6 不動産屋
昨日の話の勢いから、今、隼人の車に乗って不動産屋に向かっている。
助手席に座っているけれど、何故か落ち着かなくて俯いてしまう。
「入社して10年近いけど、プライベートで逢うのは初めてだよね。」
声に顔を上げると、微笑んでいる隼人。
「今まで逢う機会もなかったし。それに、昨日話をしなかったら、私がこうやって
隼人の車の助手席に座ることもなかったわ。今すごく不思議な感じなの。
でも、今日が最初で最後ね。」
にっこりしながら正直な気持ちを伝える。
「そんなことない。」
不意に頭が温かくなる。
隼人の手が、私の頭を優しく撫でる。
「いつでも隣に座ればいいよ。」
「隼人…。」
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話をしている間に、車は、街はずれの不動産屋に着いた。
これから話をするんだと思うと、自然と身体に力が入る。
「行こうか。」
車から降りようとした私に、隼人が手を差し出す。
無意識に手を握ると、隼人が私の手をしっかりと握り返し、手を繋いだ。
それも不思議と違和感なく自然に…。
そして、二人で不動産屋の入り口扉の前に立つ。。
「こんにちは」
扉を開けながら入って声をかける。この間と一緒でやっぱり返事がない。
「こんにちは」
今度は奥に向かって、大きな声をかけると、店の主人がゆっくりと出てきた。
「そろそろ来ると思っていたよ。おや?彼も一緒なのかい?」
隼人の顔をちらっと見て、私に尋ねる。
「いや…そういうわけでは…。」
「手を繋いでいるから、仲がいいのかと思ってね。」
あ、そうだった。
思わず手を離そうとしたら…反対に繋いだ手を強く握り返されてしまった。
びっくりして隣の隼人をみると、仕事中でもあまり見せないような真剣な
顔をしている。
「僕にとって彼女はとても大切な人なので、今日は一緒に話を聞かせてもらいに
きました。」
私は一瞬、隼人の言葉に固まる。
店の主人は、
「もちろん二人で聞いていくといいよ。納得してから結論を出した方がいい。」
「そこ座って待ってて。今コーヒー入れてくるから。」
主人は、そう言って奥へ入って言った。
店の応接間に残された私たち。
座っても手を離さない隼人に声をかける。
「隼人?」
「ん?」
「手、離さないの?」
繋いでいる手を指さす。
「いい。このままで」
「さっきご主人に言ったことは?」
一瞬戸惑った顔をしたけどすぐに、
「俺の本心…。」
多くは語らない隼人。そのかわり握った手を、ぎゅっと握った。
私は、気がついてしまった隼人の心を、どうやって受ければいいのか、繋いだ手
の平から伝わる温もりを感じながらも、戸惑いを隠せなかった。




