70 buio/到着
列車が滑るようにホームに入っていく。
「これは・・・・凄い」
「今までと雰囲気が違うだろ?」
私の左隣で準備をしている櫻井さんが、私の呟きに反応してくれる。
「・・・ええ、想像以上でびっくりです」
一番驚いたのは、ホームの広さ。
はるか向こうまでホームが並んでるって、どれだけがあるんだろう。
これだけの規模の駅を持つbuio。
この先の事を考えたら、降りる前から、足がすくむ・・・。
「ケイ?どうした?」
右隣にいる隼人、私のわずかな変化を、敏感に感じとる。
「ん?大丈夫よ」
笑顔で隼人のほうへ振り向くと、がしがしと、大きな手で私の頭を撫でる。
顔をあげると、口角を上げ、フッと笑った隼人は、私を引き寄せ抱きしめ唇を重ねた。
「怖がらなくてもいいんだよ」
隼人の言葉に、頷くと同時に、列車が駅に到着したことを知らせるジョニーさんのアナウンスが車内に流れる。
「只今buioに到着致しました。出発は、35番線、地球時間3日後20時の予定です」
「・・行くぞ」
ゆっくり立ち上がった櫻井さんの声で、緊張感が高まる。
私は無意識に、胸の上にかかっている鍵を洋服の上から、祈るように握りしめていた・・・。
隼人が私から離れた隙に、櫻井さんが通りすがり、私の右頬に手をかけた瞬間、スッと顔が近づき左頬にキスをしていった。
呆気にとられたが、櫻井さんの気持ちに気がついた・・・。
「しっかりしないとね」
一人気合いをいれて、コンパートメントを後にした。
車掌のジョニーさんたちに見送られて、隼人と櫻井さん、真さんと共に、ホームに立つ。
「すぐに手を出して来ることはないだろうが」
「相手が仕掛けてきたら、遠慮なく・・だ、隼人、真」
「はい」
隼人は正面を見つつ、頷く。
「もちろんです。最初から遠慮なんかする相手じゃないですし」
と、私の後ろから真さんの声。
横に立つ、櫻井さんを見あげると、目を細め前を見据えている。
「vulcanoもtenerezzaも、狙ってくる目的は一緒だ」
「俺たちが守らなきゃいけない愛する大切な女性・・と一緒なら・・」
一瞬私に視線を移すと、
「俺達は・・・容赦しない」
櫻井さん、何だか今までと違う・・?
ぼんやり、櫻井さんを見つめてると、
「本場の戦いになるとき、ご主人様は豹変します。戦場にいるのが長かったですし・・」
真さんが、私の心を読んだように、答えてくれる。
「今回は、ケイさんがいらっしゃいますから、特に・・・かもしれませんが」
微かに聞こえる声で、真さんが、言葉を繋ぐ。
「愛する大切な女性・・・」
櫻井さんの声が、頭の中でリピートする。
「ひとまず、駅を抜けよう」
私の右手は、隼人の手にしっかりと握られ、私も握り返す。
櫻井さんは私の左側に。
真さんは私の後方に。
出口に向かって、歩きだした。
駅を抜けるだけでも大変だった。
私たちが降り立ったホームは、35番線。
駅の出口はもちろん1番線方面なので、必死で歩かないと、到達できないだろう・・。
どのホームも、乗降するたくさんの人達でごったがえしている。
着飾っているひと、今から何か掘りにいくと、目をキラキラさせている男性、たくさんの荷物を抱えて足早に歩いている女性など、歩きながら人間ウォッチングしてると、つまずき転びそうになって、隼人に抱えられていた。
「キョロキョロしてると迷子になるぞ、ケイ」
「ならないから」
少しふてくされる・・・。
「ふふっ、地球を出てくる時みたいだな」
あのときも、駅の大きさにビックリしてたんだっけ。
「そういえばあったね」
ふてくされたことも横において、そんなに遠くない出来事を思い出していた。
「その後よね、男がぶつかってきたのは」
「そうだったな」
今は、飛鳥とともにsperanzaにいるはずだ。
飛鳥、どうしてるんだろうか。
話をしながら歩いていると、今更ながら気がついた。
「駅では、追われてたよね、あの男。凄い慌てていたけど、誰に追われていたのかしら」
私を隠密で追っていたのなら、あれはあり得ないと思うけど。
「多分、やつは別の件で追われてたんだろう」
話を聞いていた、櫻井さんがさらっと答える。
「別の件?」
「ああ、指名手配されるようなやつだからな。何かのきっかけで見つかって追われたんだろう」
さらっと言ったけど、櫻井さん?
「指名手配ってどういうこと??」
余りの驚きに、櫻井さんにも普段の喋り方になる。
「やつ、スパイ容疑で指名手配中だったんだよ。捕まえてからわかったんだが」
「・・・スパイ?!」
「普段から、お互いに国同士の情報合戦だからな、スパイがいても決して不思議じゃない。もちろんsperanzaにも情報機関がある」
「実際、こうやってケイのことも、情報が流れているわけだし」
ああ、そうなんだ・・。
妙に納得してしまう。
だから私の知らない場所で、沢山の情報が流れて、おおごとになってるのね。
「隼人の件も、今は動きはないが、どうなってくるのかわからないからな」
いろいろと、心配は尽きない・・・。




