7 思わぬ展開
店の主人が、奥から戻ってきた。
「さてそろそろ、本題に入ろうか。」
私たちに、コーヒーを勧めてくれ、自分もカップを持ち、正面に座った。
「お嬢さん、まずは名前を教えてもらえるかい?」
かばんの中にある名刺を取り出して渡す。
「鳴沢ケイです。」
「鳴沢さんね。商社勤めなんだ。
それで、今日ここに来たということは、先日の話に、気持の動きがあったということかな?」
無言で頷く。
「いろいろ考えましたが、先日もお話させて頂いたように、すぐにあちらに【住む】
というのは決めかねます。でも、どんな星なのか行ってみたいと思って。
星まで行く道中のことを含めてお話を聞きたいと思い、今日は伺いました。」
「わかった。」
主人は、私の顔をみて頷いて返事をすると、横に座る隼人に視線を動かす。
「彼も一緒に聞くかい?」
隼人も黙って頷く。
「じゃあ、まず初めに目的地の星の話をしようか。」
主人はそういうと、ファイルをテーブルの上に広げた。
「位置は、地図見て貰うとわかるけど、地球はここね」
と、指で指す。
「鉄道の終着駅のある、目的地の星がここ。speranza[スペランツァ]、
希望という名の星。」
「speranzaまで、何もなければ、鉄道で1ヶ月かかる。宇宙船だともう少し早いかな。」
「何もなければ?というと。」
隼人が主人に尋ねる。
「すべてに安全の保障はない…ということだね。speranzaについてしまえば、
地球にすむより安全に快適に生活ができる。王政国家で、国がちゃんと機能してる
からね。」
隼人を見ると、厳しい顔付きでファイルを見ている。
「列車の出発は、毎月5、15、25日。地球時間20時、50番線ホームから」
「それと旅費の件は、鳴沢さん、ひとつ提案なんだけど。」
急に主人から話を振られ、びっくりする。
「なんでしょうか?」
「今回、もしsperanzaに鳴沢さんが行くのなら、旅にかかるすべての費用は
私が持ちます…という提案で。」
「は?」
提案に言葉がでない。
「条件…というか、speranzaにいる知人に届けて欲しいものがあって。
もちろん、怪しいものでもないから大丈夫。それを届けてくれるなら費用を
任せてほしい。」
そして、隼人の方に振り向き、
「もし、彼も一緒にいくのなら、そちらも心配なく任せてほしい。」
隼人が言葉なく、繋いだ手を強く握ってくる…。
「悪い条件ではないと思う。もし、speranzaに住むようになれば、手配もする。」
「1週間ぐらいで返事を待ってる。」
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店の主人に見送られ、隼人の車に戻ってきた。
助手席でぼんやりしていると、
「さてと。」
顔をあげると、隼人がこちらを向いてる。
「とりあえず、お昼だしご飯食べに行こうか?朝も食べずにきたからお腹すいた。
ケイもそうだろ?」
「そういえば。夕べ眠れなくて朝も食べてない…。」
そっと隼人の左手が私の右手を繋ぐ…。
「食べてからゆっくり考えよう。」
コクンと頷く。
隼人の運転する車が動き出し、気持ちのいいJazzの音がスピーカーから流れてくる。
外の景色を眺めながら、少しの間、音に身をまかせることにした……。




