、手は打ってるから 心配することないんだぞ」
シラッと、何もないような表情の櫻井さん。
「まだまだ、序の口。これからですよ」
ニッコリ、余裕で微笑む真さん。
「これから・・・ですか」
大きな溜め息を吐く隼人。
「そうです。相手は私達を本気で怒らせてくれましたから」
「なので、こちらも遠慮なく」
「とはいえ、あまり血は流したくないので、したたかに、でも、きっちりと形をつけさせて貰いましょうかと」
真さん、怖すぎです・・・・・。
「国やケイさんたちを守るためには、容赦しません」
「・・・ですね?ご主人様」
「その通りだ」
「そうだ。着く前に言っておくが、居室に、もしかしたら盗聴器があるかもしれない」
「盗聴器?ですか」
え・・部屋での話聞かれてた?
「さっきは、既に取り払った後だから大丈夫だが、外にでている間に、再度、別の所につけられてるかもしれない」
「なので、建物に入ったら、話をしないで自分たちに、ついて来て欲しいんだ」
「わかりました。でもそれは・・・」
「こちらにも、考えがあるからな。いろいろ聞かせる訳にはいかない」
ニヤリと笑う櫻井さん。
「国の情報戦・・・駆け引きだ。もうすでに始まってるが」
「情報操作は、ご主人様が一番得意としてますので、楽しみですね」
真さん、本気で楽しそうだけど、私の理解レベルはとっくに越えてるみたいで、実感がない。
隼人は、厳しい表情を崩さず、あちこちに視線を動かしている。
櫻井さんたちのこともあるけれど、自分自身も、狙われてる可能性が払拭できない中、凄い緊張感だと思う。
こんなときに思っていいものかわからないけれど、隼人は地球から出てきた時と全く雰囲気も変わってきていて、最近逞しさが増してきたと思う。
櫻井さんや真さんからの、影響もあるだろうし。
そう考えると、なんだか私が一番、成長がないな・・・・。
軽くへこんでとぼとぼ歩いていると、宿泊先に着いた。
先程の櫻井さんの言葉を胸に、建物の方へ歩き出す・・が、
建物の敷地内に足を踏み入れた瞬間、櫻井さんと真さん、そして隣にいる隼人が動き、私の目の前が急に暗くなった。
数発の、銃声音と怒声を聞いたあと、ゆっくりと身体を動かすと
「ケイ、大丈夫か?」
頭上から、隼人の声。
一瞬、何が起こったのかわからず・・・。
目の前が、急に暗くなったのは、どうやら隼人に抱きしめられてたようで。
「大丈夫・・だと思う」
「で、いったい何なの?」
状況がいまいち掴めていない私。
恐る恐る、顔を上げて周りを見渡すと、血濡れた人影が数人、少し離れた所に立っている、櫻井さんと隼人さんたちの足元に転がっていた。




