71 buio/怪しい届け物
駅の出口を抜け、buioの街に出る。
目の前には見上げると首が痛くなるような高層ビルがいくつも立ち並び、その間にも大小様々な建物がたち、いかにここが沢山の人が行き交いしてるかがわかる。
駅の構内も、溢れんばかりの凄い人の数だったけれど。
「みんな、ここの資源を目当てに集まって来ているんですか?」
私の隣を歩く櫻井さんに聞いてみる。
「主に、そうだろうな」
「ここは、まだまだ未知の資源があるからな、当てたら一晩で大金持ちになるから、一攫千金を狙っていろんな星から集まってくるんだ」
「なるほど・・」
「隼人、たしか昔似たようなのが地球でもあったよね。アメリカのゴールドラッシュみたいなものなのかな?」
「そうだな、宝の山があれば掘りに行きたくなるのは一緒なんだろうな、一攫千金の夢を持ってさ」
「どこでも一緒なのねぇ」
「まぁ、一攫千金もいい話ばかりじゃないが」
と、櫻井さんも苦笑い。
「利害関係で 争いが絶えないらしいからな」
「お金の集まる所に醜い争いあり・・よね」
欲にまみれるとろくなことはない。
「私には関係ない世界だわ」
「ケイの場合は、違った意味で利害騒動に巻き込まれてるけどな」
隼人が意味深な発言をする・・。
「自分から求めている訳じゃないわ」
できれば、利害関係の争いには、首は突っ込みたくない・・・。
話をしながら歩いていると、
「ここだ」
櫻井さんの歩く足が止まった。
「今回の宿泊は、駅に近い所にしたんだ」
いつの間にか、今回の宿泊場所に着いたらしい。
「車も狙われやすいからな・・・」
車ごと襲われた時のことを考えると、ぞっとする。
「ここにいても危険だから、とりあえず、中に入ろう」
櫻井さんの言葉に頷き、建物の中に足を運ぶ。
「隼人、周りの様子は?」
櫻井さんが不意に隼人に声をかける。
「今のところは」
「そうか」
「ん?」
二人の会話の意味がわからない。
「俺の関係の奴らが近くにいるか?っていうこと」
隼人が、状況をよめない私に説明をしてくれる。
「今はいいけど、安心はできない。俺を狙うつもりなら、あとつけられてるだろうしな・・」
そう言いながら、寂しげな眼差しをむける。
自分が望まなくても、追われる危険を日々感じながら生活してきた隼人。
一緒に、旅にでなければ、この苦しみを知ることがなかったんだと思うと、複雑な思いがする。
「俺らがついてる。大丈夫だ、隼人」
隼人の言葉に、櫻井さんが言い切る。
彼が言うと、本当に大丈夫だと思えるのが不思議。
「そうですね。一人じゃないから心強いです」
私たちが、櫻井さんと逢わず個人的に宇宙に出てきたら、今頃二人ともすでに生きてはいなかったと思う。
櫻井さんと出逢ったからこそ、騒動に巻きこまれても、生きている。
そう考えると、縁って凄いとつくづく感じる。
真さんが、全員のチェックインの手続きを済ませ、部屋に向かおうとすると、
「櫻井様、荷物が届いております」
と、ホテルの男性スタッフが声をかけてきた。
真さんが、スッと二人の間に入り、櫻井さんは一瞬目を細めスタッフの男性を見ると、立ち止まる。
「真」
「はい」
真さんが、にこやかにスタッフに向かい、
「ありがとうございます。荷物はどちらから来てますでしょうか?」
と、話かける。
口調は穏やかに話しているが、普段の真さんを知っている私達は、彼の変化がわかる・・。
ブリザードのような冷ややかな瞳に変わったことを。
「speranza国内から、昨日届いております」
スタッフは、小包サイズの荷物をカウンターへ乗せた。
「昨日・・・ね」
真さんが、小包の宛先を確認し、ふっと鼻で笑う・・と、
「申し訳ありませんが、この宛先に心あたりはありませんので、受けとる訳にはいきません。荷物を送り返しておいて頂けますか?」
丁寧に断りつつ、威圧感がありすぎる真さん。
「畏まりました。では先方に確認して送らせて頂きます」
スタッフは、荷物を持って下がろうとすると、
「中を見た訳ではないので、ハッキリしませんが、多分あまりいいものではなさそうなので、早めに送り返していただければ助かります」
スタッフに怪しげな笑顔を、真さんが残し
「お待たせいたしました。参りましょうか」
私達のほうへ、向いた真さんは、いつもと変わらなかった。
夕食には出かける約束をし、各自部屋に入ると、ガラス越しに見える目の前の景色に圧倒される。
建物の間から見える山々の表情。
街の光のせいなのか、うっすら影がかかっている様子が、墨絵のよう・・。
あの山の麓で、たくさんの人々が一攫千金を狙ってるのね。
窓際で、景色にみとれていると、後ろから抱きしめられ、頬や首筋に、温かい体温が落ちてくる。
そして、向きをかえ、唇を重ねる・・・。
「やっと落ち着いた」
隼人は顎を私の頭に乗せ、ボソッと呟く。
「凄い緊張感だった・・」
列車からここまで来る間、気が抜けなかったのね。
「そんな風には見えなかったわよ?落ち着いていたし」
・・・と言っておこう。
いつもと違うのはわかっていたから。
真さんたちと、同等の扱いになるということは、それだけ気持ちも違うということだから。
「そうか?でも、さっきの荷物のやり取りの時は、緊張したな」
「あれは、私もどうなるかと思って、ハラハラしてみてたもの」
「そうだよなぁ」
「真さんの雰囲気が、がらっと変わったのがわかった」
「真さん、凄い人だよ。櫻井さんの側近だけある、絶対敵にしたくない・・・」
ケイがいない3人で話をしたときのことを思い出す。
王族を守る側近であること、櫻井さんがあれだけの信用をしているということは、中途半端な強さではないことがわかる。
櫻井さんの凄さはわかったけど、真さんの存在も十分怖い・・・。
「あの箱何が入っていたんだろうね」
「何だろうな、真さんあの時、笑ったからな、心あたりはあるんだと思うぞ」
speranzaからなんていっても、嘘に決まってる。
自分たちがここに泊まることを知っていることがすでにおかしいこと。
このホテルの従業員も・・だな。
櫻井さんたちも、動きだしてるはず。
「夕食の時、聞いてみるか?」
「そうね、聞いてどうしようってことじゃないけど、気になるもの」
ふと、ケイの表情が曇る・・。
「大丈夫だ」
ケイをぎゅっと抱きしめる。
このことが、列車内の殺人事件に繋がっているということに、裏づけられるだろう。
身が引き締まる思いを和ませるように、腕の中にいるケイの体温を感じていた・・。




